忘れられないのは想いという味
梅雨に入ったと思ったら大雨が降っている。
別に雨が嫌いってわけじゃない。ちょい傘はめんどくさいけど。
僕は晴れ男でもなければ、雨男でもない。強いて言えば、平均値男なんじゃないかと思う。映画のロケとかでも、4割晴れ、4割曇り、2割雨。調べたわけじゃないからわからないけど、普通の人の人生ってこんな感じの天気じゃないかな? そう思ったら、人生そのものも、もしかして同じような割合で良いこと、普通のこと、悪いことが起きてるんじゃないか? っていう深イイ話ができるかもって思ったのだけど、僕はそんなに賢くないので諦める。
ともあれ、渋谷駅で降りて、大雨に精一杯傘で抵抗しながら、打ち合わせ前に何食べようかと考えた。今日の打ち合わせも宮益坂上にある制作会社だ。宮益坂はヒカリエ内も含め、路面店も結構充実している。昔渋谷で働いていた時にはない店も多々あるので、色々入ってみたい気もする。
だが、今日は雨、しかも大雨だ。僕の人生の2割しかない中でも、さらに希少な日でもある。
そう思うと、好きなモノを食べた方がいいと思えた。なら、このあたりで、ラーメンだ。
ふと1軒頭に浮かぶ店がある。ヒカリエの横には大勝軒もあるのだけど、久しぶりにあの店へ行ってみよう。
それは「唐そば」。
北九州八幡地区のラーメンで、東京で唯一食べられるお店。めちゃくちゃ旨い!って訳じゃないんだけど、なんだか旨い、いつでもしっくりくる味なんだよね。渋谷に事務所があった時には割とよく通っていた。
10年ぶりに訪れる「唐そば」。店内は変わらずで懐かしく思える。
カウンター席に座って、メニューを見る。
カレーつけ麺なんてあったっけ? めちゃくちゃ気になるものの、昔ながらのラーメンを注文する。そういえば、このノーマルラーメンしか食べたことはない。つけ麺すら食べたことないんだなと思った。
あと、本当はラーメンとおにぎりを食べるのが唐そば流というか八幡地区ラーメン流。ただ、僕は過去に何度も食べているが、そこまでおにぎりは必要ないと思っている。一方、僕の隣の男性はおにぎりを3つ注文していた。人によって好みはそれぞれというわけだ。
あーそれと、昔はゆで卵が1ヶ無料で、カウンターに卵が積まれていて、塩コショーをかけてそれを食べながらラーメンを待つ感じだったのだけど、インフレの影響なのか、ゆで卵が無料じゃなくなってしまっていた。時代だね。ちょっと残念。
ラーメン 唐そば@渋谷
久しぶりの唐そば。スープを啜る。
あれ? まあ旨いけど、こんなにしゃばしゃばな感じだっけ?
この10年でどんどんラーメンの世界が進化してしまったのだろうか? 唐そばのラーメンが水っぽく感じてしまった。昔はこれを旨いと思ったんだけどなぁ。
そう思いながら、麺を啜る。旨い。けど、しゃばしゃば。で、塩分薄め。
よく言えば、薄めのさっぱり豚骨。
麺とスープを交互にすすりながら、しばらくして、ハッと気が付く。
旨い。スープを飲み干せる旨さ。
最近、どうしてもパンチある味わいが旨いと思ってしまうけど、食べているうちに徐々に気づく旨さってあるよなぁと実感する。喜多方ラーメンとかも同じだよね。最後まで旨い、というか最後に行くにつれ旨くなるラーメン。頭のインパクトではなく、完食した時に初めて旨かったと思う味。
しっくりくるって感じていたのは、こういうことなんだなぁと改めて思った。
食べ終わってみて考えさせられた。インパクト重視ではなく、観終わってから、または観ているうちにどんどんいい映画だったなぁと思ってもらえるような作品づくりができたらなと改めて思わされてしまった。
「唐そば」によく来ていた理由は、そういうラーメンだったからだということを久しぶりに思い出した。忘れていた自分の初期衝動が呼び戻された気分。
店を出た僕。
さて、今日の打ち合わせのテンションは、一味違うぞと今思っている。