神奈川県立近代美術館葉山館(神奈川県葉山町・逗子葉山駅)
神奈川県立近代美術館は鎌倉館と葉山館とが存在している。鎌倉にある鎌倉館と葉山にある葉山館、どちらが本館だとかいう括りは無いようだけれど、土地を広く持っている分こちらの葉山館の方が規模は大きい。ただ最寄駅から徒歩数分で行ける鎌倉館に対し、葉山館は駅から徒歩で行ける距離では到底ないのでアクセスは鎌倉館の方に軍配が上がるだろうか。葉山館は場所柄もあり1日をかけてじっくり回りたい美術館である。
もともと神奈川県立近代美術館の本館は鎌倉にある鶴岡八幡宮の境内にあったものだった。建物の老朽化や賃貸契約などの理由でこの鎌倉本館が閉館することとなり、分館として立っていた鎌倉館と葉山館がその機能を担うこととなった。鎌倉にあった本館の方は契約上の問題解消や改修を行った結果、鎌倉文華館としてリニューアルし、現在は歴史に関連する資料公開を中心に運営されている。
展示室が一つである鎌倉館に比べると葉山館は四つほどあり規模が違う。訪問時は企画展として「100年前の未来」と題して、日本美術界の100年を追う企画展を開催(現在は別の企画展)。収蔵している作品を中心にしつつ、明治時代以降の日本の美術がどんな変遷を遂げてきたのかを紹介している。エロシェンコからはじまり、黒田清輝の友人で惜しくも夭折した久米民十郎に着目し、またその後は村山知義からシュルレアリスムへと繋がって行く美術の変遷を丁寧に紹介。
教科書でよく出てくる岸田劉生の少女像いわゆる麗子像だったり、松本竣介、萬鉄五郎、山口蓬春、村井正誠など多彩なジャンルの作品を公開しており、美術品の収蔵品の幅広さがわかる。中庭が望める休憩室があったり、海がすぐそばにあるというロケーションでかなりくつろげる。美術館の中だけでなく屋外にも多くの野外彫刻が展示されており、続いている砂浜も含め周囲を歩きながら作品を鑑賞できるのが良い。
館内の地下階には、美術書が開架されている美術書の閲覧室もあり、じっくりと美術と向き合うのには最適な環境といえるかもしれない。トイレは和式と洋式、それに多目的トイレとしてウォシュレット式が機能している。惜しいのは美術館のショップがやや小振りということだろうか。せっかくだからお土産に、という人は多いと思うのだけれど。