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【僕たちは母を介護する】-25「自発呼吸」

《11日目》

途中連休が入り、見舞いに行くことができなかった。
感染症対策で、病院への出入りはかなり厳しい。
特に休日は病院も交代で看護しているため、患者の家族であっても対応することができないようだ。
これは仕方ないことだ。
患者の家族としては心配で見舞いに行きたいが、病院のスタッフも休める時に休まないといけない。彼らが倒れてしまっては大変なことになる。
幸い母は回復に向かっているので気持ちでいられるが、そうでない患者のいる家族は面会できないと心配だろう。

連休が明け、いつものように弟と見舞いに行く。
病院に着くと三男も到着した。
面会するとかなり受け答えができるようになった。
管が入っているので、声はほとんど出ない。
それでも、こちらの話は分かっているように感じた。
看護師と話すと血圧もかなり良くなっているとのことだ。
それでも肺の水の関係で酸素は少ないらしい。
酸素が少ないことがいつまで続くのか・・・
わからないだけに不安は残った。

《翌日》
仕事が終わり、帰宅途中に担当医から電話がかかってきた。
ちょうど目の前に店の駐車場があったので、車を止め電話に出た。
「本日、自発呼吸のテストをしたところ大丈夫だったので、明日、抜管をしようと思います」
「そうですか!よかった!それは私たちも病院に行った方がいいですか」
「いえ、大丈夫ですよ。遠いですし、問題ないと思います」
「そうですか。わかりました。よろしくお願いいたします」
「はい、ただ抜管後に喉の腫れがあったり痰の絡みなどがあるかもしれないので、注視していきます。また、その後の症状によっては再挿管することがあるかもしれません」
「そうなんですね。わかりました」
「血圧も薬を使っていますが安定しているので大丈夫と思います」
「わかりました。よろしくお願いいたします」

《翌日》
昼の休憩中に抜管はどうなっているのだろうと思っていたら、担当医から電話がかかってきた。
「抜管は成功しました」
「よかったー、ありがとうございます」
「はい、酸素濃度は低いので酸素マスクはつけています。血圧もまだ低いので薬を続けていますが、このまま順調に進めば明日か明後日には一般病棟に移れると思います」
「え!?そうなんですね!ありがとうございます」
急展開のように感じた。
もう少し回復が見られてから一般病棟に移るものと思っていたが、それは不安や心配を抱える家族の心境だろう。専門家の判断で一般病棟に移れると言うのだからひとまず安心した。

電話を切って、次男と三男に電話をした。
二人とも安心したようだった。
しかし、一般病棟に移れると聞いて驚いているようだった。
私は「専門家の判断だから」と自分の考えを伝えた。
「そうだよね」と二人とも納得した。
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しかし
この時はわからなかった。
素人目で大変な状態とみえる患者が一般病棟に移れるという現実。
これは
これから続く入院生活と先の介護生活において、現実に気持ちがついていけないことの始まりだった。

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