宇多田ヒカルとTHE MODS森山達也にみるファンへの感謝の言葉
宇多田ヒカルさんのツアー、『HIKARU UTADA SCIENCE FICTION 2024』が大盛況のうちに終了。
記事にも出て来るし、僕もライヴの時に聞いたけど、こんな印象的なMCがあった。
今回は私の25周年を祝って貰うんではなくて、皆んなの25年でもあって。生きていると、25年もあれば皆んなも色んなことがあったと思うけど、楽しかったこともイヤだったことも、全部が自分をここに連れて来てくれたんだと思うと、悪くないじゃん!って思えるようになった
「色んなこと」や「ここに連れて来てくれた」は、アーティスト本人はもちろん、会場に来ているファンにとってもそう。それは、来れなかったファンにも話しかけていたように感じられた。だから、僕らはアーティストや音楽に自分自身を重ね合わせ、思い入れを抱くのだ。改めて、素晴らしいライヴだった。ライヴ後には書いたnoteはこちらです。
※この日のみ、福岡の伝統的民謡、『祝いめでた』を(楽器調整の合間に)急きょ、お客さんといっしょに合唱、というサプライズがあった。ちょうど博多祇園山笠の期間中だった。
宇多田さんのMCを聞いて、一つ思い出した。THE MODSの森山達也さんの、同じくファンへの感謝の言葉だ。
THE MODS
Thanks for the 15th Anniversary
1996/6/30
日比谷野外音楽堂
アンコールで演奏された"TWO PUNKS"。曲の途中で、森山さんは超満員のファンにこんな感じに語りかけた。
今日は俺達の15周年のライヴだけど、15年ずっと応援してくれたファン、そして、ファンだった連中にも感謝します。
今まで応援してくれているファンだけでなく、「ファンだった」人達に向けても感謝の気持ちを伝えたのだ、あの「約束の地」である日比谷野音のステージで。こんな過去のファンへの語りかけは他に聞いたことがない。
「アニバーサリー」に至るまでの道のりは長く険しい。幾多の困難があっただろうし、様々な出会いや別れも。
宇多田ヒカルさんのMCでも「全部が自分をここに連れて来てくれた」と語っているし、こうも続けている。
失ったものもずっと自分の心の一部になっていると知ったり
「失ったもの」は色んな意味があるのかもしれないけれど、「自分の心の一部になっている」という心境になっていることに感銘を受けた。
そして、僕達は音楽が自分の心の一部になっている。森山さんは、かつて「曲は出した途端にファンのものになる」と語っている。聴いている人の数だけ、"TWO PUNKS"や"Automatic"やSTAY CRAZY"や"Stay Gold"がある。
全ての出来事と出会った人達への感謝。それがあったから、アニバーサリーを迎えられた。森山さんと宇多田さんの、ファンに向けての言葉からそれを学んだ。
my note #156