私の気合いとワクワク感が生後5ヶ月の次女に伝わっていたかもしれない話
この日の私は気合が入っていた。どのくらい気合が入っていたかと言うと、駅ビルの駐車場に車を停めたくらいの気合いだ。
いつもだったら駅からちょっと離れた軽自動車は少し安いよ、みたいなコインパーキングを探してうろうろするのだけれど、この日は違う。駅ビルで3000円以上買い物したら3時間無料になる駐車場を選んだ。つまり3000円以上の買い物をする決意の表れである。
「3000円の買い物なんてすぐよ、すぐ。」と思われるかもしれないけれど、このところ私の財布のひもは固い。育休中なのと移住のこともあり夫婦でおこづかいが少なめだからである。でも、ここの駅ビル無印が入ってるんだよなぁ~、無印行くとついつい好みのお菓子や90円のお茶、長女のTシャツなどを買ってきてしまう。無印ってチョイ買いさせる天才か。
私がこの日に3000円以上の買い物をしようと思ったのは化粧品である。ファンデーションを買いに来たのだ。接客業のくせにナチュラルメイクにつけこんでファンデーションを使わなくなったここ数年。というか最後に購入したのはいつでどのブランドだったのかさえ思い出せない。でも必要になったのだ。なぜなら妹の結婚式に出席するからである。
せっかくの妹の晴れ舞台にいくら娘二人連れて家族での出席で、「育児大変な時期ですママ」ぶったところですっぴんに近い姿はゲストの方々に見せるわけにはいかない。変なプライドが私を駅ビルまで車を走らせる原動力となった。
よーし、と次女と二人で駅ビルに乗り込む。お目当ては駅ビル内の『イセタン ミラー』。ここは伊勢丹がセレクトしたデパコスが所狭しと並びスタッフさんがブランドの枠を超えて色々教えてくれる素敵な場所である。
もういつか思い出せない昔にRMKのリキッドファンデを購入したことが私のデパコスデビューで、それ以来のデパコスである。その辺のドラッグストアや近所のモールで済ませることも出来たのだが、何せ何年振りかのファンデーションなので販売のプロに塗り方のコツから直に教わりたかったのだ。私の気合いは並大抵ではない、と再確認しショップに足を踏み入れた。
キラキラきれいなコスメが、憧れブランドのコスメが並んでいる…!と感激したのもつかの間、次女がベビーカーでぐずり始めた。
最近生後5か月になった彼女はだっこをせがむようになっている。今まではぐずったらミルク、おむつを替えるの2択でよかったのに成長したのだな。。。とうれしく思いつつ「え、今?!」と言うのが本音だった。
ショップに入る前にミルクを飲ませて、念のためにおむつまで替えたのにだっこタイムが来てしまった。しょうがない、と私は右手で次女をだっこし、左手でベビーカーを押しながら入店した。
お察しの通り、両手が塞がっているのでテスターなど手が出せない。目で見るだけになりながら店内を一周した。さすがデパコス、さすが伊勢丹。どれも5000円以上のファンデーションばかり。「ふっ、駐車場無料はいただきだぜ。」と勝ち誇りながらも自分に合うファンデーションはさっぱりわからない。
マスクの下はほぼすっぴんなのがばれているのか、スタッフさんも私に近づこうとしない。買う気が無いと思われていそうだ。しょうがない、赤ちゃん連れで両手が塞がっているほぼすっぴんの女が内心買う気満々なのをわかってくれと叫んでもわかってくれそうもない。
自分が接客業のくせに、スタッフさんに話しかけるのが苦手な私はとりあえず名前は知っている興味のあるブランドの前にいた。誰か話しかけてくれ…と背中で念じながら。これで来なかったらどうしようと思っていたところ救世主が現れた。
「赤ちゃん、今何か月なんですか?」ベテラン風のスタッフさんに話しかけられ私も思わず「私も仕事中だったらそうやってお客様に話しかける!」と共感しながら「今5か月なんです。」と答えた。ファンデーション購入までの道筋が見えた瞬間だった。
私はファンデを使うことが本当に久しぶりなことと結婚式に出席するために必要になったことを説明した。スタッフさんはシュバババっとリキッドファンデーションをいくつか持ってきてくれおススメしてくれた。
そのスタッフさんの説明によると、
・私がマットかツヤの仕上がりどちらがいいかというのにツヤと答えたから。
・久しぶりのファンデでも厚塗りになりにくいのは少しずつ重ねづけ出来るリキッドが使いやすいから。
と言うことで、話しかけた時に私がいたコーナーのブランドが『NARS』で『NARS』が気になると伝えたところこのブランドの最推しがリキッドだったためその流れでリキッドから選ぶことになった。
スタッフさんが持ってきてくれたリキッドファンデの中に『Dior』があった。「これを塗ったらナタリー・ポートマンのようになれるのかしら…。」と非常に罰当たりなことを考えてしまったが腕に乗せた質感が『NARS』の方が好みだったためこちらのファンデに決めた。
私が塗り方や組み合わせのパウダーなど相談している間も次女は私の片手の中で壮大に動いていた。マスクをはぎ取ろうとしたり、よだれはだらだらだった。それでもスタッフさんは「かわいい!」と終始ほめていただき次女はご満悦の様子だった。泣いたりぐずったりしなかったからそれは次女にとても助けられたと言える。
人生の中で一番高価なファンデーションの買い物はこうして終わった。スタッフさんに恵まれたし、次女が一緒でもコスメが購入できたことは嬉しかった。ただしショップの外に出たとたん「ミルクくれ!」とぐびぐび飲みだし、ものの5分でベビーカーの中で寝てしまった。もっと早く寝てくれれば…とは思ったけれど、もしかしたら私のコスメを選ぶぞ!という気合とわくわく感が次女に伝わって、起きてしかもだっこで同じ目線で楽しみたかったのかなと思うとまぁこの寝顔も天使である。
その日の夜はなぜだか寝つきが悪かった。「明日、このファンデをつける練習しなくちゃ!」と楽しみにしていたから興奮していたのかもしれない。
最後まで読んで頂きありがとうございます。夫さんが思う存分農業が楽しめるように私も好きなことでサポートしていきたいと思っています。頂いたサポートは今後の活動に充てていきます!