見出し画像

山崎ナオコーラ『お父さん大好き』を読んで

私は26年間、女性として生きてきて、これからもたぶん死ぬまで女性として生きてゆくと思います。

だから"男性として生きる人生"というのがどんなものなのか、ちっとも想像がつきません。

特に「おじさん」という存在は若い女性である自分と対極にあるからより一層ミステリアスで、理解不能な面も多いです。

『お父さん大好き』に収録された物語には、たくさんのおじさんが登場します。どのおじさんも、やっぱりよく分からない。

だけど、気持ち悪いおじさん、胸糞悪いおじさん、応援したくなるおじさん、色んなおじさんとの出会いがあり、学びになりました。

この本を読み、おじさんについて、そして女である自分について、いろいろと考えるきっかけになりました。

あらすじ

恋人ではないけれどセックスはする会社の先輩と、セックスはしないけれどつきあっている30歳年上の上司との間で揺れる20代女性を描いた「手」(芥川賞候補作)。NHKラジオ文芸館で異例の話題となった、血のつながらない娘と暮らす44歳のサラリーマンが主人公の、「お父さん大好き」など4作を収録した新鋭の中短篇集。解説・川村湊

おじさんという存在

おじさんは不可解な存在であります。

妙に自信満々で、自分のことを棚に上げ、若い女性であるという理由だけで私に説教っぽくアドバイスをしてくる人の、多いこと、多いこと。

人生の先輩からの進言としてありがた〜くお受け取りすることもあれば、少しもこちらの言い分をヒアリングせず一方的に自分の考えを押し付けてくる様に辟易することもあり。

一般的に描かれがちな哀愁漂うサラリーマンって感じのおじさんも、セカンドバッグ持って金の時計して日焼けしてて短パン履いてるようなイケオジ(?)みたいなおじさんも、どんなおじさんでも、自分とは一番遠い存在だなぁと感じます。

人間は歳を取れば取るほど性別を超越した存在になってゆく感じがするのですが、おじさんはまだまだ男性性が強い気がして、下心が見え隠れするような。

『お父さん大好き』に収録されている『笑うお姫さま』では、女性をなんとか手に入れ自分の"モノ"にして支配下に置きたがるおじさんが登場します。

『手』では、妻子があっても若い女の子と仲良くなり関係を続けたがるおじさんが登場します。そんなおじさんを面白がり冷静に観察する主人公が、興味深いです。

20代前半、なんの知識の引き出しも取り柄もない私が飲みの席に呼ばれていたのは、ただ"若い女性だったから"なのだろうかと、ふと考えたりしました。

そんな私も自分が女であることをきちんと認識して、なるべく綺麗に化粧をして、スカートを履いて、おじさんに喜ばれそうな適度な馬鹿っぽさを演じていたことを考えると、おじさんも若い女もどっちもどっちで、それぞれに醜く恐ろしい側面を持っているなぁとも思うのでした。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集