「大人はいつも間違える」@森のようちえんピッコロ 年中さんのエピソード
山梨県は北杜氏にある『森のようちえんピッコロ』にん、12月の保育視察に伺ったときのエピソード。記憶をたどって書いているので、言い回しやニュアンスの多少の誤差はご了承ください。
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この日は保育視察(つまりピッコロの保育から学びたい人が、ピッコロの保育を見学するために設定してくださっている日)のため、県内外から子どもたちに関わるお仕事をされている数名の方がいらしていた。僕もそのひとりで、年末にピッコロの保育を感じて、自分自身を大掃除しようという気持ちでいた。
保育が始まった。
さすがに12月。そこそこ寒い。
ある子が「氷があったー!」と、川沿いにいる何人かに声をかけに来た。
「えっ!?氷!?」と、ピッコロ代表の中島先生が動く。
見ると、古びた建物のそばにドラム缶があり、そこに水が溜まっていて、表面が凍っていた。冬の入口の今。子どもたちは季節を感じ、全身で味わっている。大人も心がほっこりする。
そんな中。
ある年中の男の子がこう言った。
「のびるのにおいがする…」
む。今は12月、冬である。
のびるは…たしか春の野草のはずだ。
何かの間違いじゃないか。
そう思ったが、ピッコロの中島先生は動いた。
「どのへんから?」
すると男の子は「このへん」と答える。
あるのか??まさか。
さすがにないだろう。
しかし、たしかに地面の草は少し緑色をしている??
しばらく探していると。
「あった!!」
えっ!?
本当に???
みると、本当にのびるである。
衝撃だ・・・
中島先生は少し解説をしてくださった。
「私も正直、はじめは疑った。「まさか…」って。
でも、あるんですね~!どうしてわたし、疑っちゃうんだろうね~」
まさに、僕も同感である。
50%くらいは疑った。
でも、ここはピッコロだから、あるかもな…(ピッコロの子どもたちは「えっ!?」ということはしょっちゅうある)くらいには思っていたが。
すると、「のびるのにおいがする…」といった子が
大人に向かってこう伝えてくれた。
「大人はいつも、まちがえる(かんちがいする、だったか)」
えっ・・・
衝撃だ。
なにが衝撃かというと、
この子の目は大人を馬鹿にした目ではない。やわらかい・・・感じ?
そして確実に、現場周辺に数人いた“視察者”を見ている。
想像でしかないが、ピッコロに学びに来た人に何かを伝えようとしているのかもしれない。
絶句。
言葉が出てこない。
あえて言うなら、
「すみません…」
だ(笑)
さらに、あとから教えてもらって気がついたことがある。
「のびるのにおいがする…」と言った子。
なんと見ると、鼻水がたらたら流れているではないか!
聞けば、この子はよく鼻が出てることがあるんだとか。
え。
この状態で、匂いを嗅ぎつけたのか。
大人によって、たしかに発見されたのびる周辺で
のびるのにおいを感じられる人もいた。
しかし、この鼻水状態で分かるのか??
「のびるのにおい」は、
嗅覚だけではない”何か”を使って感じたのだろうか!?
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大人はいつも、間違える。
大人はいつも、観違い。
たしかにそうだ。
「まさか…」
「そんなはずない…」
「そうに決まっている」
そうやって、物事や状況を決め付ける。
自分の味方で捉え、ときには誰かに押し付けようとしたりしてしまう。
そうではないよ、ということか。
しかしピッコロの子どもたちは、
いつも大人が準備できていると判断しなければ
大人に伝えてくれることはないように感じる。
つまり、
今だから、この時だから、
「大人はいつも間違えるよね」と言ってくれたのかもしれない。
つまり、どういうことだ?
・もう少し、子どもたちを信じてみたら?本当に信じてるの?
・真実は、想像とは違うかもしれないよ?
・目の前のことばかりに目を向けてたら、本当のことは見えないよ?
そんなことを教えてくれようとしたのだろうか。
そのときに、僕たちに必要だと感じたから。
このあと、
のびるを見つけたお子さんを中心に、
子どもたち何人かでのびるの捜索が始まった。
そして別の場所でも
子どもたちはのびるを感じ、発見していた。
なんともビックリだ。
大人の感性、鈍ってるのか??
森でずっと過ごしているから、子どもたちにはわかるのか。
それとも、心や感覚を研ぎ澄ましているから、見つけられるのか。
真実とは、どこにあるのだろう。
☆★☆
来る7月31日(土)10~12時、山梨県北杜市の、明野総合会館にて
森のようちえんピッコロ代表の中島久美子先生と、ドイツ在住シュタイナー教育者の稲垣真理子先生との対談イベントがある。その名も
『ひとりひとりが輝く あたらしい時代へ』だ。
このイベントは、驚くべきことにピッコロの保護者さんが企画されたのだそうだ。保育者でも代表でもない。保護者が!
相当のエネルギーで企画されているイベントなので、興味のある方はぜひ。