パナソニック汐留美術館(東京都港区・汐留駅 ブダペスト国立工芸美術館名品展)〜資生堂ギャラリー(東京都中央区・銀座駅 中島伽倻子展)
・パナソニック汐留美術館(ブダペスト国立工芸美術館名品展)
訪問している美術館で最も多く訪れている。それぞれ展示内容は違うけれど4回目、新橋駅や汐留駅から歩いて近いという好立地なのも一つの要因かもしれない。
日本の美術がとして西洋で注目されたのがパリをはじめとした万国博覧会。それを契機として西洋の工芸には徐々にジャポニズム文化が取り入れられ、アール・ヌーヴォーの一端として見られるようになる。今回の企画展はジャポニズムからアール・ヌーヴォーへ、と称して影響下にある工芸品を中心に展示されている。
ガレやティファニー、ドーム兄弟といった有名どころの作品が並んでいるほか、まるで宮川香山の高浮彫を髣髴とさせる作品もある(宮川香山も万国博覧会の出展を皮切りに世界へ注目されることとなった)。
ロイヤル・コペンハーゲンの流麗な色彩もさることながら、注目なのはジョルナイ製造所によって発明された釉薬のエオシン彩。金属を思わせる玉虫色の鮮やかな色彩に目を奪われること必至。写真撮影できないのが惜しい。
ほとんどの作品には日本の茶器と同じように長い名前が付けられている。「濃紫地金彩昆虫文蓋付飾壺」や「黒褐色金属光沢結晶釉花器」といった名称。これは学芸員と図録を作っている木田裕也教授によって今回の展覧会で命名されたそうで、中には「花器」といったシンプルな名称のものもある。これは特徴を断定できないために名付けられた可能性が高いらしい。考えてみれば独立したユニークの作品ではなく、工房で生産される工芸品そのものであるがゆえ、そこから後世の人が特徴を観察してそれにふさわしい名前をつけて行くというのは非常に困難なことなのかもしれない。楽しそうではあるけれども。
今回は作品数が200点と多く、展示室のパーテーションも程よく区切られており見ごたえが充分。ここの美術館はパーテーションの区切り方で見学時間がだいぶ変わるということがようやくわかってきた。常設展示はジョルジュ・ルオーの奇抜な作風が取り上げられている。気が乗るとキャンバスどころか額縁、はては裏側にまで描き続けてしまった作品などなかなかトリッキーである。トイレは言わずもがなウォシュレット式。
・資生堂ギャラリー(中島伽倻子展)
資生堂ギャラリーは日本で最古の画廊と言われている。現在のギャラリーは資生堂ビルの階段で地下へと降りて行くとある。今回の展示は公募で集められた新進気鋭のアーティストの作品243件の中から入選した3人のうち中島伽倻子による「Hedgehogs」と称したインスタレーション作品。巨大なインスタレーションを作ることが多いらしく今回の展示も1つの作品で構成されている。
https://gallery.shiseido.com/jp/artegg/prize/5091/
階段途中の踊り場に呼び出しベルが1個だけポツンと置かれている。さらに階段を降りるとギャラリー受付があり、そこを通れば大展示室に巨大な壁と扉が1つ。壁には無数のアクリル板が突き刺さっている。これがハリネズミに見えることから「Hedgehogs」と命名されている。ハリネズミのヂレンマも関係している。分断ということですな。扉には触れられず開けることができない。大展示室と小展示室を分断してたった1つの作品で勝負するという思い切りの良さがなかなか面白い。
最初は何なのかと通り過ぎたのだけれど実は途中の踊り場にある呼び出しベルも作品の一部らしいので、押してOKだとスタッフの方からの了解を取り付けたので遠慮なく押す。けたたましくベルが鳴り響く。しかし分断された壁の向こう側の鑑賞者にはなぜ鳴っているのかわからない、という寸法である。あえて説明を入れていないので気づかずにスルーする人も多いかもしれない。それもまた分断なのである。と納得する。トイレは調べ忘れた。基本的に店舗ですから。でも銀座の一等地にあるしウォシュレット式であることはほぼ間違いないだろう。