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ノルウェーのクリスマスのお味は

12月は Julebord の季節。Julebord を直訳すると、クリスマス・テーブル。
伝統的なクリスマス料理をビュッフェスタイルで楽しむ季節イベントです。

会社などの組織では必ずといっていいほど催される食事会ですが、リモートでノルウェーと関係なく働く私は今まで縁がなく。過去2年間、ノルウェー的クリスマスを味わうことなく過ごしてきました。

スーパーではいろんなクリスマス食材が山積みされていますが、さすがに伝統料理は自分ではうまく作れません。(適当に料理して大失敗した経験あり)

今回、在住外国人女性のコミュニティでJulebord イベントがあり、ノルウェーのクリスマスを味わえる絶好の機会だと参加してきました。

こちらは、定番中の定番であるノルウェー伝統メニューの紹介と、個人的感想です。


塩漬けラム肉 (Pinnekjøtt)

ノルウェー西部が発祥といわれる伝統料理。乾燥して塩漬けしたラム肉を長時間水につけて塩抜きし、蒸して(または茹でたり、焼いたりして)調理したもの。塩抜きしたとはいえ全体的にしょっぱく、野生味あふれるラムを味わえます。肉は柔らかくほろほろで食べやすいですが、ラムの独特の風味は強めです。

ワイルドな見た目、塩漬けラム肉料理

ノルウェー人と結婚したアメリカ人女性から聞いたのですが、彼女の夫の家庭では、代々、男性陣が羊を塩漬けするところから準備するとか。おじいさんから息子、そして孫へと実際に引き継がれていると聞くと、確かに伝統料理だわ、と感じます。

少し前まではヨーロッパでも貧しい国だったノルウェー。寒冷地で農作物が乏しかったため、肉や魚を保存する技術が大切に引き継がれてきたのだろうし、冬のタンパク質は貴重な栄養源だっただろうと思います。クリスマス料理の筆頭にあがるのも納得。

スーパーで大売り出しされてる塩漬けラム肉

濃い味付けで保存がきくといえば、日本のおせちもそう。すごく美味、というわけではないけれど、伝統料理として大事にされ、守られてきたという感覚、よくわかります。

ノルウェーでハイキングすると目にする、たくさんのかわいらしい羊たち。この地域の人々にとって、とても身近な家畜です。クリスマスの特別な日に、伝統料理としてありがたく食されているのですね。

余談ですが、先日、小5次男の理科の授業で、解体後の羊の一部が持ち込まれたとか。羊を使って、心臓や肺、目のお勉強をしたようです。解剖で使われるのは日本ではカエルだと思いますが、こちらでは羊というのがお国柄というか。ごちそうだけではなく、学習の教材にまでなってくれるノルウェーの羊です。

羊さん、ありがとう。

皮付き豚バラ肉 (Ribbe)

クリスマスに一番人気の定番ディッシュが、皮をパリパリに焼いた豚バラ肉の料理。皮をいかにクリスピーにするか、が肝とのこと。

パリパリ皮つき豚バラ肉

中華料理で出てきそうな一品ですが、一番の違いは皮の厚さ。薄くパリパリ・カリカリした中華と比べると、こちらの皮は硬くて厚くて噛めないほどのバリバリ感。やっぱりワイルド感強めです。

皮の圧倒的食べ応えと、肉汁たっぷりでジューシーなお肉のおかげでしょうか、一切れでもボリュームを感じる一品です。

クリスマスといえば日本では(ケンタッキー・フライド)チキンを思い出しますが、こちらでは脂たっぷりな豚肉か、塩漬け羊が主流です。

スーパーのちらし。左がラム肉、右が豚バラ。

脇役たち

メインとなる肉は強いお味ですが、それに添えられる野菜やソースたちが脇役として重要な役割を担っています。

定番は、ポテト、ザワークラウト、クランベリーソースでしょうか。

私にとって目新しかったのが、西洋蕪のマッシュ(ほんのり甘くてみずみずしい)と、赤キャベツのザワークラウト(酢を使わず、塩をいれて発酵させたもの。すっきりした酸味とシャキシャキの食感)。
自分でも作りたくなりました。

ビュッフェ、私の一皿。右端に見えるのが蕪のマッシュと紫キャベツのザワークラウト。

そんなにお肉を消費できないお年頃なので、体に優しそうな野菜たちが美味しいと満足感が上がります。

その他いろいろ

  • ルーテフィスク (Lutefisk) 今回のビュッフェには出ませんでしたが、同じテーブルの外国人女性たちが大いに盛り上がって話していたのが、ルーテフィスク と呼ばれる魚料理。 
    「臭いからもう2度と食べたくない」「ゼリーみたいな食感がかなり微妙」と、辛辣コメント多数。
    塩干ししたタラを灰汁につけてゼリー状にした魚料理とのことで、日本でいえば、くさやに近いタイプの匂いなのでしょうか。機会があれば、食べてみたいような、みたくないような。

ルーテフィスク(画像:Wikipedia https://en.wikipedia.org/wiki/Lutefisk
  • タラ (Torsk)  タラのソテーはクリスマス料理の定番のひとつ。日常でもタラはサーモンと並んでよく食べられていますが、クリスマスは白身魚にホワイトソースをかけていただきます。

  • クリスマス粥 (Julegrøt)  ノルウェーのお粥は甘く、正直、私の苦手なところ。お米を牛乳で煮て、砂糖やシナモン、レーズン、クランベリーなどを入れた料理。クリスマスマーケットでも人気メニューのひとつです。

マーケットで食べたクリスマス粥。残念ながら完食できず。
  • 伝統菓子 (Kransekakge) 結婚式やお祝い事、クリスマスなどで出されるノルウェー伝統のケーキ。アーモンド粉、砂糖、卵白で作られた輪っかが18個積み重ねられています。チューイーでモチモチした食感が好き。
    結婚式では、新郎新婦が一番上の輪っかを持ち上げ、くっついてくる輪っかの数で将来生まれる子供の数を占うんだとか。

外側は固そうですが、中はモチっとして甘い。
  • スパイス入りホットワイン (Gløgg) 赤ワインにシナモン、クローブなどのスパイスと砂糖を入れて温め、レーズン、アーモンド、オレンジなどを加えた飲み物。Ggøgg  キットがスーパーで売られているし、クリスマスマーケットで定番の飲み物です。

Gløgg (画像:mulled wine - Large Norwegian Encyclopedia )
  • クリスマスビール (Juleøl)  ビールも負けていません。12月が近づくと、様々なクリスマスパッケージのビールが出て気分が盛り上がります。スパイスを入れたり、濃厚なテイストにしたり、メーカーは毎年、味を競い合っているそう。

今年のクリスマスパッケージビールと、クリスマス味チップス

日本のお正月と似た感じで、この時期は伝統の食事やお菓子がたくさん作られ、スーパーでは季節限定パッケージの食品・食材で溢れます。
ツリーやデコレーション商品もお店に溢れ、この時期はフェスティバル感かなり高め。

小麦粉だってこのとおり。

おまけの話ですが、Julebord の席の隣の女性から聞いたお話。
彼女はノルウェーに数十年住み、長く会社勤めされたそう。毎年、全額会社持ちでJulebord が開催されますが、20年ほど前までのJulebord は参加者の羽目の外し方がとんでもなかった、と。ここぞとばかりにアルコールを大量に飲み、乱痴気騒ぎっぷりがすごかったそう。

景気がよかったからなのか、今ほどコンプラがうるさくなかったのか、日が短くて暗い天候の憂さ晴らしなのか、そして実は今でも大騒ぎの習慣は残っているのか、いろいろ謎ではあります。

今回、私は初めてのJulebord でしたが、ちょっとフォーマルな格好で人と集まり、楽しく食事するといった、ハレのイベント感が楽しかったです。
そして、ノルウェーの伝統料理を口にすることができ、嬉しい満足感。

みなさまもどうぞ、良いクリスマスをお過ごしください!





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