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NTTインターコミュニケーション・センター(東京都新宿区・初台駅)
東京オペラシティの中にあるNTTインターコミュニケーション・センター、通称ICCでは2つの企画展をぞれぞれのフロアで開催している。NTTの技術を駆使したコンテンツであるということ以外には共通点もなく全く系統が異なるというのも面白い。3階では近年から葛飾北斎を特集するシリーズを開催している。
序章・破章・急章と続いているその第三章である【急】その一として位置付けられる今回の企画展、さまざまな場所から富士山を描いたことで知られる『富嶽三十六景』をテーマとしてそのほぼ全ての作品を展示している。注目したいのは拡大図においてもNTTの技術を駆使した繊細な印刷で、版画の凹凸までが忠実に再現されており、これが平面に印刷されたものだとは一見するとわからない。
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当然ながら本物の版画ではなくレプリカだが、紙質まで印刷で再現しており、しかもそれを明るい照明の下で間近に見られるのが衝撃的。考えてみればそもそも浮世絵というのは大量に刷られたものなので一点ものというよりはその技術や絵画技法を味わう傾向が強い。であれば、ゼロ距離で見られる上にその印刷技術も再現しているのは非常にポイントが高い。『富嶽三十六景』の他にも『菊図』や北斎の最晩年の絶筆とされる『富士越龍』など、北斎の作品が充実している上に写真撮影も可能となっており、非常に見応えのある展示となっている。都内で北斎の作品を見たいとなったらまずおすすめしたい場所である。
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4階では「ものごとのかたち」と題した企画展を実施。NTTの技術を駆使した科学博物館のような趣のある4階の展示は体験型のものが多い上、現代アートとの親和性が高く、映像を効果的に使ったり音声を使った印象的な展示はICCならではといったところだろうか。
個人的には真っ暗な部屋の中でガラス管に入っている電熱線が発熱することで熱音響現象を実演する展示が好み。また東京大学で研究している「個と群」のプロセスに則った折り紙やキューブの展示が興味深い。トイレはウォシュレット式。
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