スタバンゲルの町を歩いていると時々出くわす赤錆びた人型彫刻。
やけにあちこちにあるぞと気づいてはいたのですが、最近になって、イギリスの著名な彫刻家であるアントニー・ゴームリーの作品だとわかりました。
ゴームリーは、自身の人型像を世界各地の空間に展示する、独創的な作品で知られる現代彫刻家。
スタバンゲルには、なんと23体もの彫像が街に点在しているのです。
アートプロジェクト「Broken Column」
一連の作品は「Broken Column」(壊れた柱)と呼ばれる2003年に作られたインスタレーションで、ある法則のもとに配置されました。
まず、彫刻はゴームリー自身の人型から作られているので、どれも同じ形、同じ鉄鋼素材、同じ大きさ。
次に、高さ195cmの彫刻は、0番目から22番目まで、順々に195cmずつ高くなっていくように配置されています。(0番目の頭頂の高さと1番目の足裏の高さが同じになる)。
そして、彫刻の向きも全て同じなので、23体をつなげると一本の柱になるというコンセプト。
計算された等高線上のどこに設置するか、そこには作者の深い意図が隠されているはずです。
それを探るべく、街に配置されたゴームリー探しをやってみることにしました。
「壊れた柱」散策マップ と丁寧な解説Webサイトがあるので、それらを見ながらウォーキングプランを立ててみたのですが、ひとつ問題が。
見ることのできない彫像がある。
いくつかの作品は、簡単にアクセスできない場所に配置されているのです。ひとまず、屋外散歩で探せる作品に狙いを定めて歩いてみました。
街の中心に立つゴームリー
歴史に立つゴームリー
生活に溶け込むゴームリー
プライベートに入り込むゴームリー
存在を消したゴームリー
柱の底面と頂上のゴームリー
ゴームリー彫像づくしの探索を終えて
地図を見ながらゴームリーを探して歩くのは、まるでポケモンGoをしているような、宝探し的なわくわく感がありました。
観光客が集まるメジャーな場所から、住人しか通らないマイナーな場所まで、様々な街の姿を発見しながら歩けるので、スタバンゲルの町散策としてかなりおすすめです。
そして、ゴームリー彫刻群が、町の空間の中で、歴史・人々・自然と相互作用する様子を鑑賞するアートとしての面白さも。
静かに佇む錆びた人型と街空間との関係は、人によって、またその時々の自分や社会の環境によって感じ方は違うだろうし、時と共に変わっていくものだろうとも思います。インスタレーションとしての面白さがたくさん詰まったアートプロジェクトだと思いました。
余談ですが、ゴームリーは彼の代表的プロジェクト、「Another Place」を1998年にスタバンゲルのSola Beach で行いました。彼の人型彫刻が100体も海に佇むインスタレーションは大成功を納めたようです。その成功が、街がスポンサーとなった Broken Column プロジェクトに繋がりました。
さらに余談ですが、ゴームリーの彫刻は、私の出身県、大分県国東半島の山頂にも佇んでいます。遠く離れた日本の故郷とスタバンゲルがゴームリー像で繋がり、個人的に嬉しさを感じています。