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小説:コトリとアスカの異聞奇譚(完結)

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小説版<奈良の薬草と薬膳>の第二弾。植物の言葉の分かる琴音とその娘、明日香。彼女たちが出会う、日々の不思議なお話たち。
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記事一覧

小説:コトリとアスカの異聞奇譚 7-6<完結>

 曇り空の下、三人は真っすぐに琴音の自宅へと戻ってきた。植物に満ちた庭へと足を踏み入れる…

小説:コトリとアスカの異聞奇譚 7-5

 水曜日の昼過ぎ。明日香は首から下げた容器のサボテンで周囲の木々と対話をしながら先頭を歩…

小説:コトリとアスカの異聞奇譚 7-4

 火曜日。この日はときじく薬草珈琲店の営業日ではあるが、店は店長の葵、研修中のヒロユキと…

小説:コトリとアスカの異聞奇譚 7-3

「いや、知らんわ」  月曜日の晩。琴音の中学校以来の親友・凛は久しぶりにときじく薬草珈琲…

小説:コトリとアスカの異聞奇譚 7-2

 琴音は店で余ったニオイコブシの葉を使ってお茶を作り、水筒に入れた。あと、昆布の佃煮を具…

小説:コトリとアスカの異聞奇譚 7-1

第七章「ツバキの翠精」 江戸時代の妖怪画家・鳥山石燕(とりやませきえん)は、「今昔画図続…

小説:コトリとアスカの異聞奇譚 6-2

 客のいない日曜日の薬草珈琲店。奥のストックヤードに3人の大人と1人の子供が入り込んでいるため、やや狭苦しい雰囲気だ。  部屋にいるのは、琴音、琴音と打ち合わせに東京から来た(+実家に顔を見せに来た)佳奈、なんとなく面白そうという理由で参加している葵、そして明日香の4人だ。 「コトリさん、これって普通に、実験で言うところの対象試験っすよね」 「佳奈ちゃん、さすが。元研究所メンバー」  塩・麹・大豆が混ぜ合わされた直後の生きた味噌が入ったパウチが二つ。左はパウチだけがぽつ

小説:コトリとアスカの異聞奇譚 6-1

第六章「サボらない植物」 かつて、ときじく薬草珈琲店でバイトとして働いていた佳奈が、新し…

小説:コトリとアスカの異聞奇譚 5-12

 しばらくたった、ある日。夜の閉店間際。ときじく薬草珈琲店の入り口の扉がガチャリと開いて…

小説:コトリとアスカの異聞奇譚 5-11

 火曜日の晩。新大宮駅近くのライブハウス。  立ち見なら50人は入れる箱だったが、今日は椅…

小説:コトリとアスカの異聞奇譚 5-10

 ヒロユキとの再会は、意外にも早く実現した。  日曜日の朝、葵が自宅で布団にくるまってい…

小説:コトリとアスカの異聞奇譚 5-9

 その週、葵は何をするにも力が入らなかった。  次に会う約束がある、ということが自分にど…

小説:コトリとアスカの異聞奇譚 5-8

 日曜日の午後。  実家暮らしだというヒロユキの家は、ときじく薬草珈琲店から南へ20分ほど…

小説:コトリとアスカの異聞奇譚 5-7

 日曜日の午前。休日のため店の半分は照明が消えているときじく薬草珈琲店ではあったが、奥のテーブル席では賑やかに音が鳴り響いていた。明日香が大人たちを前にピアニカでチューリップを披露しているのだ。  でも、『どのはなみても』の部分に差し掛かると、やっぱり手が止まってしまう。 「ここ、手が変になるの」  その日は薬草のことを琴音と葵から学ぶために店に来たヒロユキだったが、一通り話を聞いた後で、少しだけ明日香のピアニカを見ることになった訳だ。  明日香はヒロユキをじっと見つ