昭和ネオン高村看板ミュージアム(東京都品川区・新馬場駅)
夜の街に浮かび上がるネオン。どこかノスタルジックな気持ちを思い出させる、昭和の時代を象徴するような光といえるかもしれない。旧東海道に面した場所に社を構える株式会社昭和ネオンは、ネオン看板をはじめとしてLEDサインや屋上広告塔などの屋外広告物をメインに製造・販売している会社である。昭和ネオン高村看板ミュージアムは本社の社内2階にある。
会社内にあるため念のため問い合わせてみたところ、特に予約も必要なく自由に見学できるようになっており、社員が行き交う中で訪れるのは少し緊張するものの、見学者が珍しくはないようで特に不審がられる様子もない。展示室では日本における看板の歴史を網羅するような看板のコレクションが豊富に展示されている。創立100年を誇る会社の前身である高村看板店の三代目である高村五郎氏の収集した古看板の中から180点ほどを紹介している。
看板の歴史は日本では8世紀に遡る。市場で売る商品に標識を立てるようにという決まりができ、主に絵で描かれた「標」と呼ばれる札を並べたものが始まり。店頭に張り出された看板という名称で親しまれるようになったのは江戸時代に入ってから。識字率が増えたことで従来の絵から店名など文字を入れたものが目立つようになり、中には「鎌」「輪」「ぬ」を組み合わせて「(入っても)かまわぬ」といった意味合いを持ち通行人に興味を持たせるような看板もあったという。広告の一環としての役割がここにある。当時は木彫りの職人によって技巧を凝らしたものが多かった。
看板といってもその種類は多く、シンプルに軒先に掛けられた板看板から、店頭に立てられた立看板、事業内容(取扱製品)を象徴している形の看板など様々である。看板は店の顔、とにかく目を引くことと象徴であることを兼ねそなえたクオリティが必要で、ここに看板職人のクリエイティビティが大いに発揮されることになる。商人階級を狙った喫煙具の煙管を表した看板、書道が隆盛を極めた頃にできた筆屋の筆の形をした看板、酢を扱った「す」と描かれた看板など実にバラエティに富んでいる。
また会社名に入っているとおり会社の入口にはネオン看板の会社看板もある上、どういった仕組みで点灯しているのかがわかるネオンの点滅装置も紹介されている。ミュージアム自体がネオンライトでギラギラ光っているわけではないけれど、多くの看板に触れて楽しめる一風かわったミュージアムである。トイレはウォシュレット式。