ユーザーを不幸にしないグロースハック
事業会社でWebサービスやアプリを作っている人は、MAUやDAUなど何かしらのKPIで目標を持って取り組んでいる人が多いと思います。
しかし、目標達成を意識するあまり、KPI偏重な施策ばかりになってしまって悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
今回は、デザイナーである私が、KPIの目標達成とユーザーの幸せを両立するために工夫している方法を紹介します。
◆ 両立がむずかしい理由
なぜ、KPIの数値を上げることとユーザーの幸せの両立がむずかしくなってしまうのでしょうか。
私は、KPIとユーザーの話を同時に行なっていないからだと考えています。
「KPIの数値を上げたい!」という人は、KPIツリーやファネル分析から課題発見することが多く、「ユーザーのために何かしたい!」という人は、ユーザーインタビューを行ったり、UXデザインのフレームワークを利用して課題発見を行うことが多いと思います。
<参考>
●【決定版】アプリ事業のKPIツリー!
● ファネルとは? アプリの課題解決に使おう
両者は専門性の違いから別々に検討が行われることが多く、結果的に前者はKPIに偏りすぎ、後者はユーザーに偏りすぎた施策が生まれ、いざ集まって案件の優先度を決めるとなると、
「それはユーザーのためにならない」
「いやいや、そっちの案こそ数値に効かない」
といった具合に衝突してしまいます。
◆ ユーザーの行動を軸にしたストーリーで考える
偏らないためには、定量データと定性データを同時に並べて検討する必要があります。
その際、「ユーザーの行動」を軸にしたストーリーで考えることが重要です。
なぜなら、KPIの数値はユーザーが行動することで上がり、ユーザーの行動の背景にはその人の感情や置かれた状況、行動のきっかけなどが存在するため、KPIとユーザーの両方に目を向けることができるからです。
行動を起こしてもらうための良いストーリーを考えることで、結果的にKPIの数値も上がり、ユーザーも良い体験ができます。
例えば、新商品のプッシュ通知の開封率を上げたいとなった時に、やたらと目立たせるだけのプッシュを送って、開封率は増えたけどその後の商品の購入には繋がらなかったりします。ですが、「通知をタップする」というユーザーの行動で考えると、利用者はどんな人が多いか、どんなタイミングで受け取ると嬉しいか、どんな文言だと気になるか、内容と前後の文脈はおかしくないかなどに目を向けやすくなります。
◆ UXデザインを数値分析にインストールする
実際にどのようにやるかというと、私は、数値分析の場にUXデザインのエッセンスを取り入れるようにしています。
KPIを見て、「ここがうまくいっていない、だからこうしよう」という改善のきっかけとなる場に最初から入り、その場にいる人にユーザーにも目を向けてもらうことで、後から手遅れになるのを防ぎます。
企画が降りてきて、「ここ、こんな風に改善するからUIを考えて」と言われた時にはもう遅いのです。
私がよくやっているのは、ファネル分析にカスタマージャーニーマップのようにユーザー属性や感情を書き入れていく手法です。
ECサイトのアプリで、秋冬の新商品のプッシュ通知を送った例です。
(プッシュ通知〜新商品の詳細画面まで)
ユーザー属性:どのようなユーザーが多いかを記載。データがなければ、ペルソナを作成して代用。
ファネル:画面単位などで分ける
必要な行動:KPIに直結する行動、次のファネルに繋がる行動
KPIの実績値:KPIの数値の実績値
KPIの試算値:施策を行う前のKPIの試算値
内容:画面の内容、文言など
ユーザーの感情:ユーザー属性や文脈に合わせて感情を想像する
課題:なぜ行動が起こっていないのか
この場合、新商品の一覧画面で「商品をタップする」という行動が起こっていないことがKPI上の課題となっていますが、文脈から感情を想像することで、本質的な課題を浮き彫りにすることができます。
このように、定量データと定性データを突き合わせることで、ユーザーに配慮しながら検討することができます。
◆ まとめ
KPIの数値目標とユーザーの幸せを両立できないのは、2つを別々に検討しているからです。
KPIの数値はユーザーの行動によって上がり、その行動には文脈があります。
ユーザーの行動が起きる良いストーリーを考えることが、両立に繋がります。
検討の際には、目を向けるべき情報を全て目の前に並べて無視できないような状況を作ることが重要です。
デザイナーの人は、数値分析の場に慣れていない人も多いかと思いますが、積極的に入っていって、デザイナーならではのバリューを発揮してみてください!
以上です。
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