展覧会レポ:アーティゾン美術館「マリー・ローランサン―時代をうつす眼」
【約2,700文字、写真約30枚】
アーティゾン美術館で開催されている「マリー・ローランサン―時代をうつす眼」を鑑賞しました。その感想を書きます。
結論から言うと、1)ローランサンの作品をまとめて数多く見ることができたため満足、2)ローランサンの作風が確立した内面的な変化などを深掘りできるキュレーションだとなお良かった。
▶︎訪問のきっかけ
訪問のきっかけは「マリー・ローランサンとモード」(Bunkamuraザ・ミュージアム:2023/2/14~4/9)に行かなかったと若干後悔していたためです。
なお、かつては「マリー・ローランサン美術館」がホテルニューオータニ(東京)内あったようです(2019年閉館)。
▼以前に私が訪問したアーティゾン美術館の展覧会
▶︎「マリー・ローランサン―時代をうつす眼」感想
展覧会に行くまで「ローランサン」と言えば、1)高貴なおばさまが好きそうな絵、2)ローランさんはピカソやココ・ シャネルと友達だったという印象くらいしかありませんでした。当然、キュビズムの前衛画家ということを私は知りませんでした。
ローランサン自身は、マチス、ドラン、ピカソ、ブラックに影響を受けたと語っています。国立西洋美術館で開催された「パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展」に行った人は、この展覧会と関連が強いため、訪問をおすすめします。展示されているマチスなどの作品は全てアーティゾン美術館の所蔵でした。まるで「俺は全部もってるぞ!」と自慢するかのようでした😁
中には、ローランサンによる水彩画の挿絵も展示されていました。ヨーロッパで、水彩画は油絵に対して下に見られていると読んだことがあります。そのため、水彩画があること自体に少し驚きました。ローランサンの作風は挿絵にもマッチしていると思いました。
ローランサンと言えば「真っ白すぎる肌の女性」です。藤田嗣治とは違った次元の白のベタ塗りでした。その先入観で作品を見ると違和感はありません。ただし、「美白」が人種差別用語として敬遠されている現代、今を生きるアーティストがこの作風を全面に出すとNGなのかな、と思いました。
ローランサンの作風は、どこか竹久夢二のような、平面的で日本風な印象も受けました。しかし、ローランサンの年表を見ても、特に日本から強くインスパイヤされた訳ではないようでした。
また「白」以上に印象に残ったのは、犬の絵がかわいいこと。つぶらな瞳がキュート過ぎました🥺
全体を通して、ローランサンの作品を数多く見ることができたため満足しました。強いて言えば、副題にある「時代をうつす眼」感はあまり感じられませんでした。彼女はピカソたちと仲が良かったものの、キュビズムに傾倒せず、独自の作風を確立しました。戦争など時代の変化に紐づけて、ローランサンの作風の変化やその理由が端的に分かるとなお良いと思いました。
例えば、ピカソは、第二次世界大戦後「ゆるかわ」なセラミック作品が多くなります。それは分かりやすいほどに、戦争の終わりにホッとした心境が垣間見れました。ローランサンの特徴的な白ベタ塗りの作風はどういう心象の変化、外部の影響があったのか、その点をよりクリアにしたかったです。
なお「スケッチNG」のマークを美術館で初めて見ました。写真はOKなのに、なぜスケッチがダメなのか?疑問に思ったため、看視員の方に聞いてみました。曰く「作品の展示場所によって、スケッチをする行為は他の鑑賞者の妨げになるため」とのことでした。
私は、美術館内でスケッチしている人を今まで見たことがありません。もしかして、過去にアーティゾン美術館で作品をスケッチしている人がいて、他の鑑賞者の邪魔になった際に「スケッチはダメとはどこにも書いてない!」と駄々をこねるトラブルがあったのかな?と邪推しました。
(蛇足)撮影したほぼ全ての写真が左に傾いていて、どこか気持ち悪いです。シャッターを押す時は、片手で横着するのではなく、必ず両手でカメラを構えないとダメだと再認識しました😅
▶︎まとめ
いかがだったでしょうか?単純にローランサンの作品を数多く見ることができたため満足でした。ローランサンの内面性をもう少し深掘りできるキュレーションであれば、満足はさらに上がったと思いました。
▶︎今日の美術館飯
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