武蔵野ふるさと歴史館(東京都武蔵野市・武蔵境駅)
武蔵境駅の北口をひたすらに西進する。南口に比べると住宅街がひしめいている印象のある北口、中央線の高架下はスマートな一直線の歩道になっており、高架下のスペースを使ってカフェなどの店舗が充実している。
その道をひたすらに進んで行くとあるのが武蔵野ふるさと歴史館。武蔵野市の歴史と文化を紹介している博物館である。
常設展示では旧石器時代・縄文時代の歴史から現代に至るまでに武蔵野市の歴史を展示している。おなじみの土器に板碑もしっかりとある。残念ながら石棒はなかった。蕨手刀という鉄製の刀も展示されている。東北地方に多く分布している刀だそうで、それがなぜ武蔵野にあったのかは不明とされている。
農耕も盛んで、多くの農具が展示されているのも郷土博物館ならでは。江戸時代に入って江戸城下が大火に遭うとそれを機に郊外へ城下町を拡大、農民らに与えられた原野を切り拓くことでこの一帯も発展したのだという。ただ代官との折り合いが悪い時期には御門訴事件などギスギスした関係もあったという。
近代化へと大きく舵を切ったのは鉄道開通から。甲武鉄道が開通したことで現在の武蔵境駅の周辺に停車場が設けられ、そこを中心として人口も増えることになる。
作家としては国木田独歩がそのものである『武蔵野』を刊行、地方出身の国木田独歩から見た武蔵野を鋭く描いた作品である。やがて戦争に突入すると軍需工場が立ち並び、それを狙った米軍の爆撃にもさらされている。
企画展では「異界」をテーマにした展示がされている。ダイダラボッチ、井の頭池の天女と大蛇、追っても追ってもたどりつけない逃げ水などの武蔵野における伝説の他、非日常的空間としてハモニカ横丁や寺社における行事の紹介など、民俗学に注視した展示を行っている。会場作りがお化け屋敷のようで意欲的なのが特徴。トイレは和式。