ノルウェーの素敵な家、その舞台裏
春を迎え、ノルウェーで最高の季節がやってきました。
ある素晴らしく天気の良い休日、私は帽子を被り、軍手をはめ、ひたすら庭のタンポポを引き抜いていました。
春になったかと思うと、庭があっという間にタンポポだらけになったのです。雑草がニョキニョキ伸び、「うちの庭、このままじゃヤバい」と焦りました。
一方で、隣近所のお家はどこも芝生がきれいに整えられ、さまざまな種類のお花で彩られています。そして、老若男女、あちこちで庭仕事に精を出す人々。
ますます「うちの庭、なんとかしなきゃ」と思わされ、庭の手入れが気になって仕方ありません。今まで全く関心をもつことなく、九州の実家で母が毎日のように庭仕事していても、お手伝いすらしなかったのに。
そんな時に見つけたのが在住外国人向けセミナー、「ノルウェーのお家のメインテナンス方法 (How to maintain Norwegian House)」でした。
講師ご夫婦のお宅に伺い、実際の家や道具を見ながら学ぶイベント。今のニーズにぴったりでした。
ノルウェー人のDIY精神
最初のお題は、「外壁のペンキ塗り」。
板壁に白・赤・黄色などのペンキを塗ったお家が多いノルウェー。
色が剥げ始めたらペンキを塗り直すそうですが、約5年ごとにやるというからびっくり。結構な頻度ですよね。
まずは古いペンキに薬品をつけ、塗装剥がしスクレーパーでこそげ落とした後に、ベースを塗ってからペンキを2度塗り。
高いところはハシゴを使い、安全に十分気をつけながら作業します。
私の常識では職人さんに頼んでやってもらう作業ですが、何でも自分たちでやるのがノルウェー流。
人件費がとにかく高いノルウェー。職人を雇う費用を考えたら、自分たちで出来ることは自分たちで、という精神なのでしょうか。
そういえば新築のご近所さん、住み始めた時は木肌だった外壁を、若いパパが頑張ってペンキ塗りしてたっけ。今はおしゃれなグレーのお家に大変身。
家のあれこれはDIYが当然という意識がノルウェーには根付いてる気がするし、そんな作業を楽しんでいる人が多いという印象を受けます。
庭仕事の極意は
女性講師が教えてくれたのは、実生活で彼女が担当している庭仕事。
私が知りたかった芝生のメンテナンス方法を、たくさんのツールを見せながら教えてくれました。
庭の花壇を見ると、彼女がこだわりと愛情を持って手入れしているのがよくわかります。
何を植えるか考える時、植物の年間スケジュールと自分の生活がうまくかみ合うように組み立てることが大切だそう。
バケーションで何週間も留守にする時期にお花が満開になっても仕方ないし、仕事が忙しい人は手入れが楽な植物を選んだ方がいい。
春夏秋冬それぞれに楽しめるように、植物を組み合わせることも大切。
講師の女性は、どんなに忙しくても、毎日花壇に来て植物に声をかけているそう。彼女の花壇で元気よく繁殖中の植物を、私たちにいくつも分けてくれました。
メンテナスは誰のため?
興味深かったのは、「お家の外壁は、自分の目に映る時間よりも、ご近所さんが見ている時間の方がずっと長いんだよ。それを考えて色を選んだりメンテナンスしたりしなきゃね」と言っていたこと。
自分が住む地域の雰囲気やカラーに自分の家を合わせるのは常識のひとつ、とも強調していました。
家の境界線に生垣を植える時は、ご近所さんとよく相談することが大切だし、日曜日に庭仕事をしてはいけないことも忘れてはいけません (教会の日だから。家で集まる人が多いから作業音は迷惑)。
敷地に接する歩道は、その家の人が草刈りや掃除をする義務があるし、家の車庫が足りないからと路上駐車するのもよろしくないよ、と。
地域に対してとても配慮していることが端々に伝わってきました。
自分の家まわりを美しく保つのは、決して自分のためだけではないのです。
国の規則や町の条例の知識も必要です。例えば、煙突検査が2年に一度あるので、暖炉のあるお家は定期的な煙突掃除が必須です。
家を持つ(借りる)ということは、安全に、気持ちよく暮らすための様々な義務がついてくることを心しておかなければいけません。
我が家の場合
実は年初からリノベーション作業が行われていた我が家。
昨年引っ越してきた時点で階下のバスルームが故障していたので、直してもらう約束だったのです。
年末年始の留守中に終わるはずだったリノベが、蓋を開けると4ヶ月の大工事に。水道パイプが古かったので全とりかえし、壁を剥がすと断熱材も古くてこちらも全入れ替え。
職人さん数人が入れ替わりやってきましたが、大半は大家さんご本人のDIYです。その大家さんが作業中にアキレス腱を切ってしまい、また遅延。
埃や木屑が舞う中で暮らすことになり、作業音は続くし、毎日のように誰かが出入りするしで、私達も大家さんも「こんなはずじゃなかった」状態でした。
先日は屋根の洗浄作業が入ったのですが、信じられないくらいの汚水と苔が大量に落ちてきてびっくりしました。
家が古くなったり、メンテナンスを怠ると、リノベーション作業が大変なことがよくわかりました。
ノルウェーのお家は素敵だな、お庭もきれいだな、と常々思っていましたが、舞台裏ではたゆまぬ努力をしているのですね。
私たちは借家で、この先長く住むわけではないし、大きな補修は大家さんが管理実行してくれます。とはいえ、日々のお手入れはテナントの責任。
ノルウェー的常識を頭にインストールして、出来る範囲で手を動かしていこうと思います。
ちなみに、伸び放題だったお庭ですが、大家さんが自動草刈機を投入し、道具もいくつか貸してくれました。さらに、手際の悪い私たちを見かねたのか、長時間の草刈り作業に来てくれて、庭は見事にすっきり。
「この後は君たちに任せたよ」と言い残して去って行きました。
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