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新たな物語の幕開け~フルオーケストラコンサート「南野陽子 初めてのフィルハーモニー大音楽会」事後レポート
南野陽子さんの、フルオーケストラとのコラボによる初のコンサート「南野陽子 初めてのフィルハーモニー大音楽会」が8月15日に東京オペラシティ、8月28日に京都ロームシアターでそれぞれ開催されました。
私は両日とも参加。約2か月と、公演からだいぶ月日が経過してしまいましたが、コンサートの模様と感想・総括等をまとめ記事にしましたので、公開致します。
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まずは公演当時のコロナ禍の状況について。
全国的に感染者数が増加傾向にあり、ライブ等の開催予定であっても、関係者やアーティスト当人が感染してしまい、公演の中止を余儀なくされてしまうような事態が多くありました。
ナンノさんに関しても、コンサート直前の7月下旬から8月上旬はPRも兼ねた各メディアへの露出が増えており、スケジュールも本当にお忙しく、人との接触機会も増えていたと思います。
そのような中で、ナンノさんがコロナにかからず無事公演が開催されたことは、当たり前のようで当たり前ではないこと。感謝すると共に、ナンノさんのプロ意識の高さと強運を実感しました。
次に、会場について。
東京オペラシティコンサートホールは、新宿から一駅(京王線)の初台駅が最寄り。高速道路の高架下傍に位置していることもあり、周辺は少し無機質な雰囲気があった一方で、いざ中に入ってみると、三角の天井に正面のパイプオルガン...と、都会の喧騒から離れた静かで荘厳な雰囲気のホールでした。
ロームシアター京都は駅からは少し離れているものの、平安神宮や岡崎公園なども隣接しており、伝統と格式ある京都に相応しい雰囲気のホールでした。
※調査した結果、前川國男氏によるモダニズム建築の外観が特徴。開館は1960年と古く、老朽化に伴い2012年にいったん閉鎖されたものの、2016年にリニューアルオープンしたとのこと。
蔦屋書店も隣接していたりと、歴史ある雰囲気と近代感の両方を感じられました。
コンサート当日、ロビーに入った瞬間から祝花の多さに驚きました!
東京公演に関しては、他の芸能関係の方からプライベートで仲が良いというスポーツ関係の方、カンボジアと関係が深い方など、30前後の祝花が寄贈されており、ナンノさんの人脈の広さを感じたと共に、一つ一つ眺めるだけでも時間が経過してしまうように感じられました。
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※お名前は隠してあります。
では、ここからは公演本番中の模様を書かせていただきます。
まず、1曲目は「南野陽子序曲~マイ・ファニー・IVY」
作曲:萩田光雄 編曲:萩森英明
アルバム「GLOBAL」(5thアルバム)に収録されている一曲で、ナンノさんのほとんどの楽曲のアレンジを担当された、萩田光雄先生が編曲に加え作曲も担当された一曲。BOX「萩田光雄の世界」のブックレットに収録されているインタビューで、萩田先生御自身も「ステージ映えする」「派手なアレンジをやらせてもらえて嬉しかった」と自画自賛されていた一曲です。
原曲もイントロから壮大なオーケストラの演奏で幕開けるのが印象に残る一曲で、原曲のインスト版をそのまま生で聴いているような印象を受けました。フルオーケストラのコンサートということを活かした、開幕に相応しい一曲であったでしょう。
2曲目は「吐息でネット。」
作詞:田口俊 作曲:柴矢俊彦 編曲:萩森英明
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「吐息でネット。」は11thシングル。88年春のカネボウ化粧品のCMソングとしても使われ、30万枚の売り上げを記録した、言わずと知れたナンノさんの代表的ヒット曲です。ポップさが全面に出され、リズミカルなサンバ調のアレンジだった原曲とは違った、オーケストラならではの壮大さ(特にサビの部分)とあたたかみが加わったアレンジとなっていました。振付も(オーケストラコンサートということもあってか控え目だったが)往時そのまま、開幕から、変わらない一方で大人の魅力が増した、「永遠のアイドルナンノ」だと実感できる、絶好調なスタートを切った印象です。
※30周年コンサート時は大半の曲が一番とサビのみでしたが、今回披露された曲は大抵がフル尺でした。
続いて、ご挨拶とMC。「フィルハーモニーとは”愛する”を意味する”フィル”と、調和する、という意味の”ハーモニー”が合わさった言葉。演奏は東京はCURTAINCALL交響楽団(東京公演)from Style KYOTO管弦楽団(京都公演)です。緊張してます、引っ込んでいいかなー」とナンノさん。
3曲目は、ナンノさんが出演されたドラマの代表作ともいえる「スケバン刑事」より、「スケバン刑事メドレー」~「さよならのめまい」「悲しみモニュメント」「風のマドリガル」「楽園のDoor」
「さよならのめまい」 作詞:来生えつこ 作曲:来生たかお
「悲しみモニュメント」作詞:来生えつこ 作曲:鈴木キサブロー
「風のマドリガル」作詞:湯川れい子 作曲:井上大輔
「楽園のDoor」作詞:小倉めぐみ 作曲:来生たかお
全編曲:山下康介
※「さよならのめまい」「悲しみモニュメント」「風のマドリガル」は一番のみ、「楽園のDoor」は1番とサビ、といった構成でした。
4曲とも原曲は「戦う孤高の少女」の戦闘旋律を感じさせる、スケバン刑事のサキをそのまま表現したような歌謡曲的アレンジでしたが、オーケストラアレンジにより、自然体のまま年齢を重ねられ大人の女性としての魅力が加わった、「今のナンノ」さんにあう楽曲に生まれ変わったように感じられました。(個人的には、「ラピュタ」を連想してしまうアレンジに感じました。)
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(「風のマドリガル」に関しては、原曲は ♪かきかけの手紙 のサビの前のバイオリンの間奏が印象的で、オーケストラにもぴったりだったと思いますが、省略されてしまっていたのが少しだけ残念)
にしても途中、スケバン刑事メドレーのはずなのに、”電脳雑技集団の女副社長”を漂わせる劇伴が混じっていたような…!?
と思いきや、その後MCで「途中半沢直樹も混じっていて、追う側なのか追われる側なのか分からなくなってしまいました。」とナンノさん(笑)。
総指揮者・山下康介さんと対話する形でMCが続きます。山下さんとナンノさんは今回が初めましてかと思いきや、「90年代後半にナンノさんが出演された、「三毛猫ホームズの黄昏ホテル」「走れイチロー」などの作品で劇伴を担当した(もう!?20数年前のこと。ナンノさんは30少し過ぎで、山下さんは20代半ば)」と山下さん。山下さんにとっても大学を卒業し、音楽家としてデビューされた直後の出来事で、今でも思い入れが強いそうです。
その経緯で、第4曲は「三毛猫ホームズの黄昏ホテル」。
作曲・編曲:山下康介
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プログラムには、オーケストラ単独による演奏曲も多く組み込まれた。
各々真剣そのもので、一体となって音を作り、響き渡らせていくのはプロならではの技であり、素晴らしかった。
原曲は劇中の随所に流れており、どこか優しく落ち着いた雰囲気のある曲だったと思いますが、ピアノとストリングスによる演奏が素晴らしい、オーケストラならではの魅力が引き出された一曲だったと思います。
山下さんと繋がりがあったから・今回ならではの選曲だったと思いますし、良い意味で想像の斜め上を行く選曲でした。
※東京公演では、大林監督の奥さまやお嬢様も来られていたとのこと。
演奏が続いた後、衣装を変えられまたナンノさんがステージに戻ってこられます。
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5曲目は「ひまわり」
作詞: Bob Merrill 作曲:Henry Mancini 訳詞:直村 慶子 編曲:山下康介
「ひまわり/I Girasoli/Sunflower」は1970年公開のイタリア映画で、出演はソフィア・ローレン、マルチェロ・マストロヤンニなど。
原曲は映画の随所で流れていたと思います。
「映画ひまわりが大好きでした。映画での一面のひまわり畑はウクライナで撮影されたと聞いています。ウクライナは戦禍の中にあり、大変な状況にあると思いますが、またあの光景を見られることを願って、歌いたいと思います。」とナンノさん。
※終演後に調べた結果、ウクライナであることは確かであるものの、具体的な場所までは今現在でも明らかではないそうです。(へルソン州か、チェルニチー・ヤール村のどちらかが濃厚)また、ひまわりはウクライナの国花でもあり、今のロシアの軍事抵抗に対する象徴にもなっているそうです。
今回の公演のグッズにも「ひまわり」が取り入れられており、ステージ上にもひまわりの装飾が見られたことから、「ひまわり」は今回の「初めてのフィルハーモニー大音楽会」の象徴でもあったように思います。
ひまわりは夏の風物詩の花。今回の公演のシンボルとして選定されたのは、てっきり夏を代表する花、という点だけだと当初は考えていました。
しかし、先述のMCや選曲理由も踏まえると、「平和に対する、ナンノさんの祈りや願いも込めて、ひまわりを公演のシンボルに選定されたのではないか」と(勝手ながら)解釈しています。
そんな「平和に対する願い」を感じられたと共に、映画「ひまわり」にあったような「大人の恋愛観」を見事に唄っておられました。
6曲目は、「シェルブールの雨傘」。
作詞:ジャック・ドゥミ 作曲:ミッシェル・ルグラン
訳詞:あらかわひろし 音羽たかし 編曲:山下康介
「シェルブールの雨傘/Les Parapluies de Cherbourg」は1964年公開のフランス映画。
原曲は映画の随所で使用されており、切ないながらも情景が連想できるような一曲だったと思います。
少し「パンドラの恋人」(8thシングル)を連想してしまうイントロで、傘を広げ歌唱されていたのが印象的でした。
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初恋の歌であったアイドルナンノの頃とは一味違った、大人の恋心情と女性像を乗せた落ち付きのあるアレンジとなっており、”今”のナンノさんだからこそ成り立つ世界観であったと思います。
映画音楽でも上手くアレンジされナンノさんがカバーされると、独自の「ナンノ・ワールド」に溶け込んでしまうのが不思議です。
7曲目は「メトロ」。
作詞:南野陽子 作曲・編曲:山下康介
総指揮者の山下康介さんが、今回フィルハーモニー大音楽会に合わせて「折角だから、これまでのナンノさんにはないような新曲を作りましょう」といって制作された新曲。(22年秋現在、こちらがナンノさんの最新の曲ということになります)。山下さんと新曲の話になり、ナンノさんは無理難題にアイデアを出された(ナンノさん曰く「大林監督ほどではない」との事 笑笑)ものの、結局頓挫。別れ際、遇にも⁉地下鉄の入り口が見えたことから「メトロで行きましょう!」といった経緯で誕生したそうです。
(そういえば、アイドル時代も ♪混んだ 朝のエスカレーター すべる人波が ほどける地下鉄 と唄った「さよならGirl」(GAUCHE収録)という曲がありましたね。)
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全体的にはどこかミュージカル曲のようなテイストもある作品で、確かに今までのナンノさんには見られなかった楽曲という印象を受けました。一方で、マイナー曲調からはじまり、サビでメジャー曲調に転調する、という構成になっており、「転調」が特徴(楽園のDoor、秋のindicationなど)という面では今までのナンノさんの楽曲に沿った作品であったと思います。MCで言われていた通り暗いところから明るいところへ出るイメージ、トンネルからいつの間にかホームへ出る情景を連想してしまうような一曲でした。改めて、これまでのナンノワールドに沿りつつも、今のナンノさんに合う新しいテイストの曲を提供してくださった山下さん、ありがとうございます。ソニーミュージック様、音源化のほど、よろしくお願いいたしますね(笑)。
8曲目は「大切な人」
作詞:南野陽子 作曲:宗本康兵 編曲:萩森英明
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昨年冬(2021年12月)にリリースされた「Four Seasons NANNO Selection」に収録された新録曲のうちの一曲で、歌詞の「あったかい気持ちになれるほうを選んで」は、お母様がよく言われた言葉を引用されているそうです。
「コロナ禍で、社会や一人ひとりが今以上に不安に包まれていた時、一人でしんどい想いかもしれないけど、貴方のことを想っています、という想いで作った一曲。母は亡くなったけど、形を変えてすぐそばにいてくれる。家族や恩師や友人、大切な人を想いながら聴いて頂ければ。私から皆様へ、そばにいますからね、というメッセージをこめて歌いたいと思います」とナンノさん。
原曲はピアノとストリングスによる生の楽器の音が強調されたワルツで、オーケストラアレンジにも相応しい一曲という印象でした。
原曲ではソロだったストリングスが今回は何重奏にも重なっていた上に、管楽器も加わり、より爽やかであたたかみのあるアレンジになっていたと思います。
9曲目、前半の最後を飾るのは、「モーツァルト:ピアノ協奏曲 第21番 ハ長調 第2楽章 アンダンテ」。
「折角、クラッシックコンサートのホールに来て頂いたのだから、雰囲気を感じていただきたくてリクエストしてきました。私が4歳くらいの幼い時から大好きな一曲で、カーステレオが8トラックだった時代からよくかけていた記憶があります。家族の楽しい時間には一緒に流していた、夏の風景が思い浮かぶ一曲。今年5月、父は亡くなったのですが、母が亡くなった際に父がかけたのがこの曲で、父が亡くなった際には今度は私がこの曲を父に送りました。若いモーツアルトが何を想って作ったのかはわからないけど、南野家にとっては大切な、私にとっては幸せを感じられる一曲です。」とナンノさん。
「コロナ禍がすこし収まり施設から出られれば、大好きなクラシックを、私のコンサートで楽しんでほしいと思っていたんですが……」
「うまくいかないことも、失敗もデコボコもあるかもしれないけど、自分と向き合う姿をみせたい。お手本にならないかもしれませんが、南野陽子という“ある見本”は見せられるのかな」
「人はみな、『生きてこそ』です。死んでしまえば、人々にだんだん思い出されなくなり、残らないと思う。だから私はできることを精一杯やります。’80年代の曲も、いまの私が歌うから、いまのお客さんが聴いてくれる。懐かしんでくれる昔からのファンの方もいれば、『これからどうして生きて行こうか!』って考えてくれる方もいるかもしれませんから」
-WEB女性自身 / 2022年7月8日分より
今年5月にお父様が亡くなられていたことを、7月上旬に告白されたナンノさん。
上述の経緯もあり、特別な想いがこの「フィルハーモニー大音楽会」にはあったそうです。
ご自身の思い入れがあるクラッシックの曲を私達観客に聴いてもらい、幸せになってもらいたい、ご両親に大切な曲を届けたい....そんな想いを感じらました。
ナンノさんを育て、支えて下さったお父様のご冥福を心よりお祈り申し上げます。きっとお父様・お母様にも届いていて、聴いてらっしゃったに違いありません。
そして、ナンノさんは歌われず演奏を一曲全てオーケストラの皆様に委ねており、互いの信頼関係が深かったからこそ、成り立ったのだと思います。
ひとまず前半終了。15分の休憩あり。
後半の幕開け、第10曲は「南野陽子序曲2~話しかけたかった から」
作曲:岸正之 編曲:池田明子
「話しかけたかった」は7thシングルで、清楚で可愛らしいナンノさんの雰囲気にぴったりな一曲、と今もなお語り継がれている一代表曲です。原曲はメジャー調で「デイドリーム・ビリーバー」を連想させるアレンジが印象的でした。
(※「話しかけたかった」について、ナンノさんは「当時は本当に誰にも話しかけられなかった。今は大人になり人と話をするのに苦に感じなくなったので歌うのはハードルが高い」というような発言をされてました。今後、聴ける機会があるのかは何とも言えませんが、あることを願っています。)
ハープで始まり、あたたかなストリングスのアレンジが印象的で、原曲に「♪風が踊る5月」とあるように、花が満開に咲き暖かい日差しが野原を照らすような、「爽やかな春」を連想させるアレンジだったと思います。
※以下は東京公演のみの出来事。京都公演は元々パイプオルガンが設置されていない会場でしたが、ストリングスを強調した上品なイントロにアレンジされていました。
一段落後、二階のパイプオルガンにピアニスト紺野さんの人影が…
何が始まるのだろうか、と思いきや、二階ではパイプオルガンの演奏が始まりました! イントロでのパイプオルガンが印象的だった原曲を忠実に意識、再現したパイプオルガンの演奏です。
その曲とは...
11曲目「秋からも、そばにいて」です。
作詞:小倉めぐみ 作曲:伊藤玉城 編曲:池田明子
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第2部となり、また衣装を着替えられたナンノさんが登場されます。
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「秋からも、そばにいて」は13thシングルで、ナンノさん自身も最も好きなアレンジとして挙げているナンバーです。原曲もパイプオルガンやバイオリンなどが持ち入れられ、バロック音楽調でクラシックと歌謡曲の融合とも言える楽曲に仕上がっており、ナンノさんの品のあるイメージや楽器の生の響きを活かした作りこまれたアレンジでした。オーケストラコンサートを開催するにあたっても、外せない選曲だったことでしょう。原曲と比べシンセサイザーがない分、荘厳な雰囲気は控えめで、優美さに置かれたアレンジだったと思います。ナンノさんのヴォーカルは、当時の歌番組からは上品さや繊細さ、切なさ等、色々と混じったものを感じましたが、すっかり上品で大人らしい、落ち着きのある歌唱だったように感じます。
(原曲は間奏のストリングスの演奏が壮大でしたが、今回はゆったりとした控えめなアレンジになっていました。)
12曲目は「思いのままに」
作詞:平出よしかつ 作曲:亀井登志夫 編曲:山下康介
「思いのままに」は1989年に発売のアルバム「GAUCHE」(7nd)に収録、同年の24時間テレビのテーマソングとして使用された楽曲。同年のコンサート「 思いのままに YOKO MINAMINO SUMMER CONCERT '89」では弾き語りにも挑戦されていました。
翌年90年にも24時間テレビのテーマソングとして起用され、19thシングル「耳をすましてごらん」のカップリングとして、「思いのままに (New Version)」で新アレンジ再録されました。
「New Version」は、イントロから何重奏ものによるストリングスで始まり、終始壮大なアレンジで、「世界の広さ」「地球の大きさ」を楽曲で表現したような、チャリティー色の強いアレンジだった印象です。
フルオーケストラによる生演奏は「New Version」の原曲そのままの再現度で、レコーディングの現場に立ち会っているかのような錯覚に陥りました。
一方、New Versionは壮大なコーラスが印象深かったものの、コーラスは付かなかったので、原曲にあったコーラスがなかったことで大分印象が違って聴こえました。
奥深くメッセージ性の高い歌詞ですが、やさしくあたたかいお人柄が増した”今のナンノさん”により相応しい楽曲に進化したと思います。
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♪思いのままに生きよう かならずそばに私がいるから
/いつでもそばに味方はいるから/あなたの他にあなたはいないの
流されないで生きよう 正直な心で
答えなどない世界と あきらめることなく
13曲目は「明日への虹」
作詞:南野陽子 作曲:井筒節 編曲:山下康介
ナンノさんがカンボジアと交流をされてきたこともある中で、来年日本とカンボジアの友好70周年を迎えることを機に制作された楽曲で、今年2月に開催された日本とカンボジアの交流イベント「絆フェスティバル」で、レコーディング模様や実際にナンノさんがカンボジアを訪ねられた際の映像に曲を載せた、メッセージビデオのような形式で初披露されました。
ナンノさんがカンボジアに尋ねられたのはこれまで2回。1回目は1989年3月の24時間テレビの取材(詳しい模様が同番組内で「子どもたちに病院を! 南野陽子 カンボジア日記」という1時間程のドキュメンタリーとして放送されました。)。MCでは「病院や孤児院を訪ねたものの、何をしていいか分からなかったし何もできなかったと思う」と当時を振り返られたナンノさん。続いて2回目は2013年の「アナザースカイ」。「当時の子供たちも立派な大人になっており、当時歌番組で披露された「涙はどこへいったの」も覚えていて唄ってくれて感動した」とナンノさん。
※以下、在カンボジア大使館のFacebookで公式公開されている動画のリンク。
https://www.facebook.com/JapanEmbassyCambodia/videos/480200256843446/
その後、在カンボジア大使館のFacebookでも掲載、更に今年4月にカンボジアのフン・セン首相が来日された際に上映され、5月にカンボジア現地では授与式も行われました。
“Rainbow For Tomorrow” song handed over to Cambodia-Khmer Times(22年5月31日)
https://www.khmertimeskh.com/501085119/rainbow-for-tomorrow-song-handed-over-to-cambodia/
現在、同曲はフン・セン首相の公式Facebookでも公開され、反響を呼んでいます。
「南野陽子 カンボジア日記」のエンドロールにて、「がんばって応えたい、また行きたい」と応えられていましたが、上記の点を踏まえると「最高の応え」になっているに違いありません。配布プログラムには掲載されていますが、現時点でもそれだけこの「明日への虹」が各所に素晴らしい影響を与えているということだと思います。
東京公演においては、カンボジア大使館の皆様や、10月から上演される舞台「なくなるカタチとなくならないキモチ」の仲間たち、シングルマザーの会など、多様な方々が来られており、「カンボジアのことを想って作った曲だけど、それだけじゃないと思って。自分のことだけじゃなく、互いに思いやりを持って、みんなで交流を持てたら。皆様と、大切な人との絆が深まるきっかけの曲になれればうれしく思います」とナンノさん。
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![画像5](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/89209371/picture_pc_726677836929c9f0e85f5182a791a651.jpg?width=1200)
原曲にあったギターがない分ハープが加わり、ストリングスも何重奏にも重なり、よりあたたかみのあるアレンジになっていたと思います。
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今日の現代社会において、よくSDGs(Sustainable Development Goals)というワードが話題となっていると思いますが、SDGsでは「誰一人取り残されない社会」が目指されています。国境や立場を超えた「絆」の重さを唄った同曲は、そんな現代社会に対するメッセージともいえる曲だと思いますし、南野陽子さんについてあまり知らないような方の元にも届き、多くの方に共感して頂けたら嬉しく思っています。「2番なんかはクメール語に訳して、カンボジアに行って皆で歌えればとも思います」と宣言されたナンノさん。来年、正式な音源化を望むとともに(ソニー様、よろしくお願いいたします(笑))、よりこの「明日への虹」という曲が日本とカンボジアとの相互協力・交流の架け橋となることを願ってやみません。
♪同じ空を見て馳せる 未来に願う
友とともにつくる明日を…
14曲目は「ショパンの前奏曲第7番」
短めの楽曲ですが、こちらもナンノさんによるリクエスト。太田胃散のCMでおなじみであり、「太田胃散の曲」として広くイメージがついてるであろう一曲です。「太田胃散、いい会社なんですよー。GWにラジオ「今日はナンノ日っ!」をやらせてもらったり、本当にお世話になっています。」とナンノさん。
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15曲目は「君の瞳に恋してる-Can't Take My Eyes Off You"」
作詞・作曲:ボブ・クルー ボブ・ゴーディオ
1982年にBoys Town Gang がディスコ調にアレンジし、大ヒットしたナンバーであり、ナンノさんが主演されたドラマ「熱っぽいの。」の最終回でのクライマックスシーンの挿入曲としても使われた実績のある一曲です。
ナンノさん自身も大好きで、APと相談した結果、最終回のラストシーンの挿入曲として使われることが双方一致で決定した、というエピソードが明かされ(34年前のドラマの選曲経緯が今となって明かさせるとは!)、中学・高校時代に神戸のどこを歩いていても流れていたという一曲だったそうです。
※「熱っぽいの。」は88年4月~7月まで全11話放送された、ナンノさん演ずる見習い看護婦・南条円の成長と恋愛模様をコメディタッチに描いたドラマ。共演の相手役は、円の病院の長男の医師・健先生役に何とあの!?マーシーこと田代まさしさんや、次男の康に村上弘明さん、など。
ここで最終回の簡単なあらすじを。
最終的に、神戸の実家に帰る決心をした円。健とは両想いになっていたが、中々互いに気持ちが告白できない中、健は緊急オペが入り、円も結局出発時間となり、東京を去ることになってしまう。しかし康の勧めもあり、東京駅まで円を追いかけに行くことにした健。既に新幹線が出発する時刻となってしまったが健はかろうじて間に合い、健と円は新幹線越しに瞳を見つめ合う。涙目になる円...直接言葉は交わせなくても、互いの気持ちが瞳で通じ合った、というようなラストでした。そのラストシーンで流れたのがこの「君の瞳に恋してる-Can't Take My Eyes Off You"」でした。
他、「熱っぽいの。」の劇中では、色々なアーティストの楽曲が自由に使われていたと思います。今なら著作権の関係で厳しいと思いますが、本当にいい時代でした。映像ソフト化等が難しい理由は、そういった所にもあるんでしょうね。
クラッシックコンサートであるものの会場は盛大な雰囲気に包まれ、客席からは手拍子を振る観客の姿も多くみられました。
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明るく清楚な雰囲気で歌唱されたナンノさん。34年後の円さんから、時を経たプレゼントでもあったのかもしれません。
合間なく続くような形で次の曲へ。
16曲目は「空を見上げて」。
作詞:南野陽子 作曲:萩田光雄 編曲:萩森英明
先述の「大切な人」に続き、「Four Seasons NANNO Selection」に収録された新録曲のうちのもう一曲で、タイトルの通り爽やかでアップテンポな曲調が特徴的な一曲。
原曲にあった打ち込みやエレキギターがない代わりに、ストリングスが強めの、シンフォニックなアレンジとなっていました。
晴れの日も、雨の日も、くもりの日も。楽しみも、イヤなことも、つまらない日も…歌詞にあるように、ナンノさんにも、聞き手である私達にも、これまでいろいろな日々があったのではないでしょうか。色々な日常があっても受け容れ一日一日を歩んできたから、この「フィルハーモニー大音楽会」という機会をお互いに迎えることができたのではないか?そんな印象を受けました。
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(サビでの「ホッホー」が印象的な一曲ですが、コロナ禍が落ち着き声援ができるようになったら、「ホッホー」と叫べる機会が来るはず。それまで「空を見上げて」お互いに歩んでいきたいですよね)
一旦ナンノさんと山下さんはステージを去っていったものの、手拍子のアンコールが会場に響き続け、合間なく(30秒ほど(笑))戻ってこられました。その後、改めてオーケストラメンバーの紹介。
「今日みたいな機会を設けていただけるなんて、続けるって良いことですね 。折角なのでもう一曲歌いたいと思います。私自身のテーマソングになっています。歌詞にあるように、色んなことがあっても、前を向いていきます 自分らしくいきます 凛々しく恋してゆきたいんです。そういった前向きな女性の曲です。」とナンノさん。
17曲目・ラストは「はいからさんが通る」
作詞:小倉めぐみ 作曲:国安わたる 編曲:山下康介
※小倉めぐみさんは、去年惜しくも61歳の若さで亡くなられました。実際に原作「はいからさんが通る」のファンで、原作の紅緒の凛々しい女性像をベースに作詞されたと伺っています。改めて、心よりご冥福をお祈り申し上げます。
ナンノさんがアンコール後の最後の曲に選曲し、歌詞についてMCで上記のようなコメントを述べられていたことに、小倉さんも喜んでいらっしゃるに違いありません。
(また映画「はいからさんが通る」は京都ロケ率が高めの作品だったので、京都公演は「35年後の紅緒」といえる一面もあったかもしれません。)
歌唱時の右手だけを大きく動かし、乙女らしさを表現した振付や、サビ前の"あっかんべー"の変顔表情も特徴的な一曲ですが、それらは今回はなし。原曲はポップでハイカラなアレンジ、25周年の時のRe-Find版はカントリーなアレンジだった印象ですが、金管楽器?によるあたたかみのあるイントロで幕開け、あたかも虹が青空に広がり、花が満開に咲いていくかのようなあたたかいアレンジでした。(「虹の彼方に/over the rainbow」を連想しました。)
曲目が終わり、最後は、客席だけでなくオーケストラの皆様に向けても満面の笑顔で手を振りお辞儀。京都公演では、一旦去ったかと思いきやステージに戻ってこられ、オーケストラの皆様にも客席にも「投げキス」をして去っていかれました!
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そのような形で、約2時間のコンサートは大盛況のうちに終演しました。
上品で礼儀正しく、可愛らしくも美しい…「永遠のアイドルNANNO」「容姿だけでなく、内面も含め全てが本当に"美しい"女性」と感じられました。
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(一ファンとしては、「本当にありがとうございました」と涙ぐみながら笑顔でステージに手を振り幕を閉じた「ファーストコンサート」(86年)を思い出してしまう部分がありました)
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凛とした雰囲気は35年以上経過した現在も変わらない。
全体的に楽器の生の音を活かしたオーケストラ映えする曲のウェイトが高かったとは思いますが、アイドル時代のヒット曲から、映画音楽のカバー、思い入れのあるクラッシック曲、新曲まで...選曲も非常にバラエティに富んでいたと思います。
一曲一曲から、往時と変わらないながらも輝きをさらに増した「可愛らしさと美しさ」、「ストーリー性」「優しさ」「愛」「想い」…色々なものが伝わってきました。
(「もうコンサートをしない」と宣言された31周年舞浜コンサートは本当に暫くない、という雰囲気がありましたが)これで一区切り、暫くコンサートはない、というような雰囲気は全く感じられませんでした。
南野陽子さんの楽曲はすべて、四季の移ろいや等身大の女性の心情・鮮烈な情景などを投影しつつ、恵まれた制作陣により御本人様の上品な雰囲気に合った音作りや世界観づくりが行われ、独自の「ナンノ・ワールド」といえる芸術性の高い作品に仕上がっていたと思います。
これまでも、L.A録音のインストゥルメンタル企画「NANNO SONGLESS」(1990年)や、「音にこだわり、より聞き易く、歌やサウンドを再検討、再構築」というコンセプトで、現代の大人の音楽へとリアレンジした「ReFined-Songs Collection~NANNO 25th Anniversary」(2010年)など、ナンノさんの年齢や時代の変化に合わせて「ナンノ・ワールド」を再構築していく企画が何度か行われてきました。
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![画像8](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/89221709/picture_pc_fc1ca01e9fd7c4f784503ddc2714b101.jpg)
今回のオーケストラコンサートは初めての機会・新しい試みであったものの、「オーケストラという形でも、南野陽子の楽曲/ナンノ・ワールドは成り立つ」ということを証明し、更なる可能性を見事に開花させたコンサートだったといえるでしょう。
勿論、リアレンジされることで、一味違った大人の楽曲に生まれ変わる楽曲は多いと感じているので、「オリジナルにある素晴らしさを大切にしつつも、時代の流れや今のナンノさんに合わせた形で」今後も新しい「南野陽子の楽曲/ナンノ・ワールド」を味わいたい、と願ってやみません。
「初めての」フィルハーモニー大音楽会。歌手として、永遠のアイドルとして、一女性として...今回を機に「南野陽子の新たな物語が始まった」のだと思います。また、今後も物語が続いていくことを楽しみにしています。
企画して頂いた12DO様(木崎徹さん)、原曲の素敵な楽曲を作ってくださった皆様、公演に携われたスタッフの皆様、演奏のオーケストラ(CURTAINCALL交響楽団 from Style KYOTO管弦楽団)の皆様、山下康介さん、そして南野陽子さん…
改めて、素敵なコンサートを本当にありがとうございました!
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爽やかな晴れの日だった。
この青空のように、今後とも素敵な「物語」が明るく果てしなく続いていきますように…。
最後までお読みいただきありがとうございました。
#南野陽子 #80年代アイドル #昭和アイドル #昭和歌謡 #オーケストラ #フルオーケストラコンサート #nanno