東京都公文書館(東京都国分寺市・西国分寺駅)
もともと港区〜世田谷区にあった東京都公文書館。近年になり蔵書数の増加等の理由で国分寺市へ移設された施設で、まだかなり新しい造りとなっている。さながら武蔵野台地に聳える黒い要塞といった風情でインパクトが強い。ちなみに東京都には公文書館が二つあり、竹橋には国立公文書館、こちら国分寺にあるのは東京都がやっている公文書館である。
公文書とは政府や官庁が職務権限に基づいて作成している文書のことで、歴史公文書もその中に含まれるためその数は膨大になる。研究所や美術館・博物館・図書館その他で保有しているものはそれぞれの場所で管理し、それ以外の貴重な資料が公文書館で保管されているそうで、その資料は江戸幕府のものから現代の東京都に至るまで膨大な数に。基本的には閲覧をするのが利用形態としてはオーソドックスなのだろうけれど、そこはそれ、しっかりと一般に展示も行っているとあれば行くしかないわけである。
展示室は大きく二つに分かれている。手前にある常設展示室では江戸時代から現代に至るまでの歴史の流れと主な出来事を、所蔵している公文書や歴史的資料を踏まえながら紹介するという構成になっている。江戸時代から現代に至る流れといったものは、江戸東京博物館や都内の郷土博物館などでも紹介されている通りなので、個人的にはそこまで新たな発見があるわけではないけれど、かなりコンパクトに体系をまとめてくれているのでわかりやすく、割と短い時間で400年の歴史を一気にひとっ飛びできるのは利点。グラフィックを活用した展示が優れており流石は新しい施設である。そして注目なのは重要文化財の多さ。複製ながら展示品の多くに「重要文化財」のキャプションがついている。
常設展示室の一部と、奥にある企画展示室では企画展として東京の鉄道についての紹介を行っている。鉄道が開業して150年という節目を迎えた今年、東京の鉄道開業から現在に至るまでの鉄道の変遷を貴重な資料と共に振り返っている。こちらでも重要文化財が大量に展示されており、しかもこちらは複製ではなくて現物。これはやばい。これほどまでに重要文化財の現物が展示されているのはみたことがないレベルである。資産価値はいくらになるのか、なんてことまでよぎってしまう。
コーナーは大きく分けて五つに分かれており、黎明期の鉄道開業から、馬車鉄道〜市街鉄道への移り変わり、多摩地域の鉄道、都市の発展と鉄道について、そして市電から都電への変遷、といった流れで紹介している。東京に絞った鉄道になるためその内容は量より質。とにかく深掘りしており鉄道好きには垂涎の内容である。個人的には鉄道にそこまで造詣の深いわけではないので、資料のほとんどは価値がわからないのだけれど、ほぼ全てが重要文化財なのもあるし、相当に貴重な資料であることは伝わってくる。ブランドに弱い。興味深かったのは、多摩地域の鉄道のほとんどは建築資材などを輸送するために作られた鉄道だったということ。中央線をはじめ、京王線、西武鉄道、南武線、横浜線その他の多くの鉄道が人ではなくて砂利を運んでいたという。そこから都市の発展と共に住宅地への輸送や観光客をターゲットにした鉄道へと移行していったという。
これだけの情報量であるのにも関わらず見学者はわずかに他一名のみ。明らかに鉄道好きといった感じだったので、やはり展示内容に興味をもって足を運んだのだろう。はっきり言って西国分寺まで足を運ぶだけの価値はある。せっかくこれだけの資料があるのに鉄道好きは来ないなんてもったいない。トイレはウォシュレット式。
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