展覧会レポ:21_21 DESIGN SIGHT「もじ イメージ Graphic 展」
【約3,500文字、写真約40枚】
六本木の21_21 DESIGN SIGHTで「企画展"もじ イメージ Graphic 展"」を鑑賞しました。その感想を書きます。
結論から言うと、普段当たり前に触れている日本語のデザイン的な面白さ・特殊性に気付くことができる展覧会でした。アートに興味がない人や、外国人にとっても気軽に楽しめるため、幅広い人におすすめです。
▶︎訪問のきっかけ
21_21 DESIGN SIGHT(以下、21_21)には、2015年ぶりに行きました。訪問のきっかけは、1)仕事の関係上、タイポグラフィに若干興味があった、2)他の方のクチコミで面白かったと見た、3)しばらく21_21に行っていなかったためです。
▶︎安藤忠雄による建築
今回の訪問で、改めて安藤忠雄さんの建築に注目しました。直近で、国際子ども図書館に行った際、安藤忠雄さんの建築に惹かれたためです。
21_21の建築の特徴は、三宅一生のコンセプト「一枚の布」から着想を得た長さ54mの鉄板屋根です。私は、21_21の地下への階段から「住吉の長屋」、21_21のほとんどのボリュームが地下に埋まっている造形から「地中美術館」を想起しました。
格好いい建築もさることながら、安藤忠雄さんの「熟したらアカン!」と常に挑戦し続ける建築・姿勢に、改めて感銘を受けました。
▶︎「企画展"もじ イメージ Graphic 展"」感想
この展覧会は、展覧会ディレクターとして3人(室賀清徳、後藤哲也、加藤賢策)が務めています。彼らの語る趣旨は概ね同じでした。日本語の「デザインの可能性」「グラフィックデザインが持ち続ける力」「コミュニケーションの豊な世界」を楽しむことです。
日本語には、ひらがな、カタカナ、漢字、アルファベット、ルビなどがあります。さらに、それを縦や横でも書けるため、世界の中でも特に複雑怪奇な文字デザインです。そのような独特の文から絵文字も発展しました。
普段、当たり前のように接している日本語。改めて指摘されると「ルビ」のデザイン性に注目したことはありませんでした。また、英語には縦書きがないため、デザインの制約も日本語と違うことに気付きました。
1980年にDTPが登場し、デザインは「書く」から「打つ」に変わりました。それに伴って、デザインの技術や幅が広がりました。今は、ワードやパワポでデザインできるため「DTP」という言葉は死語に近いかもしれません。
私は過去、プロカメラマンから「動画よりも静止画撮影の方が難しい」と聞いたことがあります。動画は場面が次々と変わります。一方で、静止画は、パッと見て全体のバランスを判断されること、細かい部分のミスなども気になりやすいためだそうです。
その意味では、ポスターや本の表紙は、特にデザインが重要なことに加え、難易度が高いと思いました。メッセージの主張や、デザインのバランスを取る上で、文字の配置が重要になるためです。
ポスターや表紙は、その1枚のみが商品を手に取るかどうかを左右します。ただインパクトをもたせるだけでなく、そのコンテンツをぎゅっと1枚に凝縮して、分かりやすく伝えないといけません。難易度が高い仕事です。
今まで私は、漫画の表紙は漫画家が描いていると思っていました。しかし、表紙専門のデザイナーがいるそうです。やはり、絵を描くだけでなく、絵と文字の組み合わせは、特別な技術やセンスが必要なようです。
外国人観光客が「大日本タイポ組合」の作品を見て 、英語の教科書にあるように「This is interesting!」と言っていました。この作品は、日本語独特の遊び、ユーモアのセンスを感じる作品です。このような作品を見ると「ただの文字、されど文字」だと改めて感じました。
なお、来場者に外国人の多いことが印象的でした。外国人にとって、日本語で書かれている意味は分からなくとも、日本語のデザインに独特なアート性を感じられる面白い企画だからだと思います。
世の中に溢れている文字。それらをよく見ると、どれも文字自体に何らかのメッセージが付加されています。何気ない日常にデザインが満ち溢れていることを再認識しました。その後、岡本太郎の言葉を思い出しました。
展覧会の最後に、韓国のポスターが展示されていました。ハングルはふにゃふにゃしており、私にとって記号にしか見えません。翻って、海外の人が「もじ イメージ Graphic 展」で感じる印象は「これだ!」と気付きました。
展覧会の全体を通して、日本語をデザインの独自性という側面から検証し「日本語=アート」と認識できて楽しいと感じました。この感覚は「デザインあ展」に通じると思いました。
なお、(私が韓国のポスターを見て感じたように)日本と海外のタイポグラフィを並べた展示があれば、日本語のデザインの特殊性を、相対的に際立たせることができると思いました。普段、日本語ばかり見ていると「日本語は海外の言葉に比べてちょっと変」と感じる瞬間がないですから。
また、入場料1,400円は若干高いと感じました。私が数年前に21_21に訪れた際は1,000円だったためです。物価上昇をヒシヒシと感じます…💰
会場に、タイポグラフィの例として、様々な企業の広告やプロダクトが展示されていました。そこにユニクロもあっても良かったな、と思いました。身近なブランドのため、展覧会の趣旨がクリアに伝わるためです。
▼その他の会場内の写真
▶︎まとめ
いかがだったでしょうか?21_21らしい日本語の特殊性・アート性を分かりやすく、面白く紹介している展覧会だと思いました。アートに興味がない人でも、毎日触れている身近な日本語の意外な側面に気付くことで、アートの面白さを理解できるかもしれません。