哲学堂公園(東京都中野区・新井薬師前駅)
東洋大学を開いた井上円了が、哲学を一般にも普及させるべく広大な敷地を購入して作ったのが哲学堂公園である。新井薬師前という、目的の九割が薬師の参拝のために下車するような駅で、薬師とは反対方向にひたすら北上して行くと川沿いに現れてくる。
園内には哲学に触れるきっかけとなるべく様々な建造物が乱立しており、単なる公園と思って散歩気分で訪れると度肝を抜かれるといったユニークな作りをしている。一つ一つの建造物にはそれぞれ名称が与えられており、いかに自分に内在する小宇宙を捉えるかに重きを置いている。哲学とは何か、と問われればそこに明確な答えを示すことは難しいけれど、井上円了は少なくとも普段あまり考えることのない哲学を自身や周囲へ考える機会を与えたかったのだろう。
山の上にある広場、通称「時空岡」には、「絶対城」「宇宙館」「四聖堂」「六賢台」「無尽蔵」といった、ユニーク満載の名称をした建物が並んでいる。もちろん造形も独特。これらの建物は普段は開放していないのだけれど、時期によって内部を開放している建物がいくつかあり、せっかく行くなら、と開放している時期を見計らって訪問。
もともと最初からあったのは「四聖堂」で、こちらでは孔子・釈迦・ソクラテス・カントという東西の哲学者を祀っている。こちらがもともとは哲学堂と称されたもので、そこから次第に「哲理門」(阿吽像の代わりに天狗と幽霊の像がある)、「六賢台」(聖徳太子、菅原道真、荘子、老子、龍樹、迦毘羅を祀っている)、「三学亭」(江戸時代の学者である平田篤胤、林羅山、釈凝然の絵が飾られた東家)といった建物が作られたのだという。
インパクトのある名前である「宇宙館」には聖徳太子の立像が控え(これは井上円了の息子が知り合いの彫刻家に依頼した像)、また「絶対城」はかつて図書館として使用されていたもので、現在でも本棚に多くの書籍が残されており、階段を上った二階でも畳に横になりながら読んだりできる。また「無尽蔵」では各建物から発掘されている瓦が展示されていたり、井上円了の歩んできた歴史をパネル展示していたりする。
トイレは洋式。公園であるため訪問している人も多いものの、施設開放日にもかかわらず館内に入ってくる人はほとんどいない。その個性的な建物の外見もあって、入って良いものなのか、そもそも何の建物なのか、戸惑う人もちらほら見受けられる。面白いからぜひ入ってみてほしいもの。
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