東京都庭園美術館(東京都港区・目黒駅 アール・デコの貴重書)
東京都庭園美術館は朝香宮邸として使われていた建物で、その当時の面影を今も残していることから、いわゆる「お屋敷」気分を今でも味わうことができる貴重な場所。アンリ・ラパンによってデザインされ、宮内省内匠寮の人々によって設計されたこの建物は、細部に至るまで細かい造形が施されており見ているだけで既に美術品の鑑賞をしている気分になる。今回の企画展ではこれらデザイナーの仕事ぶりを紹介しながら、夢の共演となった建物の細部に至るまでを展示している。
アール・デコ様式を取り入れた建物をひもとくように各部屋にはアール・デコ期の記帳書を展示し、内装との共通項を見出すというのがその主題になっている。しかしなんといっても貴重なのは建物をメインにした数少ない公開期間。普段は禁止されている建物内の撮影もこの期間はできるというのもあって、もともと多い見学者がいつもよりも増えているような感覚。開館時間に合わせて訪れたものの既に入場待ちの行列ができているという有様だった。
アンリ・ラパンによる香水塔をはじめとした各部屋の内装デザイン、
ルネ・ラリックによる入口の玄関ガラスレリーフやシャンデリア、
イヴァン・ブランショによる大理石のレリーフ、
マックス・アングランによるエッチングガラスの装飾、
レイモン・シュブによるタンパン(扉上の飾り部)やサイドボード
といった一流のデザイナーたちによって彩られた夢の共演といった邸内。その全ての部屋において芸術が息づいており、正直なところ展示品を見る時間よりも部屋を眺めている時間の方が多いくらい。
一つ一つにため息をつくばかり。各部屋にある電灯も全て違うデザインになっていたり、どれだけの予算をかけたのか。ブルジョアジーである。
朝香宮邸として使われたあとは政府が借り受けて首相公邸や迎賓館として使用されたりした後にこの美術館として一般公開されるようになった。
老朽化するたびに内装は改修されているのだけれど、館内で唯一、姫宮寝室と姫宮居室だけは当時のまま残されている。これはずっと倉庫として使われたことによるもので、美術館として公開するにあたり当時のままで残しておこうとしたものによる。そのため壁紙にもシワができていたり、壁紙と木枠に境目にある見切り縁がだらんと垂れ下がっていたりと風情がある。
新館の方では旧朝香宮に携わったデザイナーが手がけてきた他の作品や、当時のデザイン流行についての紹介といった企画展になっている。なお、庭園もようやく開放されるようになり、日本庭園と西洋庭園の両方とも自由に行き来できるようになった。残念ながら茶室については公開休止になってしまっている。トイレは本館・新館いずれもウォシュレット式。
気になったことをスタッフに尋ねることが多いある意味で厄介な見学者なのだけれど、経験上ここの美術館のスタッフの方はかなり質が高い。想定問答集が作られているのかもしれない。質問に対しての答えが芯を食っていて迅速。その場ですぐにわからなくても学芸員などが待機していて退館までには教えてくれるというスピード&クオリティで安心できる。
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