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東大寺修二会『韃靼』というスゴイ行法

どうしても焚き火がしたくなったので、お友だちの和美ちゃんを誘ってやってきました。

火を炊くということへの原始的な欲求がある気がするのだけど、ただただ焚き火が燃える様子の動画が何万回再生というので、みなさん同じなんじゃないですかね。

奈良では火を使う御神事や法会が多くあります。

その筆頭的なものは、やはり東大寺さんの『修二会』における「韃靼(だったん)」ではないかと思います。

韃靼は修二会で行われる法要の中で最後に登場します。
修二会の終わりを飾る行法と言ってもいいかも。
二月堂の中で火を使う行法です。

修二会の愛称のひとつに「お水取り」というのがあり、修二会に水は欠かせません。

同時にこの韃靼に代表される「火の法要」であることも間違いないのです。

韃靼という異国情緒風な名前が何故ついているのか。

その行を行う僧侶は、独特の衣装を身につけることも含めて、謎多き行法が韃靼です。

韃靼の際には、巨大な「韃靼松明」というものが登場します。

長さ3メートはあり、重さ40キロという巨大な松明に火をつけ、吹き鳴らされる法螺貝の音に合わせてリズミカルに跳躍し、燃える松明を引きずって堂内を回る。

聴聞に伺うと、火をつけたとたんにパチパチと爆ぜる音が聞こえて、ひええええとなります。

美しくて、荘厳で、神秘的な雰囲気なんですけど、ただただすごいものを見ている恐ろしさに圧倒されます。

同時に錫杖の音、鈴を鳴らす音が響き渡り、松明の炎と、その巨大なものを引きずる迫力も手伝って、修二会の行法の中でもひときわ熱をおびた、なんとも形容しがたい迫力ある空気になります。

修二会の行法のなかでも、ひときわ不思議で、ひときわエキサイティングで、長く続いてきたこの行法の奥行きの深さを感じさせてくれます。

狭いお堂の中で火を使う怖さは、昔の人の方が深く承知していたでしょうが、それでもなお、あえてこの行法を守ってきたことの意義を考えると、火と人間の深い付き合いというか、炎がもたらすものの大きさとか、そこに何かを求めた人間の歴史を感じるのです。


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