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月光荘画材展示室(東京都中央区・銀座駅)

画家に必要なものは何かといえば、まずは画材。画材がなくては始まらない。いくら作品を創造することができてもそれを形として表現することができなくては意味がない。月光荘画材店は大正時代の創業から現在に至るまで多くの画家のクリエイティビティを支えてきた歴史ある画材店である。

中央区まちかど展示館の一つでもある月光荘画材店は地下にギャラリーがある。階段を降りる途中には月光荘の象徴であるホルンが飾られ、地下階の奥にあるギャラリーへの導線には月光荘の由来や当時の写真が飾られている。こちらはかつてカフェーとしても機能していたらしく、カウンターが残されているのもまた歴史を感じさせているようで良い。

左手がカウンターの名残 奥には画室ギャラリーもある

月光荘という、画材店としてはかなり幻想的な名称の名付け親は与謝野鉄幹・与謝野晶子という文人夫妻によるもの。顔料から国産一号となる絵の具を開発した月光荘は、全て絵の具を自社で製造し(自社工場も持っている)オリジナル絵の具のみを取り扱っている。中でも月光荘ピンクという色を開発したことでも知られている。創業まもない頃は背の高いフランス人女性がスタッフとしてお店に立っていたらしい。

多くの写真と共に残されている記憶

月光荘の創業者である橋本兵蔵は与謝野晶子から店名を送られた際の恩を忘れず、本名を名乗らず「月光荘おじさん」と自称し親しまれ、なんと顧客からの郵便物も「月光荘おじさん」で届いたという。月光荘おじさんとも仲の良かった画家の猪熊弦一郎の呼びかけで建てられた軽井沢の「画架の森」という別荘には彼らの他に作曲家の服部良一や建築家の谷口吉郎、真珠ミキモト社長の御木本義隆などがいたという。なかなかのグループである。

別荘の記憶

トイレは男女共有の個室ウォシュレット式。ちなみにビートルズのメンバー4人で制作した世界に1枚だけの絵は月光荘の絵の具を使って描かれたものだったり、歌手の森山良子による代表作『この広い野原いっぱい』の創作きっかけであったりと音楽シーンにも関わっているあたり、トレードマークのホルンに込めた「色感と音感は人生の宝物」という価値観を実現しているものといえる。

銀座で活動する画家の聖地ともいえる


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