松岡美術館(東京都港区・目黒駅)
目黒や白金台に用事があるならぜひ訪れておきたい美術館が松岡美術館。不動産事業を中心にしている松岡地所の運営する美術館で、創業者の松岡清次郎が自らの審美眼で収集した美術品を展示しており、基本的に収蔵品を入れ替えながら運営しておりそのコレクションの数は2400点にも上っている。
2022年に長期休館から再開し、企画展として松岡コレクションを再構成して紹介している。企画展が変わるたびに縁あって訪れており今年に入ってから三度目の来訪。松岡美術館の顔ともいえるブールデルの巨大な『ペネロープ』や横に佇むジャコメッティ『猫の給仕頭』に出迎えられながら、1階にある展示室1へ。古代オリエント美術を中心にしたこちらの展示室では特別展示として「霊獣の文様」をテーマにガラスケース内で中国青銅器を紹介している。饕餮や蝸身獣などそもそも読み方すら曖昧な神話の獣を文様にした青銅器の奇抜さが印象深い。展示室2の現代彫刻、展示室3の古代東洋彫刻は常設展示しており顔ぶれも同じ、中国仏教、ガンダーラ、インド彫刻、クメール彫刻と並んだ56体もの神仏像は圧巻である。
階段を上がった2階にある展示室4は、これもまた松岡美術館の顔とも言える陶磁器の展示室。松岡コレクションの発端は、ここに展示されている『青花龍唐草文天球瓶』を入手したことからはじまっており、そういう意味でもこの展示室は特別なものと言えるかもしれない。企画展として「霊獣の文様」をこちらでも展開。陶磁器に描かれた、あるいは造形された霊獣たちの饗宴が印象深い。
隣にある展示室5では今回は西洋画を中心にした展示。これまで訪れた時にはいつでも日本画がメインで展示されていたため、西洋画があるとは思いもよらず意外な遭遇。ヨン・フレデリック・ピーター・ポルティーリエ『オリエントの少女像』や、ジョン・エヴァレット・ミレイの『聖テレジアの少女時代』といった人物画の他に、ウジェーヌ・ブーダン、アルマン・ギヨマンなどが描く風景画も多く展示されている。モネもね。東洋のかおりをテーマにした西洋画ということもあってか、室内の一角にある床の間では円山応挙の日本画が一点だけ添えられている。
つづく展示室6でも西洋画は続く。こちらは西洋画家の中でも割と著名な人物が多い。ポール・シニャック、キース・ヴァン・ドンゲン、藤田嗣治、キスリングといった美術館でお馴染みのメンバーや、モディリアーニ、ローランサンにピカソといった巷でもよく見かけるような画家に至るまで揃っている。さらにシャガールまである。まさか松岡美術館でシャガールに出逢うとは。予想を超えた作品群に感謝しかないのであった。トイレはウォシュレット式。
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