堀越英美『スゴ母列伝』を読んで
「あの人のお母さんってこんな人だったの?! やばすぎる!!」「こんな子育てってあり得るの?! すごすぎる!!」衝撃を受け続ける実話が満載の本書。
以前、堀越英美さんの『女の子は本当にピンクが好きなのか』(河出文庫)を読んだ際、実例を多数取り上げながら従来のジェンダーバイアスに疑問を投げかける内容が大変勉強になりました。
その後、書店で「あ! 堀越英美さんの本だ!」と作者買いしたのがこちらの『スゴ母列伝』です。
サブタイトルの『いい母は天国に行ける ワルい母はどこへでも行ける』が魅力的ですよね。
「ワルい母になりたいとまでは思わないけれどどこへでも行ける人間ではありたい」と考えている私は、すぐに手に取りました。
概要
正しい母親になりきろうとするのではなく、自分を貫いて独特な育児をするスゴい母、それを本書では「スゴ母」と呼びたい。自我を捨てて子どもに尽くす聖母も、子どもの自我を自分の自我と同一視する毒母も、母子一体型という意味ではいずれも日本的な母親像である。
ひるがえってスゴ母は強烈な自我を持つあまり、子どもの自我と真正面からぶつかり合う。スゴ母たちは、母親を監視する世間の目に追い立てられ、「少しでも育児を間違えたら取り返しのつかないことになる」という思い込みにハマりがちな現代の母親に希望を与えてくれる、実にありがたい存在なのである。(本文より)
聖母にも賢母にもなれそうにないから、どこへでも行ける自由な母でありたい
私は自分の母への憧れを強く持っています。
子ども二人(私と三つ下の弟)を若くして立派に育て上げ、家事も完璧、身なりも綺麗、勉強の面倒も見てくれ、パートにまで出ていた彼女のように、素晴らしい賢母でありたいと理想を抱いていました。
ところがどっこい、いざ自分が妊娠してみると産むのが怖いと泣いたり、自分なんかが人間を育てられるわけがないと情緒不安定になったり。
産後もあたふたしてばかり。
子どもは可愛いけれど育児がしんどくて涙が止まらない。
私は到底母のような母親にはなり得ないと悟ったのでした。
現在イヤイヤ期(と俗に呼ばれている時期)真っ只中の息子を前に、イライラしてしまうことや一緒に泣いてしまうことも多々。
これでは聖母とは程遠い。
というか、元々の性格が大雑把ですし、言動が粗暴なところもありますし幼い子どもの扱いも苦手で、賢母になる素質も持ち合わせていないのです。
それならばもういっそのこと、ワルい母の道を行ってやろうじゃありませんか。
『スゴ母列伝』に登場するスゴ母たちのトンデモ育児に比べたら、私風情が自由に振る舞うことくらい我が息子にとって屁でもないだろう。そう思わせてくれるほどの激やばエピソードが満載です。
育児がちょっとしんどいなと感じている方や、自分の子育てってこれでいいのかな? と不安な気持ちを抱えている方にこそ、ぜひ読んでいただきたいです。
きっとあなたの心を軽くしてくれます。
私は私にしかなれない
母親としての自分をどう自分に内在化させるか、ということを、子どもをお腹に妊娠してからずっと考えていました。
私は真面目すぎる性格なので、なんでも思い悩んでしまいます。
今思えば、自分は自分でしかないので急に母親になれと言われてもそれは無理な話ですし、そもそも私が言う”母親”って何を指してるのよ? という感じですし、「ならきち」から「母親」という架空の理想像に生まれ変われるわけもありませんでした。
追加カートリッジみたいに自分に「母親」データをぶっ刺してインストールできたら簡単なのですが、そうもいきません。
また私という人間のキャパシティには上限がありますから、これまでやってきた「マンガ」「アニメ」「読書」「YouTube」「カフェ巡り」「お散歩」「ショッピング」「音楽フェス」「だらだらする」「美容」「友人と遊ぶ」などなどの要素をちょっとずつ削って、「母親」という要素を入れ込むしかありません。
「仕事」や「家事」は現実的に削るのが難しい要素なので、必然的に趣味・娯楽の範囲を「母親」に充てることになります。
そうして母親たちは自分自身を構成していた要素をちょっとずつ失っていって、しんどくなるのだと思います。(これはきっと父親にも言えることなのだと思いますが)
でもね、スゴ母たちは違うんですよ……。
削りたくないものは削らない!!
子どもが生まれたってやりたいことはやる!!
方法はスゴ母によって様々で、実家に子ども丸投げパターン、睡眠時間削るパターン、養子に出しちゃってたまに会いに行けばいいやパターン、一緒に海外連れまわすパターン、泣いてても柱に縛りつけといて仕事に没頭するパターンなどなど。
マネできるような方法はほとんどありませんが(笑)、それでも子どもたちはそれぞれたくましく育っていて、やりたいことをやるガムシャラな母の姿から何かを感じ取って大人になっていきます。
じゃあ私もやりたいことやろ!
「母さんだって母親である前にいち人間なんだ」、そうやって我が子に認識してもらえるように自由に振る舞っちゃお!
スゴ母とまではいかなくとも、どこへでも行けるちょいワル母を目指そうと決意した私なのでした。
これからもちょっと悩んだときには何度も読み返そうと思います。
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