展覧会レポ:国立新美術館「テート美術館展 光 ―ターナー、印象派から現代へ」
【約4,300文字、写真約35枚】
年初から楽しみにしていた国立新美術館の「テート美術館展」に行ってきました。その感想を書きます。
結論から言うと、テート美術館から「光」をテーマにした約120点が揃った豪華な展覧会で、新聞社などが自前で企画する「xx美術館展」とは一味違いました。スケールの大きな現代アートも多かった点が満足度が高かったです。ただし、チケットが2,200円と高額な点がネガティブでした。
▶︎ 「テート美術館展 光 ―ターナー、印象派から現代へ」
テート美術館が所蔵する「光」に挑戦し続けたアーティストたちの展覧会です。一緒に仕事をしたことがあるカメラマンも「写真はライティンングが命」と言っていました。それは絵画も同じでしょう。
平日でも人が多かったです(日時指定券はなし)。「xx美術館展」はいつも集客力があります。夏休みの宿題のため、子供の姿も多く見えました。
なお、チケットがすごく高いのが気になりました(2,200円!)。電気代の高騰、大型展示物などのための輸送代、保険代が高いのは理解できます。しかし、2,200円は今までの展覧会と比べてより一段高く、行こうか、止めようか、30秒くらい踏みとどまったほどでした。
▶︎ 訪問のきっかけなど
年初から気になっていたテート美術館展。テート・モダンにあるような「印象派から現代へ」の「現代」が気になったため訪問しました。
主催は、日本経済新聞社、テレビ東京、BSテレビ東京のお決まりのコンビ(あとTBSとBS-TBS)。私は、メディアが独自に手がける「xx美術館展」があまり好きではありません。なぜなら、美術館の改装などに伴い開催されることが多いため、目玉的な作品は少なく、作品群に脈絡がないためです。
テート美術館展は、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドで開催された世界巡回展(日本が最終会場)です。そのため、展示にはテーマ「光」があり、キュレーションもしっかりしているのが特徴です。
なお、ジョン・エヴァレット・ミレー「オフィーリア」などの名物的な絵画があれば、観覧者はさらに増えたと思いました。
▶︎ room1:精神的で崇高な光
room1は、主観や感性を重視するロマン主義のアーティストの作品が並びます。私は、特に現代アートのようなターナーの作品が気に入りました。中には、アニッシュ・カプーア「イシーの光」(撮影不可)のような現代アートも混ざっており、緩急が効いていて見飽きない工夫がありました。
▶︎ room2:自然の光
room2は、自然と光をテーマにした作品が並びます。私の好きなシスレーの作品があったのは嬉しかったです。また、草間彌生の鏡を使った作品が中央に置かれており、センスの良い空間になっていました。
▶︎ room3:室内の光
室内空間を描いたアーティストたちの作品が3点のみ展示されています。光の描き方によって、登場人物は言葉は発せずとも、明るい・暗い気持ちがうまく表現されていると思いました。
まるでフェルメール作品のようなイメージも受けました。
▶︎ room4:光の効果
光に対して科学的な関心を抱いたアーティストの実験的な作品が展示されています(すべて撮影不可)。
中でも、ターナーが講義用に使った教科書のような作品が印象的でした。ターナーは、ロイヤル・アカデミーに在職していました(講義は31年間で12回のみ)。絵の素養があった上で「湖に沈む夕日」のような革新的な絵を描くのは、ピカソなどと共通していると思いました。
それは絵だけではなく、どの分野でも革新的な表現や発明をする人は、そもそも土台が確立していないと説得力が伴わないんだな、と感じました。
▶︎ room5:色と光
room5は、幾何学的な形態を用いた光と色の関係を考察するアーティストの作品が展示されています。room5からインスタレーションも含めた現代アート的な作品がメインになります。近くの親子が「これは何だろう?お母さんも分からない〜」などと会話が弾んでいるのが印象的でした。
なお、room5はroom4と違って撮影可能です。その区別が分かりづらかったため、多くの観覧者は「これ撮っていいの?」と言っていました。
▶︎ room6:光の再構成
産業の発展と多様化に伴い利用が広がった電気を使い、光と新たな関係性を見出したアーティストの作品が並びます。概念的で観覧者に判断を委ねる作品が多いです。私の好きなジュリアン・オピーや、12mに及ぶブルース・ナウマン「鏡と白色光の廊下」(撮影不可)も並んでいました。
オラファー・エリアソン「黄色vs紫」は時間帯を区切って展示していました(時間の都合上、私は見ることができず)。
▶︎ room7:広大な光
room7は最後の部屋。光を使った大きな作品が4つ展示されています。中でもメインビジュアルにも使われているオラファー・エリアソン「星くずの素粒子」はインスタ映えするため、ほぼ全ての人が写真を撮っていました。
美しいと感じる気持ちは普遍的だな、と感じました。ミラーボールよりも壁に映った影を眺めている方が楽しいです。まるで顕微鏡で見た生物の細胞のよう。写真よりも動画の方が良さが際立つと思います(動画撮影は不可)。
また、ジェームズ・タレル「レイマー、ブルー」(撮影不可)は贅沢に広い空間を使った作品でした。まるで2001年宇宙の旅のモノリスを彷彿とする神々しい印象を受けました。
▶︎ まとめ
いかがだったでしょうか?18世紀から21世紀の現代アートまで、光に的を絞ったテート美術館の作品を一挙に見られるので貴重な機会でした。セレクションもテートが選んでいることもあり、一般的な「xx美術館展」に比べると見応えがありました。現代アートが多かったので満足でした。ただし、値段が2,200円と高額な点が気になりました。
▶︎ おまけ
発券所の場所が展覧会によって別れているのが分かりづらかったです。外の発券所ではテート美術館展のみを発売していました。
係員を一人配置して、並んでいる人に常に声をかけていました。ただし、外国人の方は理解しきれておらず、結局、窓口で券を買う時にトラブルになっていました。また、窓口も一つしか使っていなかったため、窓口でトラブルになると、並んでいる人全員が待たなければならず、効率が悪かったです。
以下の運営を検討したらどうでしょうか。
・全ての展覧会の販売を1カ所にまとめる
・発券所の窓口を2つ以上開設する
・マニュアルの窓口に加えて、自動券売機も置く
▶︎ 今日の美術館飯
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