東京大学総合研究博物館 & 文京区教育センター(東京都文京区・本郷三丁目駅)
・東京大学総合研究博物館
日本の最高学府である東京大学。東京のいろいろな場所に校舎が点在しており、その校舎ごとに博物館機能があるというまさにキング・オブ・ミュージアムにふさわしい大学だけれど、その本丸と言える本郷校舎の中にあるのが東京大学総合研究博物館である。東大のシンボルでもある安田講堂とは離れており、赤門から向かって右手、敷地の南側にある。
特別展示として「空間博物学の新展開」としてに建築を中心とした展示を開催している。建築模型や映像で現在に至るまでの国内外の建築物を紹介している建築好きにはたまらない展覧会。建築模型のコーナーでは東京大学内の歴史的な学校建築の精密な復元模型や、世界的な建築模型を学生らが制作したコレクション、世界の建築群を同一縮尺で一つにまとめたものなど興味深い建築模型が多く展示されているほか、現在は休館中となっている小石川分館の博物館を3DVRで体験できる映像など、この展示室の一角だけでも充分な質量の展示がされている。
東京大学の多くの博物館ではオープンラボを開催しており、実際に研究者たちが実務に入って研究している様子をガラス越しで見ることができるのも特徴。こちらの総合研究博物館でもオープランラボを実施、加速器など大型の設備を使って化石や鉱石に含まれる炭素から時間を計測する実験の作業風景が公開されている。常に研究者も緊迫感を持って研究するべし、ということなのだろうか。
展示室はまず奥の特別展示室を見てから徐々に入口側への展示室を回って行くという順路になっている。「無限の遺体」エリアでは大量の動物標本が残されている。中でもアジア象やカバといった巨大な動物の骨を並べたスペースは圧巻。
映像で遠藤秀紀教授による地下に大量に眠る保管庫からの研究の様子を紹介している。猪の骨格を計測するときに使用していたのは巨大なノギス。一人で作業するのにノギスで測って、サイズを端末へ手入力しているのが意外だった。インプットツールみたいなのじゃないのか。
変態的なコレクターはどこにでもいるようで、ここでは濱田隆士教授の大量の鉱石コレクションがお出迎え。地球を生命として捉え環境システムについて言及した人でもある。
隣接する「モノの文化史」エリアでは大森貝塚を発見したことで知られるモースが全国行脚して発見した地方ごとの土器や人骨などが展示されている。人類学・考古学の父とも呼ばれる坪井正五郎の成果もある。ここで注目したいのは石棒。とにかく石棒に価値を見出し、二条基弘や徳川頼倫らにその価値を熱弁したという。「これですよ、これ、石棒なんですよ。わかりますかこのフォルム」とか語っていたに違いない。
階段を上がった「エクスペディション」エリアでは壁一面に化石が展示されているのが印象的。ネアンデルタール人生活面画像などもあるほか、奥の方にはまだ未整理っぽい発掘品の箱が大量に置かれている。これを一つ一つ分別して系統づけるのにはどれくらいの月日がかかるのだろうか。収蔵品の多さに目が眩む。
再び階段を下り、標本が大量に展示している「標本回廊」では、隕石や保存液に入れられている動物、剥製、骨格標本といった人類化石の研究レプリカがずらりと並んでいる。また「環境と生物」コーナーには植物や昆虫、「学問の継承」公開ラボには古生物学タイプ標本収蔵が見られる。こちらでも研究者が作業をおこなっている。やりにくいだろうな。
最後は入り口に戻ってきて、入り口を飾る「コレクションボックス」をぐるりと一周。ガラス貼りになっているボックスの中には大森貝塚の土器をはじめ、人物埴輪、オオミヤシの種子、アメリカ大陸最古の黄金製装身具、ナウマンゾウやステゴドンの化石、タイマイの剥製とったバラエティに富んだコレクションが収められている。モースの弟子である佐々木忠次郎の昆虫標本や、五十嵐邁による蝶類コレクションも変態的。トイレはウォシュレット式。
本郷に来たら、ということで安田講堂と三四郎池など散策。興味深いのはこの総合研究博物館に隣接する敷地にある立ち入り禁止の庭園。懐徳館庭園といって、もともとこの土地の持ち主だった加賀前田家の藩主の邸宅があったのだという。そういえば前田家がここを提供して駒場へ移転したのだった。東京大学と前田家との関係が窺える。赤門も前田家の所縁だし。
・文京区教育センター
連動規格として文京区教育センターで「魅惑の昆虫」として鳩山邦夫氏が生前に集めていた蝶のコレクションを展示している。
先の五十嵐邁もさることながら蝶のコレクターは多くあれど、国会議員だった鳩山氏が蝶の熱心なコレクターだというのは意外だった。実情はともあれいろいろと物議を醸し出した氏ではあったものの、その蝶への情熱は半端じゃなかったようで尋常じゃない数のコレクションが展示されている。トイレは洋式。
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