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中山咲月『無性愛』を読んで
中山咲月さんのことを知ったのは『仮面ライダーゼロワン』に亡役で出演されていたのを拝見したときです。美しくて格好いい人だなぁという印象を抱きました。
そして最近、Twitterで中山さんがエッセイを発売したというネットニュースを目にしました。
フォトエッセイ「無性愛」を発売した中山咲月さんからモデルプレス読者へメッセージ💌
— モデルプレス (@modelpress) September 26, 2021
インタビューではトランスジェンダー&無性愛者の公表に至るまでなど、今の胸中を語ってもらいました✒@nakayama_stsuk #無性愛中山咲月フォトエッセイ
🔻インタビューはこちらhttps://t.co/BpdDbj7vtU pic.twitter.com/eg9zJBpgSa
目についたネットニュースを片っ端から読み、Instagramをフォローして、インスタライブのアーカイブも聴きました。
中山さんの人柄に惹かれて、すぐにAmazonでエッセイを購入しました。(ちなみに私はAmazon限定版を買いました)
フォトエッセイ『無性愛』について
Amazonの購入ページから説明文を引用させていただきました。
中性的じゃ足りない。もう男でいさせてください。
『仮面ライダー ゼロワン』で亡役を演じた俳優・中山咲月が、トランスジェンダーであり、「無性愛者」というセクシュアリティについて初めて告白する、超大型フォトエッセイ。
▲この「中性的じゃ足りない。もう男でいさせてください」というメッセージがストレートに刺さりますよね。フレーズを見て衝撃を受けましたし、これはしっかり読んで全力で受け止めたいなという気持ちでエッセイを手に取りました。
《本文より抜粋》
中性的を突き詰めればベースは「女性」。
周りが求めるジェンダーレス像は自分を消した上でしか成り立たないものにいつしかなっていた。
「女の子なのに、男の子みたいにカッコいい」という付加価値。
「もとは女性」というチャームポイントの違和感。
気づいた時には、もう息ができなかった。
▲日々の中で感じる違和感に、苦しみながらも正面から向き合った中山さんが出した答え。これからの彼の生き方。エッセイ内の文章だけでなく写真からもビシビシ伝わってきます。
《中山咲月からのメッセージ》
この本の出版が決まったとき、こんなに自由に表現させてもらえるなら、自分のことをすべて包み隠さず話してしまおう、と決めました。
この本を通して、中山咲月のこと、自分が男性として認識して欲しいと思っていること、そして無性愛のことを少しでも知ってもらえたら嬉しいです。
さて、今回は読書感想文ということで、エッセイ内の写真がどれも格好良いことは言うまでもないのですがそのへんには言及せず(オタク丸出しになってしまいますし)、中山さんが書かれた文章を読んで考えたことや感じたことを綴っていきたいと思います。
”自分らしく”生きていけばいいんだ
このエッセイの中で中山さんは、自身がトランスジェンダーかつ無性愛者であることを公表しています。
その自覚に至るまでのお話や、これまで感じていた違和感などが綴られています。
”無性愛”という性質自体の認知度の低さ故に「いつかいい人が現れるよ」などと悪意なく(むしろ善意の"励まし"という形で)他者から傷つけられてしまう、というお話にはハッとしました。
自分も無自覚に人を傷つけたことがあるかもしれないな、と。
私の中で「人はみんな何かしらの恋愛感情を抱くもの」であり、それは大抵「異性に向けられるもの」であり、かつ「性的欲求を伴うもの」であると勝手に思い込んでいたからです。
他愛のない会話のきっかけ、という感覚で放った「最近いい人いないの?」という一言は、相手を深く傷つける可能性があることに気付かされました。
◆
エッセイ内の文章は、中山さんがこれまで感じてきたことをその都度スマホのメモに書き留めてきたものだそうです。
だからか、いい意味で生々しさがあり、訴えかける力があり、まさに生きた文章だと感じます。
中山さんの言葉は、思い煩っていた過去のご自身に向けたもののようにも感じられるし、何かしらの悩みを抱える読み手に語りかけているもののようにも感じられます。
◆
私自身は、女性であり、妻であり、母であり、娘であり……、といろんな属性を持っていて、これらは私の人生における役割でもあります。
ときには役割自体やその世間的イメージを重荷に感じ、押し潰されそうになることもあります。
だけど中山さんの文章を読んで、もう自分のことを「アラサー女性」とか「1児のママ」とかカテゴリ分けせずに、”ただのならきち”として、ただ”自分”として捉えて生きていけばいいんだと気が楽になりました。
いろいろと背負い込む必要はないなと思ったし、自分自身を変にラベリングする必要もないと感じたのです。
それこそ「女性らしく言葉遣いに気をつけなくちゃ」とか「母親らしくしっかりしなくちゃ」とか、そういうものに囚われることなくありのままの自分らしさで生きていきたいです。
自分らしく生きる、というのは言葉にすると単純なようだけど、実際には困難にぶち当たる局面も多いのではと予想しています。
いま世の中で常識とされていることや、暗黙の了解とされていることなどから外れた振る舞いをすると、周りの目が痛いと感じることもあるんだろうなって。
例えばですけど、「子どもをほったらかして自分のやりたいことばかりやって、母親としてどうなの?」って周囲から思われるんじゃないか……とか。
(そんなこと言ってくる人は私の周りにはいないので、ありがたいことにやりたいことをやりたいように、自由にやれています……感謝)
◆
中山さんの文章は、性別や状況、抱える悩みなどが違ったとしてもみんなの心に寄り添ってくれるものだと感じました。
私は、とても勇気をもらいました。気が楽になりました。
みんなもう少しわがままに自分のやりたいように生きてみてもいいのかもしれません。
せっかくの人生なんだから。
人によって幸せの形はちがう
「恋愛して結婚して子どもができて、というのが幸せという人もいれば、そうじゃない人もいるというだけのこと」
そんなメッセージがエッセイから伝わってきます。
中山さんの姿勢はいつも一貫していて、「恋愛することが幸せだから恋愛しなさい」と強要されたくはないし、逆に自身も「恋愛感情のない世界」を他者に強要するつもりはない、というものです。
「性別のことに限らず、一人でも幸せだと思えるように表現の仕事を続けていく」と締めくくる中山さんを、応援せずにいられますか?
全力で推すしかありませんよね。(オタクが顔を出してしまった)
◆
「ただその人がその人らしくある」という世界が実現出来たら、どんなにいいだろう。
性別にも常識にも縛られることなくのびのび生きられたら……。
どれだけ多くの人が救われるんだろう。
楽に生きられるんだろう。
◆
結婚していて子どももいて、現状を”幸せ”と感じている私ですが、思い返してみると不思議なことがあります。
元々子どもは苦手で、自分より小さい子の面倒を見るのも苦手で(というか実の弟の面倒すら見ていなかった)、そんな私でもなぜだか幼いころから「自分も将来は結婚して子どもを産むんだろうな」と思っていたことです。
中学生の時、みんなが好きな人の話題で持ちきりの中「子ども同士のクセに恋愛なんて……何を言っているんだコイツらは」と斜に構えていたにもかかわらず、「それでもいつかは自分も恋愛して結婚して子どもを産むんだろうな」と思っていたのです。
みんながそうしているから自分もそうする、という心理だったのでしょうか。
自分の親だってそのまた親だってみんなそうしてきたのだから、私もそうするべきなんだろうなぁという漠然とした洗脳のようなものがあったのでしょうか。
若くして結婚して子どもを産むことが女性にとっての幸せだという思い込みが、きっと私の中にもありました。
実際に、たまたまその”幸せとされているもの”が叶ったいまとなっては葛藤のしようもありませんが、もう少し早い段階で一般的な幸せへの違和感を抱いていたら、私の人生も大きく違ったものになっていたかもしれないと思います。
◆
「結婚して子どもを育ててこそ一人前の大人……」そんな古い認識がある限り、同性愛者、両性愛者、無性愛者などのセクシャルマイノリティの方々の苦しみは消えないと強く感じました。
もちろんセクシャルマイノリティの方々に限ったことではありません。
「結婚はまだか」「いい人はいないのか」「子どもはまだか」などと、結婚や出産を人生で当然踏むべきステップとして急かされ、焦りを感じているすべての人たちにとっても、
古い価値観を少しずつ壊していって、色んな幸せの形を認めていけたら良い方向に進むのだろうと思います。
それぞれが自分の思う幸せを他者に強制することなく、世間の目を気にすることなく、自分らしい人生を歩める日が来ますように。
とりあえず私は素直に「ありがとう」と「ごめんなさい」が言えて、常に傾聴姿勢でいられる大人になりたいと思いました。
◆
「私の人生ハードだな……」と感じたとき
「なんかつらいな」と涙が出たとき
「しんどいな」と苦しくなったとき
このエッセイを何度も読み返して励まされたいと思います。
YouTubeで動く中山咲月を見よう!
つい最近中山さんファンになった新参者の私がおすすめするYouTubeの動画を紹介します。
▼こちらのトークショーではフォトエッセイ撮影の裏話が聞けたり、撮影の様子を動画でも見られるのでファンにはたまりません! 仮面ライダーファンであれば『仮面ライダーゼロワン』にて滅(ほろび)を演じた砂川脩弥さんとの共演も嬉しいポイントです。
▼トランスジェンダーを自覚したきっかけ、トランスジェンダーかつ無性愛者であることを公表後の心境などを語っています。ホルモン治療についても「リスクがあることは承知の上で、自分自身が生きやすくするために医学に頼りながら進化していっている途中」と説明していました。
▼こちらはカミングアウト前の中山さんのインタビュー映像なのですが、ピチレモンというティーン誌でモデルをしていた頃の話題になったとき「過去を黒歴史にしたくない」「この時代があったからいまの自分がある」と言い切っていてとても格好良いです。映画『ヌヌ子の聖★戦~HARAJUKU STORY~』のシーンもいくつか登場。美しい歌声にも引き込まれます。
▼こちらもカミングアウト前のインタビュー。「どういう性別なの? と聞かれたときに”中山咲月”と答えたい」とおっしゃっています。格好良い……。恋愛感情がないことで、「みんなが知っているものを自分だけが分からない」と悩んでいたとも打ち明けています。
さいごに
このnoteの冒頭で「写真については今回は触れない」としていたのですが、中山さんがインスタライブなどで「ぜひお気に入りの写真がどれか教えて欲しい」とおっしゃっていたので、私が個人的に好きな写真を紹介したいと思います。
▼人類は学生服をこんなにイケメンに着こなせるもんなのか……? と思考が停止しかけるこちらのお写真。咲月君×海……。濡れた髪……。水も滴るイイ男……。神様!! ありがとうございますッ!! あと手が綺麗!!! たまらんですな!!!
▼ページをめくって和装+眼鏡+和傘の咲月君が出てきた瞬間、心臓飛び出るかと思いました……。エッセイ実物だとこんなもんじゃないです。「え……っ」って声が出てしまうくらい格好良いです……。このカットの撮影裏話は先述の砂川脩弥さんとのオンライントークショーで語られていますので併せてぜひ!
中山さんのSNSアカウントなどは以下の通りです。
📱Twitter:https://twitter.com/nakayama_stsuk
📷Instagram:https://www.instagram.com/nakayama_satsuki
✍LINE BLOG:https://lineblog.me/nakayamasatsuki/