HOLGA 120 SFの試用と、自分の身体の試運転。
しばらく前からの悩み事であった体調不良が漸くマシになり、ちょっとした気分転換に、カメラを持って外に出ることに。
体調不良というのは、自分の力でなかなか気分転換ができない状態のことを指す。あるいは、夜と昼の光の違いがわからなくなったと言うべきか。
光のことがわからないのであれば、久しぶりに、光のスペシャリストであるカメラに教えを請い倣おう。
買ったまま放置していた期限切れ直前の120フィルムを引っ張り出し、これまたオークションで落札して以来一度も使わずに放置しておいたトイカメラ、HOLGA 120 SF に詰める。
トイカメラのゆるい写りと、中判フィルムの広い面積による精細度がどの程度でバランスされるのか確認できるように、ピクセル等倍(4000×4000)画像を用意しました。興味があれば写真をクリックしてください。
HOLGA 120 SF(等倍)
ぼんやり集中力の欠けた頭で、案の定、赤窓でコマ管理をする必要があるなんてことをすっかり忘れてしまってて、巻き上げすぎた一枚目のカウンターは既に4の表示。
とりあえずフラッシュを焚き、カラーチャートを写し込み、スキャンに対応しやすいフィルムを作る。
HOLGA 120 SF(等倍)
外へ出る。日を浴びる。身体はしっかり動く。
骨格は堅牢で筋肉はしなやか。動かないのは頭と心と重い瞼。
HOLGA 120 SF(等倍)
目元には疲労。蓄積され、沈殿され、固着した眼精疲労。
HOLGA 120 SF(等倍)
電車に乗る。
身体を使わなくとも、座席に座ったまま、液晶モニタでない本物の視覚の流れが始まる。視覚だけの冒険旅行。
いわゆるJR線大回り乗車、という電車遊びがある。不正なく格安で電車に乗って、駅から外に出ず、車窓を延々眺めるだけの遊び。
大阪から京都を経由して、琵琶湖を一周し、忍者の里を掠め、奈良を抜け、気が向いたら和歌山を通り、振り出しに戻る車窓観光遊び。
HOLGA 120 SF(等倍)
ただただゆるい景色の流れと揺れに、脳のマッサージをゆだねる。
輪郭を伴わない思考と視覚が、そのバランスをとるために直線直角構成の景色を求める。
HOLGA 120 SF(等倍)
フィルム室には事前にスポンジを貼ることで巻き太り対策をしたものの、そんな作業をあざ笑うかのような、噂にたがわぬ盛大な光線もれ。
HOLGA 120 SF(等倍)
枠外の印字はシャープにスキャンされ再現されてるのと対照的に、いかにもトイカメラ的なゆるい写りが、ぼくの頭のコンディションとマッチして、なんとなく親近感を覚える。
HOLGA 120 SF(等倍)
JR線大回り乗車、なんて大げさな遊びの名前だけれど、大阪から乗車した車窓カメラ男のフィルムは、9回のシャッターで、早くも京都の辺りで一本全コマ撮りきってしまう。
HOLGA 120 SF(等倍)
カバンにカメラをしまい込み、駅蕎麦を食べ、また車両の揺れに身をまかせて車窓に視線をたゆたわせるのがお決まりの行程。
このカメラ、フィルムの固定に難があるため、弱った頭には手ごわく刺激の強い使い勝手ではあるけれど、ゆるくふわりと優しい写りが気持ちいい。
刺激を楽しめるようになったら、また引っ張り出そう。