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京都で開催された美術作家のアトリエツアーに 都内から参加した話
前回の記事でご紹介の通り、3泊4日の日程で、お仕事と取材をかね、奈良と京都へ出かけてきました。
念願の!ARTISTS' FAIR KYOTOに伺ってきたのですー!!!
え、それなに?って方、こちらの記事をお目通しいただけると嬉しいです。
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サテライト会場での展示やイベントなど、2日半にわたってあれこれ本当に楽しかったです。もうすでに、来年も現地へ行きたい、と思っています。
ということで今日は、同時開催されていたイベントの一つ、「OPEN ARTIST'S STUDIOS 2023」に参加して、とっても楽しかった話をご紹介させてください。
ちなみに、こんなイベントにも参加しまして、本当に行ってよかった、と、心の底から思っています。
(終了から1時間後には新幹線に乗車。一気に現実へ引き戻されましたw)
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そもそも「OPEN ARTIST'S STUDIOS 2023」ってなに?
京都を活動の拠点とするアーティスト達は、常日頃から自分の作品に適した創作の場を探し求めています。そして、自らの手でその場を開拓することで、自身の作品制作に適した環境を獲得しています。
それぞれの制作の現場にはそのアーティストの創造の痕跡と思考の澱のようなものが積み重なり、作品とはまた違った魅力を放っています。
本企画ではそのようなアーティストの創作の裏側にスポットを当てて、普段は開放されることのないアーティストの領域を限定公開いたします。
つまり、普段は入れない、さまざまなアート作品を作っている現場、アトリエやスタジオへお邪魔できるという、嬉しすぎる企画です。
参加されたのは、京都市内にある5つのスタジオ。
4日間の開催期間中、誰もが自由に訪問できました。
1、Oharano Studio(京都市西京区)
2、A.S.K. – Atelier Share Kyoto+ Alt Space POST(京都市右京区)
3、山ノ外スタジオ(京都市右京区)
4、ほんわか工房(京都市西京区)
5、shu(京都市山科区)
ただこの5つのスタジオ、地図でみると、こんな感じで点在しています。
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わたしのような土地勘のない個人が、公共交通機関を使って巡るのは、なかなか大変・・・
と思ったら!なんと5つのスタジオ全てをバスで巡る、半日がかりの探検ツアーが企画されたのです✨
バスで連れて行ってもらえるのは、渡りに船な上に、なんと参加費 無料。
ありがたすぎました、本当に。
ご参考までに、募集要項とツアーの詳細はこんな内容でした。
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これまでわたしは、美術作家の方にインタビュー取材させてもらう機会が度々あったものの、伺う先は個展を開催中のギャラリーやミュージアムだったり、オンラインってことも。
アトリエやスタジオを見せていただけるのって、いつものこと、ではないので、今回のイベントを知った時は、絶対に参加したい!と即決で申し込んだのでした。
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ちなみに、このイベントを企画した「京都アートラウンジ」を主催しているのは、ARTISTS’ FAIR KYOTO 実行委員会と京都府。素敵すぎる。
2007年度(平成29年度)から、若手アーティストの活動支援と、彼らの文化芸術活動への支援に関心を持つ企業経営者らとのマッチングを目指し、さまざまなイベントなどを開催し続けていらっしゃいます。
そして今回のスタジオ探検バスツアーは、kumagusuku主宰で美術家の矢津 吉隆さんと山田毅さんによるアーティストユニット 副産物産展がプログラムディレクターとして企画運営していました。
ということでここからは、探検ツアー当日の様子を、わたしが撮影した画像と共に、ご紹介します。
ちなみにわたしが参加したのは、イベント初日。定員15名での回でした。
1つのスタジオあたりの滞在時間は1時間弱くらいで、基本的に自由行動。
移動時間はゆるゆると、矢津さんと山口さんがこれから訪問するスタジオについて紹介トークを展開してくれつつ、各自で休憩タイムという感じでした。
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①Oharano Studio
京都駅八条口を出発して40分くらい。
最初に到着したのは、田畑が広がるのどかな場所に建つ、大きな古い一軒家のスタジオ Oharano Studioさん。
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京都・大原野を拠点に自然豊かな山や田畑に囲まれながら、 日々の制作にあたるアートスタジオと芸術作品を展示する古民家ギャラリーが併設するのどかな時間が流れる空間です。
住所:京都市西京区南春日町544-26
アーティスト:
Bae Sangsun(絵画、現代美術)、Michael Whittle(立体・現代美術)、
松﨑 陸(藍染家)、加藤 唯(コラグラフ版画、モノグラフ染め)
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一歩入って、さっそく感激してしまいました。
伝統的な和の建築の室内。
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見事なまでの欄間や天井。
ここが空き家だったなんて・・・!相当なまでに立派なお宅なのに。
お庭と縁側があって、日当たりも最高です。
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このアトリエで、お話しして特に気になった作家の方を。
まずは加藤 唯さん。わたしは、この傘のデザインに魅了されました。
“SUSTO” のお名前で展開されてらっしゃるそう。
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素敵なデザインの数々は、こちらのオンラインショップやInstagramでぜひ
(またぜひ松屋銀座で開催されている傘の催事にも出てほしいなぁ)
また、こちらのような立体作品も手掛けてらっしゃいます。
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作家の唯さんは、京都のご出身。
京都精華大学でグラフィックデザインを学ばれていく中で、コラージュとリトグラフを組合わせた版画手法コラグラフに出会ったそう。
ちなみにお祖父様は、なんとアロハシャツのデザイナー。クリエイティブな感性が、見事に受け継がれてらっしゃいますね。
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もうお一人。松﨑 陸さん
なんとニューヨーク!で藍染めに出会って作家になった、という方です。
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藍染めって、もちろん存在は知っていましたが、実際に手掛けている作家の方にお話を聞いたのは初めて。とーっても興味深かったです。
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乾燥させた藍の葉に水をかけて発酵させると、蒅という、藍染めの染料に変身します。ここに布を浸して染めていくんだそう。
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そして、藍の調子は毎日変わるんだとか。
壁には試し染めしたハギレが並んでいました。
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松﨑さんから聞いて、へー!!!ってなったのですが、植物を使って衣服を染めるって、とても理にかなっているんです。
藍染めの品々って、男性が身につけるもの・色にあたるんですが、実は消臭効果や、アトピーなどの肌トラブルをお持ちの方にもいいんだそう。
ちなみに紅花は、身体を温める作用があって、女性が身につけるもの・色にぴったり、なんだとか。へー!なるほどなぁ。
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そもそも”薬を服用する”って言い回しの”服”も、衣服に由来しているくらい、肌に直にふれる衣服って、大切な存在で。
今でもそうですよね。わたしもインナーは天然繊維が最優先です。改めて植物で染めているお洋服にも興味がわきました。
かつ、染料そのものも、とても大切で、人間の役に立っていたなんて!
こんな効果効能があるって、昔の人々は、なぜ知っていたのでしょうか。本当に、不思議でなりません。
そして、いろんなものと引き換えに、何でもコンビニエンスで便利にして、経済合理性を優先してきてしまった現代人、都合良すぎ&弱すぎる。
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②A.S.K.– Atelier ShareKyoto+Alt Space POST(ASK)
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阪急西京極駅から徒歩10分にある3階建ての友禅染工場を改装、2010年に開設したシェアスタジオです。現在スタジオには、絵画、彫刻、版画、写真、デザイン、染織など、学歴や年齢、国籍も様々なアーティストが13名所属しています。OAS2023の開催日までに新規メンバーが数名増える予定です。
住所:京都市右京区西院西田町12YAEMONビル
アーティスト:
濱野 裕理(絵画)、池上 恵一(現代美術)、伊藤 学美(版画)、来田 広大(絵画、現代美術)、蔵田 和枝(染織、アクセサリー)、松本 誠史(彫刻)、中屋敷 智生(絵画)、大前 春菜(彫刻)、シュヴァーブ トム(写真)、シュヴァーボヴァ さおり(写真)、鳥居 結人(日本画)、山本 直樹(インスタレーション、ドローイング)、王木 易(版画)
次に訪れたのは、5つのスタジオの中で最も作家の人数が多いスタジオ。3階建ては大きい!広い!
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そして、各作家の方の制作スペースが、整然と振り分けられていたのが印象的でした。
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ここでわたしが気になった作家の方は・・・
まず、1階で銅版画を制作されている、伊藤 学美さん。
非常に残念ながら、この日はお目にかかれなかったのですが、スペースの雰囲気や、置いてある品々に、もう完璧に心射抜かれていました。素敵。
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セラミックの作品、とーっても良かったです、欲しかったなぁ。。。
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いつか必ず、展覧会に伺いたいです!!! そして作品もほしい・・・
3階で制作されていた、彫刻家の大前 春菜さん。
作品の佇まいと、そこから醸し出される空間全体の雰囲気が、素敵でした。
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ちなみに・・・作品を搬出入する際は、とっても急な階段か、窓を開けて吊るして、だそう。なかなかの重労働。
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そして、2階の、池上恵一さん。ご本人不在でしたが、素敵でした。
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とてもエッジが利いていた、山本直樹さんのインスタレーション。
ご本人から丁寧に説明を伺えたのも非常にありがたかったです。
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いかんせん、衝撃的でセンセーショナルすぎる事件だったゆえ、か、テーマとして表現している作品に出会ったのは、これが初めてでした。
わたし自身、こうしてテーマにすることって、おそらく避けて通ってはいけない大事なことなのでは、と考えますし、できれば広くいろんな方に見てもらい、考えるきっかけにしてほしいな、とも感じました。
王木 易さんの版画作品も素敵でした。(ご本人が不在だったのが残念)
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そして、染織家でアクセサリーも手掛けてらっしゃる、蔵田 和枝さんも。
わずかな時間でしたが、作品の話から派生して、MOMAKで開催中のリュイユ展のお話しもできて嬉しかったです。
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③山ノ外スタジオ
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2019年太秦にオープンしたスタジオで、4名の作家が所属しています。中庭や縁側など民家ならではのつくりと、2階建ての倉庫を備えています。2022年春に、倉庫2階を展示スペースとして改装し「山ノ外スタジオギャラリー」をオープンしました。オープンスタジオに併せて、所属作家企画による展覧会を開催します。
住所:京都市右京区太秦辻ノ内町15-9
アーティスト:
大谷 史乃(染織、インスタレーション)、櫛田 文(彫刻、インスタレーション)、松井 沙都子(現代美術、インスタレーション)、吉田 奈々(染織、現代美術)
3件目は、女性作家4名のスタジオ。
皆さんの作品、どれも好きでしたし、こちらがまた!とってもいい味のある一軒家で、素敵でした✨
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室内には、あちらこちらに柄の入ったガラス!!!
古いお宅である証拠です。かわいい、ほんとに。
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SNSなどが発見できた方だけですが、リンクを貼っておきます、ぜひ。
④ほんわか工房
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ほんわかとみんなが和気あいあいとしているアットホームなスタジオです。
住所:京都市西京区嵐山風呂ノ橋町17-8
アーティスト:
東 慎也(絵画)、熊谷 卓哉(美術家)、椿野 成身(絵画)、戸田 樹(立体・現代美術)、米村 優人(美術家)
うって変わってこちらは、男性作家だけのスタジオ。
そして、全くもって、ほんわかしてませんでしたw。(小学校の目の前ってところが、辛うじて?)
こちらで、お話しを伺って気になったのが、戸田 樹さん。
せまい空間で、なかなか興味深い実験的な立体造形を構想したり、制作したりしている方。
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そして、3Dプリンタで出力したバイオレンスなコアラが、妙にわたしのツボにはまってしまった、熊谷 卓哉さん。
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こちらに伺って改めて、ほんとうにいろんな表現や作品があるんだなぁと思いました。
⑤shu
あっという間に夕暮れ。最後のスタジオへ向かいます。
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ぱっと見、普通の一軒家みたいですが、がらんとした天井高の空間が広がっていました!!!
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2020年のコロナ禍から始まったスタジオ、shu(しゅう)は、2022年の秋に旧スタジオから山科地区の大型スタジオへと移動しました。
少しずつ壁面の設計・施工などに取り掛かり、ホワイトキューブのような可動式の空間が出来上がりました。移動に伴ってメンバーの入れ替えもあり、今回が移動後初めてのオープンスタジオとなります。
住所:京都市山科区東野片下り町85番地5
アーティスト:
岡田 佑里奈(絵画)、松岡 柚歩(絵画)、大澤 巴瑠(絵画)、岡本 ビク(絵画)
実は半年ほど前、松岡柚歩さんへインタビュー取材させていただく機会があって、こちらに移る前のスタジオにお伺いしたことがあったんです。
その際、近々新しいアトリエを、と話したらしたので、ついに!!!と嬉しくなりました。
また、取材の際に旧スタジオで作品を観ていた岡田さんにもお目にかかれました✨
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こちらで、わたしがとーっても気になったのが、岡本 ビクさん。
なんとも美しい油彩画・・・
グレーズという技法で描いている、と、とても丁寧に、技法や制作についてお話ししてくださいました。
その上なんと!その場で実際に制作する様子をみせてくださったんです!!!
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このアトリエに移ってきてから、描き始めたというグレーズの作品。
本当に美しくて、なんともいえない魅力があって、素晴らしかったです。
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まとめ
この一言に尽きます。
参加してみて、本当に良かった。とても楽しかったです。
ご一緒した方々もいろんな方がいらしていて、お話しできて楽しかったし、もし来年もまた企画・開催してくださるのなら、ぜひぜひ参加したいー!!!と思いました。
わたしは普段、都内で暮らしていますが、同じような美術作家のスタジオって、結構あるのかなぁ。わたしが知らないだけで、都内に点在しているのでしょうか。
いや、でも一方で、京都ならでは、かもしれません。
こんなにも若手の作家に、作家を続けていくためのチャンスがあるって、いいなぁ、と、と純粋にうらやましくなっていました。
そして、都内版のスタジオツアーがもしあったら、ぜひ参加したいな、とも思いました。(どうにかして企画できたりしないかな・・・なんてw)
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