世界のカバン博物館/新川柳作記念館(東京都台東区・浅草駅)
カバンメーカーであるエース株式会社による世界のカバンを集めた博物館。ここではカバンの歴史から、世界で使われているカバンのデザインを紹介している。エレベータで7階へ上がると博物館がある。
カバンの歴史は紀元前30世紀に遡る。何か物をいれるためのアイテムとしてカバンが生まれたのは必然的で、当初は動物の皮や植物で作った入れ物に、食べ物や武器を入れて移動していたという。トランクには「幹」という意味があり、大木の幹をくり抜いて作ったことから来ているのだという。そのうち舟での行き来をすることによってカバン文化が発展する。そのうちたくさんの荷物と装飾されたカバンが富と力の象徴として見られるようになった。
日本では大和・古墳時代に、平面布から作られた袋がカバンのルーツとされている。日本書紀や古事記に登場する大国主命も袋を持って登場している。産業革命や戦争によって機能的なカバンが発展し、その製法や素材も多様化することで現代に至っている。
展示室の一部では現在のカバンの製法について解説している。スーツケースとビジネスバッグではその製法も異なる。カバンを構成するパーツも非常に多く、近年ではキャリーバッグへの機能が発展していることがわかる。
世界のカバンコレクションでは、ヨーロッパ、北アメリカ、南アメリカ、中国、アジア、アフリカ、日本それぞれの民族を基幹とした様々なカバンが紹介されている。
華美な装飾、トラベルに特化したヨーロッパや、宇宙開発をはじめとした機能性を重視した北アメリカ、民族工芸の趣のが強い南アメリカやアジア、アフリカ。カバンというより長持の機能を意図した中国など、多種多様の作りをしているのが興味深い。日本も独自の発展を遂げている(江戸時代の鎖国によって独自性がもたらされた)。中には文豪の吉川英治の愛用していたカバンも紹介されている。これは創業者の新川氏と懇意だったことから提供されたものらしい。他にもゴルフ、柔道、野球などスポーツに特化したカバンもある。
8階には創業者である新川柳作記念館がある。立志伝中の人とも言える新川翁の生涯を紐解きながら、カバンに対する情熱が伝わってくるような展示である。
戦時中、軍国主義の高まりの中で誕生した小さなカバン店からはじまった会社はスーツケースを開発したことから大きな発展を遂げ、ついには藍綬褒章を受章するに至った。新川翁は14年ほど前に大往生したが、彼の意志は面々と受け継がれている。玄関には交友の深かった岡本太郎の作品もある。
トイレはウォシュレット式。カバンメーカーらしく、しっかりとカバン置き場もあるのが素晴らしい。