ジョージア映画『祈り』『希望の樹』
ジョージアはトルコの近くで黒海に面した小さな国。山を越えればロシア。ジョージアの映画ってこれまで見る機会がなかったし、DVDもあまり出回っていないみたい。今回、ひょんなきっかけでジョージア映画祭のパンフレットを見た。
とたんに興味がわいてきてしまい、その場で上映時間をチェックして翌日には、映画館へ行っていた!
テンギズ・アブラゼという監督の「祈り三部作」と呼ばれる作品が上映していた。三作品ぜんぶ見てみたかったけれど時間的に無理だったため、二本にしておいた。
ということで、今回鑑賞したのは『祈り』と『希望の樹』。
映画館に(たぶん)山口智子さんがいた気がする。ショートカット(!?)で黒いワンピース来てた。映画館の人と話してたけれど、ジロジロ見るのも気がひけるので特に何もせず通り過ぎた。平日で人も少なかったせいか、周囲の人も特に気にせず(あるいは気づいていないか)だった。
『祈り』
正直、意味不明な部分が多々あって、あともう2回くらい見ないと分からない気がするけれど、テーマは一貫していると思う。
キリスト教徒とイスラム教徒、異なる宗教を持つ人間同士が心を通じ合わせたとて、それを周囲は認めてはくれない。異教の人間には情さえかけてはならないのか。
その地で生まれた独自のしきたりってたくさんあるんだな。一風変わった過激なものとか。ばあさんたちの泣き声が笑い声に聞こえてきてカルトチックだった。村同士の対立を通して人間の残酷なかたちが見えた。因習の中で暮らすのは大変なのだ。
『希望の樹』
こちらもまた、因習にとらわれた悲劇であった。
美しいものがボロクソにされてゆく悲劇…、といっても終始陰鬱な映画というわけではなく、中盤はコメディのようなシーンも存在する。観客の控えめな笑い声も聞こえたりした。
東ジョージアの美しい農村を舞台とし、序盤でハッとされるくらいに真っ赤なケシの花の鮮やさに目を奪われた。その美しい中で死にゆく命があった。
そして、終盤には廃墟となった家の周囲に咲いた美しい赤い花。こんなに寂れた場所にも花が咲くのだ。
「人の美しい本性が滅びることはない」というテーマが掲げられているので、最後は希望が見えた。
所々に時代も反映されていた。時代の変化、革命が来るかもってとき、人はどんな感じになるだろう。変わらず生活を送れる人もいれば、不安になり興奮気味にもなる人もいる。変化を求めない人と求める人と人それぞれではあるけれど、むしろ変化に敏感な人の方が狂人扱いされてしまっていた。
いつの時代もそうかも。時代を先行する人はたたかれるし、変人扱いされてしまう。
そして、なんといっても印象深かったのが、夢みる少女の心を持った年増おばさん。妖怪かピエロかのようなヤバイ化粧をし、年不相応の格好。ボロボロになってしまったけれど捨てられないのか、フリフリのドレスとフリフリの日傘。口を開けば若い頃の自慢話(しかも作り話だという…)。
とても淋しくて痛々しい姿に、私はとても心に重く感じるものがあった。なにか方向性を誤って進んでいけば、誰しも彼女と同じ姿になり得る可能性はあるのだ。
彼女は最後、村の因習に抵抗していた。無力でどうにもできないなりに。
よい映画だった!