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江戸東京たてもの園(東京都小金井市・武蔵小金井駅)

ずっと行きたいと思いつつも訪れる機会のなかった江戸東京たてもの園。今回たまたま台風で元々の予定が無くなってどうしようかと考えていたところ、だったら都内で逆に台風だからこそ来客が少なそうな場所を攻めてみようかと思い立って訪問。武蔵小金井駅から巡回バスでも行けるけれど、徒歩でも三十分ほど進めば行ける距離にあるというのも良い。

古代から現代に至るまでの建物を集めに集めた施設で、かなり広大な場所である。一日がかりと言っても過言ではなく、かなり楽しめるエンタテインメント施設でありながら、入園料は500円しないという素晴らしい施設。建物好きはもちろんのこと、普通に園内を回って建物の中に入るだけでも非日常的な空間を味わえるというのが面白い。

東エリアの古い街並み

入口では休館中の江戸東京博物館にある収蔵品を展示している企画展を開催。江戸東京博物館の分館としての位置付けになっているので、相互でこういったやり取りができるのだろうか。しばらく観ることのできない江戸東京博物館の名残をここで少し復習したりして懐かしい気持ちになる。

乾物屋(大和屋)鰹節のひな壇

園内は縄文住居から近代に至るまで幅広い時代の建物を有しており、特に明治以降の近代建築が多く入っているのが特徴的。園内の東側はまるで昭和にタイムスリップしたかのような街並みが再現されている。正面に佇む銭湯はもちろん中に入れる。入浴はできないけれど湯船の深さが堪能できたり壁にある富士山の絵など、古き良き時代の名残を感じるには充分。憧れの女湯にも入れる。

銭湯(子宝湯)かの約束された地

銭湯の隣にある内田百閒も愛した居酒屋の鍵屋なんかは本当にここで一杯ひっかけていきたい気分になるノスタルジックな店だし、昔の蔵(醤油店)や旅館など、商売が繁盛するのに比例して奥行きも広く、変わったところでは和傘問屋がめちゃくちゃ奥行きが広かったのが興味深い。

居酒屋(鍵屋)ここにずっと居たい

看板建築(タイルを全面に貼った表側と勾配が途中で急になった屋根が特徴的な建築らしい)の文具店や生花店、乾物屋のほか、個人邸宅なんかも紹介されており、実に多くの種類の建物が移築されてここに揃っているのが面白い。時勢柄、建物ごとに制限人数が決まっているのだけれど、台風の影響でそもそも入園者が少なくて待ち時間がゼロという素晴らしい環境。行くなら雨の日に限る。しかもこの日は雨が降らなかったのでシチュエーションとしては最高でしかない。

花屋(花市)定員2名でも待ち不要

個人的にはいい匂いのする化粧品屋が好みだったのと、日本銀行の総裁と総理大臣を歴任した高橋是清邸が東エリアでは秀逸だろうか。高橋是清は二・二六事件で暗殺された人物で、暴走した軍部によって襲撃されたのがこの自邸。殺された2階の部屋もそのまま残されている上に普通に見学できるというのも衝撃的。あと庭も広い。苔むす庭を歩くのもまた趣がある。

高橋邸 手前か奥のどちらかで殺されたらしい

西エリアに足を向けると今度は高級住宅街のような様相になる。田園調布に建てられた個人邸宅や写真店など、限られた土地の中で部屋割りや内装にこだわった建物が多い中、なんといっても人気なのは前川國男邸。東京都美術館をはじめとした多くの建築を残した前川國男の自邸ともなればこだわりの塊のようなものである。なといっても居間が吹き抜けになっているのが圧巻。もう軽井沢あたりのペンションにして住みたい気分である。仕事部屋に寝室、バストイレに至るまで文句の付け所がない完璧な構成。住みたくなる家とはまさにこのこと。ここにずっと居たくなる家である。

非の打ち所がない前川邸

また隣接する小出邸もひけをとらない。建築家の堀口捨己が最初に手がけた邸宅で、和室と洋室の融合によって高級感が醸される1階もさることながら2階の屋根裏部屋がなんといっても良い。子供の頃に誰もが憧れた屋根裏部屋の真髄がここにあるといっても過言であるかもしれないが、とにかく良い。

小出邸 屋根裏部屋に住みたい

現在は1階がカフェとして使用されているデ・ラランデ邸も面白い。カフェの内装も凝っており、利用者に迷惑をかけない程度に見て回ることもできる。カルピスの発明者である三島海雲が住んでいたことでも知られているという。

デ・ラランデ邸 外装も良い

近代邸宅の中で最後に控えるのが三井八郎右衛門の邸宅。言わずと知れた三井財閥の当主が住んでいた住宅である。文句の付け所がない。室内にある襖など全てが円山四条派の絵師たちによって設えられている上、和式の廊下にはシャンデリアまであるという和洋折衷を鋭く攻めた建築である。とにかく圧倒的な財力を感じずにはいられない。隣接する土蔵まで巨大で風格が備わっている。

三井邸 圧倒的な財力

最奥部にあるのが古民家群。八王子千人同心の家など特徴的な古民家がいくつかあり、燻された匂いが個人的はとても好みである。園内のトイレはウォシュレット式。デ・ラランデ邸のトイレも使用できるが洋式。ちなみに展示されている中では高橋是清邸が和式、三井八郎右衛門邸は洋式。前川國男邸は洋式、小出邸は和式のトイレが残されているがもちろん使用はできない。

農家もあるよ

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