院生実習生くんの憂鬱
教育実習中の学生の皆さん、実習期間もそろそろ折り返し地点なのかしら。
4年制大学の教育実習は、一般的に3年生で行われることが多いのだが、
自分は、3年の時にカナダ留学をしていたので、4年生の時に教育実習をした。
実習期間中に、大学院の試験があったり、母親の1周忌があったりと、そりゃもうキツかったけれど、今はどうなんだろうな。
今年は、英語の学部生の実習生を担当しているが、他教科に大学院生の実習生が来ている。
院生の実習生って、今までお目にかかったことはなかったので、珍しさもあり
話してみたいなあとは思っていた。
教科も違うので、あまり接点がなかったけれど、ひょんなことから彼と話す機会があった。
その実習生は、4年制大学を卒業して、大学院に進学、そこで教員免許取得のために教育実習に来ているのだそう。
学部生と違って、色々と思うところがあるようで、話していてとても面白かったのだけれど、彼が一番悩んでいるのは、
「大学院を卒業して、このまま教員になってもいいものだろうか?」ということだった。
以前の自分であれば、教育実習の最初、
学生に「あなたは教員になる気はありますか?」と聞いていたのだが、
その学生と話していて それもまたどうなんだろう?と思ってしまった。
4年間大学でがっつり勉強して、大学院に行って、教員になっても、その分のリターンがあるかといえば、無いに等しい。
教員だけではなく、普通の就職でも、大学院卒というのは、アドバンテージになるどころか、デメリットになりかねないのが、今の世の中。
さらに、教員不足から、「教員免許がなくても、教員できます」などどいう暴挙に出た自治体もあるほどだ。
教員免許があれば、なんとか食べていける時代に、自分は教員になった。
その後、免許更新なんていう制度が蔓延り、教員免許を失効してしまった免許持ちさんたちが、大量に発生したのだ。
免許更新の最中にも、「教員は、大学院卒」(要するに6年間課程)にするべき、なんて話もあったりしたが、
超人手不足の今となっては、大学生にまで教員の仕事をさせようとしている。
私たちの職場も、職員構成が歪になり、正規職員よりも、再任用、非常勤、支援員などの立場の方が多くなっている。正規職員の休職や退職もあり、補充されないまま残っている正規職員が仕事を分担しているのが現状だ。
こんな労働環境に、誰が率先して就職したいと思うだろうか。
公立学校の教員になるのであれば、中学校よりも高校の先生になった方がいいんじゃないかとアドバイスしたけれど、
どちらにしても、30歳までに、そのまま続けるかどうかを決めないといけないよね、という結論に達した。
その学生は、話しぶりからもかなりクレバーな印象で、色々と見聞きした上で、卒業後の進路を考えていると打ち明けてくれた。
何年か前なら、教育実習に来たのなら、先生になって欲しいと自分も思っていたけれど、最近はそうとは思えない。
院生くんの、20代半ばが見えてきて、勉強や研究も好きで大学院まで行ったけど、教員くらいしかなるものが無いし、という気持ちが私にはとても良くわかる。
「モヤモヤするよねえ。」
「ですよねえ。」
そんなボヤキを職員室で聞かれてみなさい?
アンチがどっと増えるよ。
だから、ここだけの話ね。
ただでさえ、
「今時の実習生は、定時で帰るのね。」なんて言われているのに。
自分の世代では、実習生はこうだった、ああだった、と言う先輩が
今のブラックな労働環境を作っているわけで、そこから変わらなきゃいけないはずだ。
だから、優秀な学生であればあるほど、教職を敬遠するようになってしまった。
教育実習に来るだけでも、あなたには勇気があると思う。
そこで体験したことが、彼ら学生の背を押す力になるのか、
見切りをつけられる決定打となるのか。
それは、彼ら自身が決めることではあるけれど、
どの選択をしたとしても、そこに正解はないと思う。
でも、一つ言えることは、
「先生になることだけが、生きる道だとは思わないでほしい。」と言うことだ。
教育実習で感じたことを、あなた自身が判断していいのだということ。
実習をした=教員になるべき、と決められるものでもないし、
冷静に判断し、ならない選択があっても良いと私は思うのだ。
もし、あなたが選んだ教職の世界で、上手くいかなくなったとしても、
また違う道で、あなたが輝ける場があることを知っていて欲しい。
命あっての、仕事だからね。