二ューヨーク・リサーチ vol.4
ニューヨークのリテールリサーチの第四弾。
D2Cのリアル店舗を中心に見たままお伝え。
1.圧倒的人気の「Glossier.」
言わずと知れた、D2Cコスメの代表「Glossier.」
マンハッタンのSOHO地区にリアル店舗を構えて、EC購入では我慢できないミレニアル世代の女性ファンを集客しています。
Glossier Pinkと呼ばれる淡いピンク色で統一された店内は可愛く装飾され、インテリア一つ一つがインスタ映えするような配置で「フォトスポット」が満載。入口に入るとすぐに階段で2階へ。この階段がライトアップされていて、また「上に何があるのかな?」と思わせるワクワク感を作り出します。
あえて2階に上がらせる導線やインスタスポットなど、これまでの常識で売場と考えれば非効率なスペースも多いのですが、この店舗を起点に情報拡散させることで、ファンがファンを作っていく好循環が生まれています。
Glossierのビジネスや店舗体験については、多くの方がリサーチ記事をあげているので多くは語りませんが、見たままを言えば、
「とにかく混んでる」
多くのD2Cリアル店舗を見てきましたが、ここまで店舗が混雑してるブランドはありません。そして、「リアル店舗で購買されてる」のが目に見えて感じられます。他のD2Cが、リアル店舗は「ECが主戦場なので、店舗は売らなくても良い」とファンとの交流やブランドストーリーの広告効果に”ある意味逃げてる”のに対し、Glossierは店舗でも相当の売上が上がってると予想されます。
ブランド体験して、その上で、その場で買って帰りたくなるぐらい気持ちを高めることができてる。ただ、在庫を抱えてる分、店舗運営は他の在庫極少のD2C店舗より経営の舵取りは難しい。
また、顧客への配慮として、
「待ちスペースが多い」
売場の周囲をぐるっとソファで囲まれていて、「彼女に連れてこられた男性パートナー」達が所狭しと座っています。化粧品選びは時間がかかるので、単純にこういう配慮は購買体験としては重要。男性への配慮というより寧ろ、女性が楽しく最高のテンションで商品選びできるようにするにはどうするかでCX設計したのだと思います。
昼間は行列ができているようですが、夕方に訪れた時は待ち時間なしで入店することができました。視察目的の方は、夕方にどうぞ。
2.お昼寝体験「Casper」
先日、D2C初のIPOを果たした「Casper」
マットレスD2Cとして、既存のマットレス業界をディスラプトしてきたCasperですが、マンハッタンに体験施設「Dreamery by Casper」を構えています。
Casperの体験とはすなわち「昼寝」です。
よく、寝具売場でマットレスや枕を購入する前に、店の体験用マットレスにちょっと横になってマットレスの良し悪しを判断させられることがありますが、果たしてそんな数秒でマットレスの良さが分かるのか。しかも、販売員に見られながら横になって、本当にリラックスできてるのか。
その答えとして、Casperは、マットレスを自由に試せて、かつ、昼寝までさせてしまう体験施設を出店しました。
体験施設は、入口に受付だけ構えて、奥に昼寝体験ゾーンを設置した構造です。
メニューは「NAP SESSION」$25のみ。これは45分間の昼寝体験になります。それ以外は、Coffee 無料、Bedhead 無料、Pure Joy 無料。というメニュー表記で、マクドナルドのスマイル0円みたいなスマイルジョーク。
ここは完全な「新規顧客獲得」の場所で、Casperのマットレス自体はレギュラーランクで$536〜と、そこそこ高単価なので、ここで体験をした後に、実際に購入するかどうかを決める、という顧客導線になりそうです。
3.無印良品のような「EVERLANE」
ニューヨークのSOHOにリアル店舗を構えるファッションD2CのEVERLANE。
店頭に商品が並ぶまでのサプライチェーン上の原価を開示することで、「なぜこの価格なのか?」「適正価格なのか?」を顧客が納得いく形で提案するファッションブランド。
業界のタブーを破ったとも言える価格開示ですが、その価格提案は、「他社ブランドが同じ品質で販売したら◯◯円だけど、Everlaneなら◯◯円」と割と露骨に比較提案をしています。
店内は商品がサイズ別に平積みされていて見やすいのですが、他のD2Cに比べると見せ方に工夫が無く、「ブランド体験の場所」というよりは「買物場所」という感じ。日本人の方が、Everlaneを知らずに入店すると、無印良品に入ったと思うのではないでしょうか。
ニューヨーク店で一番残念なのは、「サステナビリティに関するブランドメッセージ」がほとんど掲出されていないことです。サンフランシスコ店は比較的、工場の生産者の顔や素材がどこから仕入れられているかなど、ブランドの成り立ちなどが分かるようになっているのですが、ニューヨーク店は皆無。
すでにブランドも広く認知されているので、スケールするに従い、そういうブランドストーリーを見せる場を減らして、売場面積を増やしたりしているのかもしれません。資金調達して、スケールを求められる大型D2Cの課題かもしれません。
ここまで、ちょっと残念な感じでEverlaneを紹介してしまいましたが、リアル店舗には女性を中心に多くの集客があり、人気は健在。無印良品なので、価格も買い求めやすく、質も良いということで、支持されているのは間違いありません。
4.旅を売る?「AWAY」
AWAYと言えばスーツケースD2Cですが、旅というサービスにスーツケースというモノが付いてくる、という考えで、あくまで「旅を売る」をコンセプトにしていると言われています。
ただ、実際に私が何度も店舗を訪れた感じでは、「スーツケースショップ」です。
容量はあるし、デザインも良い、USB充電機能が付いて、カスタマイズも可能。さらには生涯保障など、ミレニアル世代に受け入れられる機能は十分に揃って魅力的な商品ですが、旅を売ってると言われると、ちょっと違和感があります。
その象徴として、「HERE」という旅行雑誌を自社出版して、旅を想起させるメディアコミュニケーションを取っていますが、この雑誌の内容が結構薄く、購入特典やファンへの定期配信しているなら分かりますが、有料で購入するほどの代物ではありません。
インスタは553千人のフォロワーがいて、綺麗な旅の写真がアップされているので、そういうSNSのコミュニケーションで旅を想起させていると思うのですが、もう少し店頭で「旅」を想起できる要素があれば良いのですが。
5.ファンのための路面店「CHANEL」
CHANEL化粧品が、ファンのためのコスメ体験ショップ「Atelier Beaute CHANEL」をSOHOにオープン。
米国でも、化粧品は百貨店の平場に展開していることが多く、あまり路面店で見かけることはありませんが、シャネルはブランドを際立たせるための「アトリエ」と題したブランドショップを展開しています。
ここがまた完全に入りにくく、入口は鍵がかかっています。特に事前予約は不要なのですが、入口横のブザーを鳴らしてロックを解除してもら必要があり、心理的ハードルが異常に高い。ただ、中を見てみたかったので、視察目的だと伝えた上で入れてもらいました。裏を返せば、「クローズな空間」をワザと作り出しているとも言え、特別な体験をしに行ってる、という感覚があります。
2階に上がると、そこには大量のシャネル化粧品の置かれたサンプルゾーンが。受付を済ませて、荷物をロッカー預けて、あとは自由に試供品を試す、というスタイルのようです。
このロッカーの番号それぞれが「no.◯」と、シャネル化粧品のブランドナンバーとストーリーが記載されていて、これがまたファン心をくすぐる。自分が良く利用する製品の番号を使いたくなること間違いなしです。
サンプルは持ち帰ることも可能で、まさに、シャネルファンのためのシャネルショップ。基本はセルフですが、当然、美容部員によるフルサポートも受けられます。
結構男性の顧客も多く、この辺り、日本との違いを感じます。もしかすると、男性も、平場ではなく、こういうクローズな環境の方が選びやすいというのがあるかもしれません。
6.「NIKE」「adidas」「PUMA」のカスタマイズサービス
5th.STの通り沿いに、近隣に店舗展開している「NIKE」「adidas」「PUMA」のフラッグシップストア。
フラッグシップならではの体験ができるスペシャルストアですが、どのブランドにも共通しているのが「カスタマイズサービス」の提供。
NIKEはフロアの半分ぐらいを使ってカスタマイズコーナーを展開していて、自分だけのオリジナルスニーカーをオーダーすることが可能。
vol.1で説明したNordstromにもコンバースのカスタマイズコーナーがありましたが、カスタマイズサービスが一般化しています。
これは、商品のコモディティ化によって、既成プロダクトへの満足感が相対的に下がり、世界に一つだけ、自分だけの一足。を手に入れたいという需要が増加してきている環境変化を捉えているためだと思います。
カスタマイズすれば、そのブランドのファンにもなりやすいので、これでいくら稼ぐ、というよりは、ブランドロイヤリティ向上のための施策。
カスタマイズ以外にも、フラッグシップはサービスが充実。
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とりあえず、Glossierを見に行ってみると、D2Cの「売らなくて良い店舗」も良いですが、集客があって「売れてる店舗」の方が魅力があると感じますね。