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【ヨガ日記】なぜヨガに解剖学が必要なのか〜地図を持って旅行に出よう〜

ヨガの解剖学を伝えてきて13年くらいになります。「ヨガの解剖学」という書籍を出したのが2009年だったと思います。

その前から講座を始めて、多くのフィードバックをもらいながら今は、「アーサナアナトミカルアプローチ」という形で啓蒙しています。

なぜ僕がヨガには解剖学が重要だと思っているかを少しお話ししたいと思います。

【自身の怪我】

僕がヨガインストラクターの資格を取ったのは15年前。ヨガを始めるとほぼ同時くらいにティーチャートレーニングコースに通いました。せっかく練習するなら系統だって勉強したいと思ったからです。

その時は、パワーヨガを中心に練習していました。ヨガスタジオも都心には沢山あったので、様々な流派も体験してきました。

そんな中、無理をして肋骨を脱臼するという怪我が起こりました。2ヶ月くらい寝返りも痛くて、仕事しながら苦痛に耐えるという日々でした。もう喉元過ぎれば熱さを忘れるで、その時の辛さは忘れましたが、今でも低気圧や調子が悪いと肋骨は痛みます。

僕はその当時クリニックで理学療法士として働いていました。人様の体の回復に関わる仕事です。当然、健康や医学というものに興味があり、ヨガのその延長上でとても心身を健康にしてくれると思って学んで練習していました。なのに、そのヨガの実践で怪我をしてしまったのです。

当然、痛めてからは練習はできず、何をしていたのだろうと自問自答し、ヨガが分からなくなっていきました。ただ言えることは、これはやり過ぎると危ないとか、注意して取らないと実践でも逆に体を痛めることもあるよということを警告してくれるヨガの先生に会ったことがなかったことでした。

自分の経験が、これは誰かがヨガの危険性について警告しなくてはいけない、そして安全で効果的な体の使い方を啓蒙しなくてはいけないと思ったのです。

ヨガの解剖学を伝える役割を担ったのは、僕にとっては必然でした。

【解剖学は体の地図】

「解剖学って何ですか?」と聞かれた時に、僕が答える定番が「解剖学は身体の地図です」というものです。

筋肉や内臓、神経、骨など体には様々なパーツがありますが、それに名前をつけてどこに何があるかを図示したものが解剖学です。そして、そこにそのパーツの機能まで含むと「機能解剖学」になります。例えば、このような感じです。

身体の正中に位置する握り拳大の心臓(解剖学)は血液を全身や肺に送るポンプ作用(機能)を持っています。

元々は亡くなった人、特に戦死した人や処刑された人を解剖して、その臓器を取り出し、特徴的な部分に名前をつけていったのが始まりです。分解した機械の仕組みを解き明かすような感じですね。ちょっとワクワクしますよね。

おそらくかなり好奇心をくすぐる作業だったと思います。中には、殺人をしてまで解剖したという奇怪な事件までありますので、、、。

解剖学は英語で「Anatomy」ですが、この語源は「バラバラにする」という意味です。分解好きな子どもの好奇心が発展させた学問でもあるかもしれませんね。日本で有名な解剖学者は養老孟司さんですが、彼は昆虫好きなことはよく知られています。なんか分かりますよね、その共通点。

【解剖学を学ぶメリット】

さて解剖学を学ぶメリットはなんでしょうか?解剖学は身体の地図でした。旅行に行くときに、皆さんは地図を持っていきますか?持たないでいきますか?

地図をなぜ持っていくのでしょう。それは、安心効率性が得られるからではないですか。限られた時間で効率的に観光スポットをめぐるには地図なしては難しいでしょう。危険を回避するにも地図は必要です。行き当たりばったりの旅行も時間が有り余っていれば楽しいですが、驚きと同じく危険との遭遇も高くなります。

最近はアプリで地図を普通に持ち歩く時代になりましたが、みんなが地図を使うのは便利だからです。では、ヨガで身体の地図を持っていることのメリット、その便利さを考えてみましょう。

◯内観に役立つ

先程の身体の構造を知ると、まずは自分の体に具体的な意識を持ってイメージしやすいですよね。「身体の中心にあるポンプが心臓、、、」。つまり注意を向ける対象についてのヒントが沢山あるということです。これは集中して内観するヨガにはもってこいです。

◯怪我の予防

これは自分の経験からも特に強調したいところです。解剖学は身体の地図であり設計図でもあります。つまり、解剖学を理解していれば、どのように動かしたら壊れ、どのように動かしたら安全なのかを構造的に考えることができるようになります。僕は車の整備士に例えることが多いのですが、素人はエンジンの異音に関して、気づくことはできますが直すことはできません。なぜなら構造について全く知識がないからです。でも整備士の方は、エンジンを見て「あぁここですね!」とか言ってさっと異常箇所を特定して直してしまいます。設計図が頭に入っているということは安全を確保してくれるということなのです。

◯効率よく使うことができる

先程のように体を車に例えると、車の構造や特徴を知っている人は、車の運転も上手なはずです。何が無理で何が無理でないかも分かります。構造を理解しているからこそ、上手に扱うこともできます。僕たちは、常識レベルとしてあまりにも身体のことを知らなさ過ぎると思います。本来は義務教育でその点は網羅すべきだと僕は思っています。内臓を空で描けない、筋肉・骨の形や構造についても無知です。カエルの解剖をやってる場合じゃないだろうというのが僕の意見です。

◯ヨガを客観的に捉えることができる

ヨガはインドの文化であり、インドの哲学思想でもあります。そこには多くの先人の思いや主観、主張が含まれています。それ自体はとても素晴らしいことですが、異国の我々が学ぶにはやや複雑すぎます。そこを解剖学という客観的な学問をフィルターとして通すことで、ヨガ自体を客観視することができます。客観的な視点は物事の整理にとても役立ちます。自分がなんのためにヨガをしているのか、ヨガの何を取り入れようとしているのか、ヨガはそもそも何なのか、人生とは、幸せとは、、、。様々な疑問や悩みを解決しようとして宗教や思想が出てきました。同じく、近代はそこからより普遍的で、客観的な視点として学問や科学が出てきました。これは歴史的な必然であり、違いを超えて共通認識を得るために必要なことです。他文化をそのまま受け入れることはできません。自分たちの文化的背景を大切にしながら、他文化のいいところを客観的に取り入れる、それが大人の関係だと思います。そのためには学問が重要なのです。

【アーサナアナトミカルアプローチ】

僕は今、アーサナアナトミカルアプローチという視点でヨガを客観的に捉える活動をしています。そしてその活動に賛同いただいている多くのヨガインストラクターの方々がいます。

前述した解剖学でヨガを捉え直すメリットをこれからも広めていきたいと思います。それが日本のヨガ業界のためになると思いますし、ヨガを始めようとしてる多くの日本人の助けにもなると思っています。

僕がそうであったように、ヨガで怪我をして、ヨガで悩み、ヨガに改心してしまわないように、日本人らしく、自分の文化を大切にしながら、客観的な視点でヨガと上手に付き合える、そんな導きができるようになりたいなと思っています。

またそのようなヨガのインストラクターが増えて欲しいなと思っています。

今はこのご時世ですので、オンラインで講座を行っています。アーカイブで今までの講座も購入できます。

ヨガの解剖学に興味がる方はぜひ覗いてみてください。

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