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リアル店舗はEC時代に必要か?という話

いつも採用面談で事業や成長のイメージを話すとかなりの確率で言われることがある。

「事前に想定していた事業や成長の方向性とだいぶ違いましたワラ」

もちろんここでは良い意味の解釈として書いているが、このギャップのおかげで面談では盛り上がることも少なくない一方で、もっと適切に我々の描いている世界観や EC があるのにリアル店舗を扱うビジネスをする理由を知ってもらうことが必要だと痛感してこの記事を書くに至る。大まかには以下のテーマ感。

・簡単に事業の紹介と経緯
・ポップアップストアってなに?
・小売ビジネスの変化
・商業不動産のはなし
・消費者にとってリアル店舗は必要なのか
・自分たちの存在価値は何か?

簡単に事業の紹介と経緯

我々が提供する SHOPCOUNTER はフレキシブルに商業空間を利用したいブランドとスペース管理者を繋ぐマーケットプレイスだ。

事業開始当初(2015年5月)は、ギャラリーや元々レンタルスペース業を営んでいる皆様を中心にパートナーシップを作らせて頂いたわけだが、創業時に立てた仮説の通り(当初の想定より時間かかった...)、最近では空き店舗やショッピングセンターを経営する不動産ディベロッパーから多く声をかけてもらえるようになった。

我々は「ポップアップストア」やテンポラリーな「ショールームストア*1」という手段がもっと一般的になれば小売・流通/不動産セクターがもっと効率的に相互補完しあって、最終的には消費する方々にとっても楽しく便益に溢れた魅力的な世界を作れるはずという仮説にチャレンジしている。

ポップアップストアってなに?

まずはポップアップストアについて知らない方は、どのようなものかを知る必要がある。以下wikiより。

ポップアップストアとは空き店舗などに突然出店し(ポップアップ)、一定期間で突然消えてしまう店舗のこと。イギリス国内では人気の宣伝手法で、最近日本でも増えてきた。ポップアップ・ショップ(Shop)やポップアップ・リテール(Retail)とも呼ばれる。

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分かりやすい例としてはバレンタインが近づいてくると、最寄りのショッピングセンターや駅ビルでチョコレート屋さんが普段よりも多く出店していて、バレンタインが終わると元の売り場に戻っている、そんなシーンは頭に描きやすいはずだ。

さてこの「ポップアップストア」は、つまるところ商業不動産(店舗や商業空間)の流動化だと考えている。そしてなぜこの流動性が効率と便益をもたらすと考えているのか?を少し説明したいと思う。

例えば商業不動産は、通常の賃貸住宅のように2年契約、敷金1礼金1、のようなカジュアルなものではないことが多い。(賃貸住宅ももっとこのハードル下がるといいのにな...)

多額の保証金(家賃の10ヶ月分とか...これだけで資金が長期間寝てしまいつらい)や長い契約期間(5年は借りてくださいね、途中解約は違約金をもらいます...つらい)へのコミットメント、それとは別に内装や什器にコストをかける必要があるとなると、これだけ消費トレンドの移り変わりが早い時代の中で、例えば初期費用 3000 万円用意して ○ 年で回収、のような時間軸は不確実性が高い上に、変更容易性も低く、新興企業や可能性のあるプロジェクトを始めようとしても中々手が出しづらい状況だ。

これまでは借り手と貸し手の需給バランスにおいて(特に!)立地が重要な商業不動産の世界では繁華街のようなエリアだと圧倒的に貸し手優位な状況で、基本的に貸し手の論理で作られている契約内容についてはほとんど変化は起きないものと考えられてきた。少なくとも知りうる限り、これまでに取引方法や条件に根本的な変化はなく、これが流動性が低いという状態だと捉えてる。

しかしここ数年で小売市場に急激な変化が起きており、その波によって商業不動産も変化が起きるのではないか、と言うのが我々の仮説だ。

小売ビジネスの変化

最たる変化は EC の発達だ。
日本の小売市場は約 150 兆円を超えると言われているが、成熟市場且つ一定の先進国である日本においては多少の上下はあれど景気に連動しながらも大きく変動はしない。(人口が大幅に減ったらもちろんその分減るだろうが)

また EC 化率という統計で、2017 年は約 5.79 %というデータが出ている。ここ数年、前年比約 7-10 %程度のペースでオンラインでの購買に置き換わっているわけだが、つまり言い方を変えると全体の市場規模が変わらない前提に立てば EC が成長している分だけ ”店頭売上が落ちている”事になる。

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<引用:https://netshop.impress.co.jp/node/5378>

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<引用:経産省>

小売ビジネスは EC が登場するまではどの程度床面積を確保して、どれだけモノを並べてどれだけ売れるかというビジネスだった。
しかし EC 市場が成長すると、これまで確保した面積に対して事業がどんどん非効率になる(少なくともその場で売上を作る装置として考えている場合)という明らかな構造的欠陥がここに生まれる。

商業不動産のはなし

ではリアル小売店舗が不採算だからといって大家が家賃を極端に下げたり、物件がそのぶん安くなるのか?という視点で不動産セクターをみると、個別具体的かつ、短いタームでの家賃の上下をスルーし、トレンドという捉え方をした場合むしろ主要都市部などの地価はリーマンショック後から多少の前後はあれど上昇を続けている。

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<引用:https://www.asahi-kasei.co.jp/maison/chiebukuro/report/sijou/2017/10/post_1.html>

つまり地価が下がっていないと言うことは家賃が大きく下がっていくはずもなく、不動産オーナーからすると、多額の家賃負担力がある小売事業(飲食業やサービス業に比べて1坪あたりの期待収益が大きい)の会社がともすれば倒産、少なくともオーバーストア状態を解消しなければならない時代において、これまでの不動産商品設計(ハード自体や賃貸条件)を見直さざるおえない事態がすぐそこに訪れているわけだ。

当然ながら賃料が永遠に上がり続ける事はなく減速期もある。減速だけではなく下がる時期もあるだろう。しかしながら EC 化率が減退する事はあるだろうか?少なくとも現在の約5.7%が3%に戻る事は誰しもがないと断言できると思う。賃料の増減はサイクルだが、EC化率は不可逆なのだ。

一方先ほど EC によって店頭売上が減っていると述べたが、逆にまだ全体の約 6 %なのだ。

つまり、約 94 %はまだまだ店頭での取引となる。ECブランドは当然まずはオンライン主体で勝機を見出すところが多いが、消費者の買い方に合わせたチャネル戦略をと考えると、この 94 %の攻略方法を考える必要がある。実際消費者のニーズとして実物を確認したい、サイズを確かめたい、店員に直接相談したいなどリアル店舗の需要がまだまだあるのは明白なのだ。

消費者にとってリアル店舗は必要か

実物を見たい、サイズを確認したい、悩んでいるのでプロに相談したい、そんなニーズはこれまで書いた通りだが、エンゲージメントという観点でリアルな接点を持ったお客様の中には必ずもっとブランドを好きになってくれる人も現れるはずだ。好きな芸能人と会って握手する、そして会う前より好きになる。youtubeやapplemusicで気に入っている楽曲のアーティスト、ライブに行くともっと好きになる。そんな心理に近いかもしれない。

そういった深い関係を作れたお客様は必ずそのブランドにとって経済的にも心理的にも重要なお客様となり、もっと素敵なお付き合いができるはず。フィジカルなコミュニケーションは最も多くの時間的人的コストがかかる一方、最も深くブランドと繋がる機会となり得る。

モノと価値の移動=ブランドと消費側のコミュニケーションの一つと定義すると、なんでも簡単にデジタルコンテンツやECで欲しいものが手に入る現代においてリアルでの体験は最大限にリッチで深いコミュニケーションなのかもしれない。

自分たちの存在価値は何か?

ではリアル店舗をやりたい!となった場合、これまでのような不動産の取引形態は長期的な契約期間のコミットメントと多額の保証金がなければ展開できない。リアル店舗をやりたくてもやれない。なので EC からスタートすると言うブランドも少なくない。

その課題への解決のアプローチが「ポップアップストア」なのだ。

商業空間を利用する際に、最大限フレキシブル且つシンプルにすることで多くのコンセプトやアイディアを現実世界で実現できるようになる。

空き家に宿泊するように、必要な時だけワークスペースを使えるように、多くの旅行体験や働く場所がフレキシビリティによって変革されてきた。

商業もフレキシビリティを獲得して自由になる、そんなタイミングにさしかかっている。10年後に今の小売や流通、それに関わる不動産の姿のままであるはずがない。

そしてこの姿を変えられるのは、旧来の不動産プレーヤーでもインターネッツなプレーヤーでもない。

テクノロジーを使いこなし、顧客がレバレッジできる製品を生み出し、オールディーなプレーヤー達との事業連携を進め、泥臭いオペレーションをエクセレントにしていける。そんなハイブリッドなチームがこの事業には必要だ。

そして我々はそんなハイブリッドなチームを組成し市場や事業の解像度を上げ続けているし、実現できるのは我々に他ならないと確信している。

社会、ユーザー、自社、の三方よしを実現し、インターネットやSNS、個人をエンパワーメントする様々なサービスが普及しつつあるこの世界で、我々は、価値を提供する人々をオンラインだけではなく、物理世界でもっと活躍しやすくする為に、あらゆる商業不動産へのアクセス自体や契約プロセスを容易にし、本来のコアバリューヘと注力できるよう雑務や時間、資本コストを極力下げるサービスやソフトウェアを作っていくつもりだ。

そうする事でこれまで多くの時間や資本が必要な実店舗という世界において、結果的にそれに耐えうるチェーンが多くを締める街並みではなく、様々な新しさがあり、面白さがあり、個性的な価値を提供できる売り手の方々も共存している世界を実現することは、売り手だけではなく買い手のみなさま、つまり一般の消費を行う自分も含めた多くの人々に、楽しくも新鮮な消費のあり方、仮想空間だけでは味わえない、利便性が高く楽しい、豊かなモノやコトの消費体験を提供できるのではないかと考えている。

言うは易く行うは難し、課題も多い領域であるが、着実に且つ大胆に攻めていきたいと思う。

結び

まだまだ書き足りない部分があるが、(例えばECと店頭では売れ筋がめっちゃ違うとか)次回以降では、具体的なポップアップストアのユースケースなど少しづつご紹介しながら折を見て新しい小売トレンドにも触れていきたい。

最後に主題の結論だが、もちろんこれまで書いてきた通り EC 時代にリアル店舗は必要だと考えている。しかしこれまでの位置づけではなく、もっとオンラインメディア的であり、ECベースで得られるデータをふんだんに利用し、顧客の利便性を向上させ、現実世界の得意とする世界観や体験をしっかり伝えられる接点として考えるべきだ。科学と情緒を織り交ぜた、言うなれば「お店2.0」であるべきだと思う。

みなさまは EC 時代のリアル店舗はどうあるべきと考えますか?


# エンジニアリング、ビジネス、まだまだ優秀な方が足りません。

 一緒に変化の余地が多いマーケットを変えてみませんか?

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*1ショールームストアとは、店頭に在庫を置かず、各商品のみを展示し購買はオンラインストアなどへ誘導し、商品や世界観を魅せる事に特化した店舗。ストックスペース等がほぼ不必要で現金等も取り扱わない為、安全且つ効率的な店舗運営を実現する可能性があると言われている。

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