古代エジプト美術館(東京都渋谷区・渋谷駅)
中近東の文化について展示しているミュージアムは都内にいくつかある。最も代表的なのは池袋サンシャインシティにある古代オリエント博物館だろうか。また初代館長だった江上波夫のコレクションを集めた横浜ユーラシア文化館も充実の展示数でこちらは櫻木町にある。あとは東京国立博物館の東洋館や三鷹市の中近東文化センターあたりが大きなミュージアムだろうか。稀に企画展なども色々なミュージアムで開催されている。そんな中で一際めずらしいのが渋谷のど真ん中にある古代エジプト美術館である。
雑居ビルの中にあるという知る人ぞ知るミュージアムで、外観だけ観ると他のミュージアムに比べてかなり小規模な感触があり不安になる。ここはもしかしてエジプトっぽいグッズを販売しているだけのなんちゃってミュージアムなのではないか? なんて疑心暗鬼に駆られながらドアーを開けると、その向こうには大量の実物コレクションが販売ではなく展示されているという本格的なミュージアムだったので一安心する。
最初にロビーでエジプト文化の紹介映像を観てからスタッフの方による施設の概要説明を受けるというのが入館からの流れになっている。ロビーにも多くの展示品があり、部屋の装飾もエジプトらしさを醸し出す雰囲気。説明を受けている中で渡されたのが懐中電灯。館内には石室を再現した部屋があり、そちらは石室のイメージ通り真っ暗闇のため、足元を照らすためでもあり室内にある展示品を観るためにも必要なアイテムなのだそう。なんというエンターテインメント性。雑居ビルの中にあるのでそんなに広くない施設のはずなのに見学者を楽しませる趣向に期待値が上がる。
カーテンをくぐった先が展示室となっている。展示室は全部で4部屋あり、それぞれの部屋には大小さまざまな展示物が並べられている。もちろん全て本物。ちなみに訪問した日にはお笑い芸人の平井"ファラオ"光(馬鹿よ貴方は)がタロットカード占いサービスを行なっていて、1000円というリーズナブルな値段で占いをしてもらえる。M-1グランプリ決勝にも出場している実力派と対面で会話できるというのはかなり貴重かもしれない。
奥の石室ではミイラが棺に収められている他、人の形を残した(髪の毛も残っている)女性の頭部ミイラが特にインパクト強い。脊髄まで残されているのでかなりグロテスク度は高く、真っ暗な部屋の中に入って懐中電灯で展示物を探しているときにパッと写り込んでくるので動揺すること請け合い。壁にも秘密が埋め込まれていたりと古代エジプトを再現するための演出は見事としか言いようがない。
スタッフの方もかなりの博学で、展示品の中でわからないことがあれば質問に答えてくれる、初心者にもわかるように膨大な知識を持って説明してくれるので接しやすい。ヒエログリフの読み方を教えてくれたりエジプト考古学に対してかなり愛情を持っていることが伝わってくる。大々的に宣伝しているわけではない少しマニアックなミュージアムではあるけれどその収蔵品はかなり豊富。ぜひ訪れておきたい場所である。トイレは男女共用の個室ウォシュレット式。