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物の本質について 1001 第一巻 

アエネーアスの子孫、つまりローマ人たちの母であり、人間と神々の喜びでもある、命を育む愛の女神よ。あなたは天を流れる星々のもとに、船が行き交う海にも、豊かに実る大地にも、命の力を満ち溢れさせる。そして、あらゆる生き物が宿り、誕生し、太陽の光を見ることができるのも、すべてあなたのおかげである。

あなたの存在によって、女神よ、激しい風は静まり、空の雲も消え去る。あなたが訪れる春の到来とともに、地上は美しい花々を咲かせ、海の波は喜びに満ちて輝く。そして、空は穏やかになり、光があふれて輝きを放つ。
春が訪れ、生命を育む春風が解き放たれると、まず空を飛ぶ鳥たちが、女神よ、あなたの力に心を動かされ、あなたの到来を告げ知らせる。その次には、家畜たちが喜び、豊かな牧草地を駆け巡り、急流の川を泳ぎ渡る。それほどまでに、すべての生き物はあなたの魅力に囚われ、あなたが導く先へと喜びながらついていくのである。


注釈

  1. アエネーアスの子孫: アエネーアスは、トロイア戦争に登場する英雄で、ローマ建国の起源となる人物である。彼の子孫がローマ人であると語られ、『アエネーイス』という叙事詩に詳述されている。

  2. 愛の女神: ローマ神話ではヴィーナス、ギリシャ神話ではアフロディーテに相当する女神である。ここでは命を生み育てる母性の象徴として描かれている。

  3. 天空の滑らかに流れる星: 夜空に輝く天体のことである。古代では、天体の運行は神々の力によるものとされていた。

  4. 船の通う海: 古代において海は交易や移動の重要な手段であった。海を航行する船は、自然の恵みと調和の象徴でもある。

  5. 豊かに実る大地: 農耕文化における肥沃な土地の象徴である。大地は女神の力によって作物を育み、人々に恵みをもたらすと信じられていた。

  6. 風は逃げ去る、空の雲も逃げ去る: ここでは、荒々しい自然現象が愛の女神の影響によって鎮められることを表している。風や雲はしばしば混乱や障害の象徴とされていた。

  7. 春の訪れ: 春は生命の再生と繁栄を象徴する季節である。冬を乗り越えた新しい命の芽生えが、女神の力と結びつけて語られている。

  8. 空飛ぶ鳥: 鳥たちは自然界の変化に敏感であり、春の訪れを知らせる存在として描かれている。

  9. 牧草地を駆け巡る家畜: 家畜は古代社会において重要な資源であり、その生気あふれる行動が女神の力によるものとして語られている。

  10. 流れの急な川: 急流を泳ぎ渡る家畜の姿は、自然界に生きる命の力強さを象徴している。

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