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次大夫堀民家園(東京都世田谷区・成城学園駅)

都内にある民家園の中でも大規模な部類に入る民家園が世田谷に二つある。片方はかつて静嘉堂文庫美術館のあった岡本に隣接する岡本民家園、もう一つがそこから少し離れ、成城学園から国分寺崖線を下って野川沿いにある次大夫堀公園民家園である。静嘉堂文庫の閉館に合わせて岡本民家園は訪れたことがあったが、こちらの次大夫堀公園民家園は初の訪問。

次大夫堀という固有名詞が使われていることからも想像がつくように、こちらは小泉次大夫という江戸時代の代官に由来する場所。今川家を経て徳川家康に登用され、家康の江戸入府に伴い多摩川から農業用水を引くため現在の川崎に居を移して用水奉行を務めた。次大夫堀公園の管理事務所には次大夫堀についての資料室があり、小泉次大夫の業績や、四ヶ領用水がどんなものだったのか地形の観点からも理解する手助けにもなる。

民家園から少し離れた場所にある展示室

当時の多摩川は雨によって洪水を引き起こす暴れ川で新田開発の妨げにもなっていた。次大夫は洪水を抑え、且つ農業用水が等しく行き渡るようにと苦心を重ね、14年にも渡る工事を行なってようやく工事を完成させた。川崎側を二ヶ領用水、東京側を六郷用水と呼び総称して四ヶ領用水とも呼ばれる。次大夫堀は六郷用水の一部で、こちらの次大夫堀公園の一部が民家園として開放されている。民家園の入口は管理事務所から川沿いに南下した場所にあり、案山子の立つ田畑もある長閑な雰囲気。

いろんな民家 屋根が面白い形をしてたり

民家園には復元された建築として三つの主屋とそれぞれ一つずつの表門、土蔵、火の見櫓がある。どの順番で回っても自由なので、空いているところから回ってみるという感じで問題ない。駅から少し離れているのもあって混雑しているわけでもないため、ゆっくりと一つ一つを見て回れるのも良い点。ちょうどこの日に主屋の茅葺きを葺き替える作業が行われており、そちらが見学可能だったのでついでに観てみることに。面白いのは新しい茅を古い茅と茅の間に挿し込むようにして葺き替えるということ。

屋根の葺き替えもするよ(写真では木の隙間に見える色が違う屋根)

ちなみにいずれの主屋の囲炉裏でも火が焚かれていてかなりスモーキーである。基本的には毎日こうして火を焚いているのだそう。昼間の暖かい時間から火を焚いている目的はなんなのかと尋ねてみたところ、あらかた予想できる虫除けの意図のほかに、柱や壁を強化するという目的もあるのだそう。薪を燃やすときに含まれるタールが屋内に浸透することで強化されるのだという。ただし障子は変色するというデメリットもある。茅葺き屋根は水が浸透してしまうと雨漏りの原因になるため、温度を上げることで茅葺きを乾燥させる目的もあるのだそう。

どの古民家でもほんのりと燻されている匂いが心地よい

園内ではボランティアの方々によって糸紡ぎ、藁草履造り、紙漉き、木挽き、鍛治などの体験教室が実施されており、老若男女が楽しめるようになっている。季節によっては田植えや稲刈り体験なんかもできるらしい。園内のトイレは和式。入口の近くにあるトイレは洋式。

中央の広場を中心に体験教室もある


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