展覧会レポ:パナソニック汐留美術館「開館20周年記念展 ジョルジュ・ルオー ―かたち、色、ハーモニー―」
【約2,600文字、写真約15枚】
初めてパナソニック汐留美術館に行き、ルオーの展覧会を見てきました。その感想を書きます。
結論から言うと、おすすめ度は★3でした。良かった点は、1)パナソニック汐留美術館の独特な変遷、2)ルオーのみを集めた貴重なコレクション、3)監視員が子供に優しい、という点でした。
▶︎ パナソニック汐留美術館へのアクセス
パナソニック汐留美術館は新橋駅から徒歩約10分。パナソニックのロゴを掲げた大きなビルの4階に位置しています。
他の階にはパナソニックのオフィスが入っているようです。そのため、美術館外のロビーなどは、社員の写り込みを防ぐため写真撮影禁止でした。
住所:東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4階
▶︎ パナソニック汐留美術館とは
パナソニック汐留美術館とは、
2003年に開館したときは「松下電工NAISミュージアム」という名前でした。2008年(+2012年)に「松下」を「パナソニック」に社名変更したことに伴って、美術館の名前も変更したようです。
公式サイトの沿革には「1997年 ルオー作品の収集開始」としか書かれていないため、パナソニックがルオーを集めた理由が謎でした。しかし、調べてみるとその背景がわかりました。
つまり、パナソニックの元・会長が趣味で集めたルオーのコレクションがきっかけで、美術館を作るまでに至ったんですね。当時の会長の鶴の一声で、経営陣としては、ヒトもカネも使うし困ったことでしょう…。
▶︎ 「開館20周年記念展 ジョルジュ・ルオー ―かたち、色、ハーモニー―」
今回の訪問の理由は、1)パナソニック汐留美術館(名前が長い…)に行ったことがなかった、2)ルオーは名前くらいしか知らなかったためです。
私は「ルオー」と聞けば、ポケモンを想起するくらいの知識しかありませんでした。オムニバスではなく、このように一人のアーティストを紹介する展覧会は記憶に残りやすいため、ありがたいです。
ジョルジュ・ルオーは1871年生まれ、1958年没。第二次世界大戦も経験しており、比較的最近のアーティストです。WWIIに関連した作品も残しています。美術学校ではギュスターヴ・モローを先生にして、アートを学んでいました(マティスもモロー先生に学んでいました)。
今回の展覧会は、年代別に全部で5つのセクションに分けて構成されています。このような構成はオーソドックスですが、アーティストの画風の変遷がわかるため興味深いです。ルオーといえば、厚塗りでカラフルな印象がありますが、初期はコロー(みんな名前が似ている…)のような今とは全く違う写実的な作品も多くありました。そこから様々な作品を見てインスピレーションを得ることで、最終的なルオーの作風が出来上がっていきました。
塗っては乾かし、塗っては乾かす。ルオーの独特なマティエール(画肌、絵肌に見られる肌合いや光沢の状態)からは、怖いような、楽しいような、神秘的であるような不思議な感覚をもちました。その画風は、キリスト教の世界観にもマッチしているように思いました。
「V 旅時の果て」のみ撮影が可能でした。
パナソニック汐留美術館は、子供に大変親切でした。メモに難儀している子供にクリップボードを渡してくれたり、書きづらい様子を見て、監視員用の椅子を使うことを促してくれました。子供を注意することで、子供にとって嫌な思い出を残す結果となる美術館が多い中、美術館が知的好奇心を満たす場所だと子供に認識させてくれるのは大変ありがたいです。
また、作品のガラスが低反射で見やすいのが印象的でした(ガラスがないのかな?と見紛うほど)。美術館のサイトには珍しく「ミュージアム照明」というページが設けられています。ソケット(照明器具)といえば、松下幸之助の代名詞的アイテム。それだけに照明にもこだわった美術館とも言えます。ミュージアムショップに『学芸員のための展示照明ハンドブック』(¥3,300)という本が売っているのは初めて見ました(笑)
▶︎ まとめ
いかがだったでしょうか?企業系の美術館は、設立の背景も含めて面白い点が多いです。ルオーに関しては、これだけのコレクションを一気通貫して鑑賞することができ、彼の画風の変遷にどのようなターニングポイントがあったのかを知ることができた貴重な展覧会でした。