デザイナー セキユリヲさんの3箇条

『デザイナーが未来に残したい私の3ヵ条』から、セキユリヲさんの仕事で大切にしているルールを紹介します。本書には、作品も紹介されていますので、詳細は是非そちらをご覧ください。

①手紙を書くような気持ちで

デザインの仕事では、相手の気持ちに沿うように、その立場になって考えることをすごく大切にしている。
それを手にした相手の気持ちにたつというのは、「手紙を書くような気持ちでデザインする」ということかもしれない。

1度に大勢の人のことを考えるのは難しいので、具体的に知人や友人をイメージして、「あの人ならどう思うかな」と想像しながら作り込んでいく。

20代、30代前半くらいまでは個性ってなんだろうと気にしながらデザインしていたが、年を重ねるにつれ、
「顔が見える人に向けて、語りかけるように、気負わずにものづくりしたい」そういう気持ちが強くなっていて、それが自分らしいデザインなんだろうなと、今は思っている。

②風通しを良くする

グラフィックパターンのデザインをするときに大事にしているのが「間」。
ラフを描いたりデザインを煮詰めたりしていく中でも「一番風通しがいいのはどれだろう?」と意識している。
風通しがいいということは、息苦しく感じない、気持ちよく呼吸できるということへとつながっているような気がする。

自然物のかたちを、アイデアソースとして自分の中に取り込んでいく。それは木々や花といった具体的な形あるものだけでなく、体がうける風の心地よさとか、心のありようも含めて。
自然にあるものって有機的で、人にとって気持ちがいいものだと思う。
自然に置かれたときの自分の感覚も含めて、デザインに落とし込めたらと考えている。そのためにはできるだけ自然にふれるようにしている。
何気ない瞬間の「気持ちいいな」「きれいだな」という感情をしっかりつかまえて、表現していきたいと思っている。

そして自然物をデザインとしてアウトプットするときに意識しているのは、抽象化すること。
たとえば葉っぱ一枚とっても、葉脈の曲線のようなディティールだけではなく、その美しさの全体像をとらえることが必要だと思っている。心地よさや風みたいなことを感じつつ、ミクロとマクロの視点を両方使って自然からインスピレーションを受けながらも、その中に「人の思い」とかいろんなことが入り込んでいく。そじに自分の気持ちをのせていくからこそ、デザインになる。

③自然に習う

「自然に習う」感覚はすごく大事にしている。でもそれは自然物をモチーフとして使うということだけではない。
自分の心の中に湧き出てきたやりたいこと。たとえば「生活に役立つ、日常のものをつくりたい」という思いを形にしてみるということも、私にとっては自然の中から学んだ姿勢だと思う。

自然に習うということのは、ただやさしく流されているだけではない。やりたいことを周りに言い続けたり、しつこく思い続ける強さを持つことでもある。

私が手掛けるサルビアの活動では、日本の伝統工芸や職人技術があればこそのものづくりを続けている。
それは、長年の技術があるとか、技術がしっかりしているというだけでなく、必要としている人にこの商品を届けたいという職人さん自身の「思い」がはっきりとしているから。そういうストーリーの部分も一緒に届けていきたいと思っている。

諦めないでいると、そういう風に繋がりたい人とちゃんとご縁ができていく。そういうつながりを大事にすることは、ものづくりだけでなく、人の営みや豊かさというものを考える上でとても普遍的で、大切なことなのだと思う。


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