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日本を出て、恋をした。



ニュージーランドでの生活は最悪だ。
お店は5時に閉まるし、競争率の低いカスタマサービスは仕事をしない。
メールを送ろうものなら返信に2週間は待つ。
道路が整備されていないのに、余裕でみんな100km出すから、飛石で車はボロボロ。

もっと言うとご飯は美味しくないし、違う言語で生きていくのだって苦労してる。
ホームシックで落ち込み、数日間泣き止めないときだって何度もあった。
「海外に住んでいる」ってキラキラして見えるかもしれないけど、住んでみたらわかる。日本って最高。


それでも縁もゆかりもない土地に、たった一人でいるのは理由がある。



This is exactly why…


そこには何もない、あるのは雄大な空と、生を感じる地面。
そしてそこに立たされた身一つの自分。

頼るものが何もないからこそ、本当に何が大事か見えてくる。

早起きしたときに見る朝焼け、肌を切る風、気づいたときには通り過ぎていて何もなすすべがない流れ星、帰路に着く鳥の群れ、動物の足跡から伝わる彼らの生活、


自然が織りなす音には、調和がある。
時間の流れは私をつかみ、しっとりと進む。


それは何の意味もない、何も生み出さない。この資本主義の世界に言わせたら、黄昏ていないで「ちゃんと生きろ」なんて言われちゃうのかもしれない。

私は小さい頃から黄昏がちだったけれど、それが恥ずかしいことだと思いながら生きてきた。資本主義の世間論が植え付けた固定概念に縛られ続けてきた。


ニュージーランドに来て大自然の中に立つたびに、「抗えないんだ」と納得する。

すごい、とか、綺麗、とか、明日仕事だから早く寝なきゃ、とか、そんな思考が来る前に、私の全身を通る血管が喜んでいる、鼓動が早くなることに、ワクワクしている。
気づいたら泣いていた。


だから、決めた。これを美しいと感じれない世界線なら、何があろうと逃げ出そう、と。
この感覚は何があっても失いたくない。
失えない。

あるとしたら、自然が私を取り込んだときだ。


日本は最高だ。人は優しいし、何もかも本当に便利にできている。
ビジネスのサービスは100%、ご飯も美味しい、電車は時間ぴったり。
動物カフェ、スポッチャ、クラブ、遊びに行き出すと楽しみがありすぎてキリがない。街はコンクリートに覆われ、綺麗に整備されている。田舎でさえ。
外的に、楽しむ要因がありすぎて、飽きない。
ルールに従えさせすれば永遠に楽しめる。


それでも私にはわからなくなってしまう。
日本にいると文字通り「自分を見失う」のだ。
失ったことにさえ気づかなくていいように、世の中ができている。
自分を見つめるよりも、時間を進めなければならない。そんな気持ちに追い立てられたりする。

そんな環境で自分を見つける人がいるのなら、きっととても強い人なんだろう。


ニュージーランドにいると、自分が見つかる…わけではない。笑
それでも、自分に、環境に、嘘をつくことが少なくなる。

そこにあるのは、大自然と自分。何もない、ほったらかしの世界。
自分自身でいさせてくれるのに、自由でいさせてくるのに、
心の奥ぞこを覗かれているような、
嘘をついたら一瞬で見破られてしまうような、そんな感覚。
でも心地いいのだ。


彼らの調和の中に入れたらいいと、いつも思う。




恋に落ちるってどんなの?と将来自分の子供に尋ねられたら、
私は真っ先にこの景色を思い出すだろう。

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