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パナソニック汐留美術館(東京都港区・汐留駅 神坂雪佳展)

汐留駅からすぐのパナソニック汐留美術館。こちらでは画家でありデザイナーの神坂雪佳の展覧会を開催している。神坂雪佳はいわゆる「琳派」と呼ばれる作風を継承している近代画家の一人で、そのデザイン性は海外でも評価され、エルメス誌の表紙を飾ったりしている。

琳派」とは江戸時代に確立された尾形光琳に代表される大胆な作風で、展示室ではまずは琳派の歴史について、関連する画家の作品と共に紹介している。江戸時代に本阿弥光悦俵屋宗達によって作られたインパクトの強いデザイン性を持った日本画や工芸品が琳派のはじまりとされる。それらの作品に触れた尾形光琳や弟の尾形乾山によって作風は発展し一気に展開し多くのフォロワーを産み、以降は彼らの作風に影響を受けた酒井抱一や鈴木其一らが大成し、総じて琳派と体系づけられた。

展示室は最初から俵屋宗達『双犬図』や本阿弥光悦と共に描いた書画が立ち並び、やがて尾形光琳と尾形乾山の作品がお目見え。江戸時代に一大勢力となった琳派の歴史が垣間見える。深江芦舟や『白象図屏風』で名高い渡辺始興などが立ち並ぶ中、今回の神坂雪佳の所蔵していた『枝豆屏風』をはじめとした中村芳中の作品の中では動物の絵がどれもゆるくて可愛らしく、雪佳の作風にもその影響が見られる。

雪佳の描く犬 なんてゆるくて可愛いんだ

続く展示室からは神坂雪佳の仕事としてデザインカタログなどを紹介。図案化としてスタートしている雪佳らしく、『ちく佐』『染織図案海路』『百々世草』『蝶千種』といった多くのデザイン集を表している。面白いのは色々な剽軽な様子をデザインにした『滑稽図案』で、表示のタイトルまで人の顔を模したものになっている。

素敵なデザインの宝庫

次の部屋からはデザインの広がりということで、神坂雪佳の描いた絵画であったり彼の図案を基に作られた手箱や扇子、それに陶器などが紹介されている。弟の神坂祐吉もまた蒔絵師として活動しており、兄弟の共同作品も何点か展示されている。最後の部屋もまた神坂雪佳の絵画が中心となっている。本阿弥光悦や俵屋宗達をリスペクトした作品をはじめ、目を引くのは『杜若図屏風』で、こちらは国宝となっている尾形光琳の『燕子花図』を思わせる、まさに琳派の集大成の作品と言えるかもしれない。

描く作品には琳派らしさが見られる

今回の神坂雪佳の作品は多くが京都の細見美術館から借りているもの。常設展ではパナソニック汐留美術館の収蔵品としてジョルジュ・ルオーの作品を展示している。今回は新収蔵作品として『老兵(アンリ・リュップの思い出)』が追加され、作品の検証についてのエピソードも紹介されている。トイレはウォシュレット式。

会期終了後は改修工事によってしばらく休館する

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