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東京富士美術館(東京都八王子市・八王子駅 旅路の風景展)
東京富士美術館では企画展として新旧の版画家として葛飾北斎、歌川広重、吉田博、川瀬巴水という巨匠の作品を集めた大規模な展示会を行なっている。江戸からは葛飾北斎『富嶽三十六景』、歌川広重『東海道五拾三次』が全て揃い、近代からはそれらと同じくらい吉田博と川瀬巴水の作品を揃えているという、かなり食欲をそそられる展覧会。しかも撮影可と来ている。
まずは葛飾北斎から。『富嶽三十六景』という名前ながら実は46作品ある。当初は名前どおり36枚だったのが、その人気から版元が追加で10枚を出版したことによるという。いずれも北斎が70歳を超えてからの作品で、そのバイタリティの凄さたるや、という感じ。一つ一つの作品は詳細なキャプションで説明されていて、今までに何度か触れてきた作品ながら別の味わいが出てくる。摺りの際に生じる凹凸もしっかりと残っている。
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次のコーナーは歌川広重。『東海道五拾三次』で、こちらも55作品ある。起点の日本橋から終点の京都までの東海道宿を全て描いたもので、ホクサイブルーと呼ばれた青が冴え渡っている。作中の中に広重のトレードマーク「ヒロ」の字をあしらった模様が所々にかい見え、広重のユーモアさみたいなのも見つけられる。『東海道中膝栗毛』の弥次喜多を思わせる御油宿の絵などコミカルな要素がいっぱいで和める作品。
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近代コーナーからはまず川瀬巴水から。昨年にSOMPO美術館で展覧会が行われていたのが記憶に新しい。後半期の作品を除いて撮影ができなかったそちらに比べるとこちらは前半期の作品も含め全て撮影可となっている。どういう違いがあるのだろうか。個人的には前半期の作品が好きなのもあって、気に入った作品を手元で見返せるのはありがたい。洋画家の岡田三郎助、日本画の鏑木清方の門下を経て版画家として独り立ちした川瀬巴水は両方のエッセンスを巧妙に取り入れた作風を生み出している。版元の渡邊庄三郎と二人三脚で全国を飛び回って風景を描いた巴水の作品は詩的ともいえる抒情を観る者に植え付ける。特に夜の青との組み合わせが最高で、代表作でもある
馬込の月はもちろんのこと、大森海岸、月明の加茂湖など見どころがいっぱい。懐かしくて切ない。
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そして最後に控えるのが吉田博。昨年に東京都美術館で行われた展覧会へ行けなかったので、吉田博の作品をしっかりと見るのはこれが初めて。というのもあって今回の企画展における個人的な目玉でもある。洋画家の吉田嘉三郎に師事し、その養子となって洋画家として明治における画壇でも大きな団体を結成するなど洋画家での活躍が目覚ましい。版画家として活動するのは川瀬巴水と同じく版元の渡邊庄三郎との出会いによる。海外で粗悪な浮世絵版画が取引されていることに憂いたこともあってか、自らが彫りと擦りを習得し彫師と摺師に細かい注文を出して制作させる徹底ぶり。その成果か、海外でも人気の高い代表作の一つである帆船シリーズが目を引く。風景画においてもリーニュクレールを思わせる鮮やかな筆致が目覚ましい。規格外の特大版の作品もある。
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おまけに新収蔵品として歌川国芳、喜多川歌麿、東洲斎写楽といった浮世絵たちの作品がしれっと紹介されている。版画にどっぷりと浸かれるボリュームたっぷりの展覧会。ロビーでは常設展示のマイヨールなどのブロンズが立ち並ぶ中、休憩ベンチをうまく活用した粋な演出も。ちなみに映像室で企画展に関する映像が上映されていたのだけれど驚異のゼロ。展示室内には結構な人数がいただけに意外。
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常設展は安定の膨大な作品数で中世の西洋画を中心にして近代と現代まで揃えている。こちらは前回おとずれた時とは大きく展示の入れ替えはされていないけれど、印象派から現代アートにかけてが追加され少し常設展のスペースが広くなっている。マン・レイやキリコ、ウォーホルの作品が増えている様子。
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なお特別展として写真家のユージン・スミス展が行われている。戦争写真家として活躍し、水俣病の取材をしたことで知られるユージン・スミス。その戦争写真家時代と労働者の生活を切り取ったフォト・エッセイ、それと水俣病を扱った写真とを展示している。ストラビンスキーの写真とか意外。同時代を生きていたのね。トイレは言わずもがなウォシュレット式。
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