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実家日記:虫は悪くない
12月に父に数年ぶりに会った時、父の足の親指の爪が殆どなくなっていて、水虫なんだよね、痒くてこうなってる、と父は言っていた。
そして市販薬をずっと塗っていた。
父曰く水虫(仮)は数年前に左足から始まり、右足に移ってずっと痒いらしい。
そんな状況なのだが、市販薬を塗る以外の対処はしてこなかったという。
父の今の状態というのは、これまでにも様々に記事にしてきている。
大体は過去の記事を読んでいただくとわかるとは思うが、
こういった過去記事を、再度読んでいただくのも大変かもしれないので、ざっと状況を解説すると下記のようになる。
そもそも父はDV加害者で、
僕が子供の頃から何度も家庭内暴力で警察沙汰となり、
おそらくはアルコール使用障害で、
家族はとうに解散して半絶縁状態にあり、
僕宛に電話はたまに来るけれどその電話も酔っ払って罵詈雑言が録音された留守電が分刻みで残っていたりと碌なものではなく、
それでもたまには電話に出ると3時間は喋り倒されるので、その電話に付き合いはするけれど、僕らは数年顔を合わせてはいなかった。
加えて、
その父が歩行者侵入禁止のはずのバイパスに侵入し歩いているのが確保され、救急搬送をされたのが昨年12月の中頃、
久しぶりに行った元実家は滞納に対する督促状や未払いの請求書が幾つも幾つもバラバラに打ち捨てられている状態で、それらを整理し、かつ、認知能力が低下している父の生活を整える始末を僕と兄弟はつけ始めて現在に至っている。
父は病院嫌いなものだから、これまで通院らしい通院をしてこなかった。
その結果、様々な身体的不具合を効果がよくわからない高額なサプリメントの定期購入に頼っていた父だけれど、これからもその調子では困ってしまう。とにかく今の父には経済力は皆無なのだ。
とりあえず定期購入を解約させながら、様子を見に行くたびに、どこかしらの病院に連れて行くようにしてきた。
冒頭の通り、足の爪の不具合を当人が気にしていたので、水虫についてもそのうち連れて行かないといけないかなと思ってはいた矢先。
またもや高額の定期購入を申し込み、第一回目の商品を支払えない、という事態が起きた。
それが水虫薬だったので、
ああもうこれはとりあえず皮膚科に連れて行くか!
というわけで、皮膚科に連れて行った。
しかし、はたして水虫なのか本当にという問題があった。爪はなくなっているのだけれど。
残っている爪の組織を取られて15分少々の検査結果を待つ間、父は待合室の壁に貼られた「皮膚炎をおこす虫たち」というポスターを見ていた。
「こんなに皮膚炎の原因になる虫がいるんだねえ」としげしげとポスターを眺めた後、
「でもね、虫たちが悪いんじゃないんだよ。そういうとこに行く人間が悪いんだよ」
と言った。
そうとばかりは言えない事情もあるかもしれない、というところは脇にのけて、
実はこれについては僕も概ねそう思う。
僕は虫好きなのでね。
父、たまにいいことを言うな。
そんなこんなで、皮膚炎を起こす虫たち(可愛い)のポスターを眺めながら、待つこと15分。
結果は、
水虫じゃありませんでした。
どうも、ただの加齢と栄養不足や手入れ不足による爪のトラブル。
いい爪が出るようにケアしてくださいねと尿素クリームを処方され終了。
いやほんと、
(水)虫は悪くなかった
というかいなかった。
とんだ冤罪だった水虫。
戦う相手が存在しもしないのにずっと水虫薬を塗られていた父の足の爪よ、お疲れ。
やっぱり水虫薬買わなくてよかったんじゃんね。
水虫薬はもう塗らないんだよ、
水虫じゃないから水虫薬買わないんだよ、
と言い聞かせながら帰る間、
「最初は水虫だったけど自力で治せたってことか!」と言い放ったので、
速攻で「違うよ」と強めに打ち消した。