観てきた!「ハマスホイとデンマーク絵画」展 at 東京都美術館
静寂が心地よい。何もないところが清々しい。ただ風景を眺めているだけでなんか落ち着く。年を重ねてきたからなのか、ここ最近そんな風に思うことが増えました。
デンマーク絵画、そしてハマスホイの作品は、年々、素敵だなぁと思う度が増している気がします。今回もしみじみかみしめながら会場を巡ってきました。
場所:東京都美術館(東京・上野)
会期:2020年1月21日(火)~3月26日(木)
時間:9:30~17:30 ※入室は閉室の30分前まで
(金曜日、2月19日(水)、3月18日(水)は20時まで)
休館:月曜日、2月25日(火)
巡回:山口県立美術館 2020年4月7日(火)〜6月7日(日)
◎観に行こうと思ったきっかけ
2008年、国立西洋美術館での日本初展覧会で大好きな作家になったハマスホイさん。フライヤーで今回の開催を知ったときから、本当に本当に、首を長ーくして待っていました。
またデンマーク絵画も、西洋美術館で2017年に開催された「シャセリオ―展」の流れでたまたま足を運んだ「スケ―エン デンマークの芸術家村」展がとても好きな雰囲気だったので、今回、それらを網羅する形で楽しめることも嬉しかったです。
◎どんな展覧会?音声ガイドは?
19世紀のデンマーク絵画全体の流れを知ることができる展覧会で、展示作品数は全部で86点。4章構成で、最後の第4章、36点すべてがハマスホイさんの作品です。ハマスホイさんは1864年生まれで、彼が師事した作家や、友人だった作家の作品、自宅で所有していた作品なども展示されています。
わたしが思う、ハマスホイ、そしてデンマーク絵画の魅力は、静けさと、色合い、でしょうか。光の違いなのかなぁ。少しだけ淋しげなところも好きで、ずっと眺めていられます。
この雰囲気にピッタリだと思ったのが、音声ガイド(¥560)。なんと宮沢りえさんがお話ししています。そこまで混雑していなければ解説文は読みやすかったですが、ガイドの内容が充実していたので、レンタルされることをおすすめします。
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デンマーク絵画のはじまりは、1754年。フランスの芸術教育を元にした、王立芸術アカデミーが、コペンハーゲンに設立されました。当時はいつも外国から芸術家を招いていたので、自国出身の芸術家を育てよう!というのが目的だったそう。
芸術家の卵の育成と同時に、デンマーク独自の芸術文化も育っていき、1800年頃から”デンマーク絵画の黄金期”と呼ばれる時代が始まります。特に1820~1850年の約30年間は、かつてないほど多くの芸術家が登場しました。
1870年代のフランス印象派の盛り上がりの中、古き良きデンマークの暮らしや、人の手が入っていない自然が残る、デンマーク最北端の漁師町・スケ―インにヨーロッパ各国から作家たちが集まるブーム(スケ―イン派の登場)が起きたり、伝統的な芸術教育から新しい表現を模索した若い作家たちの動きがあったり。
そして、それまでにない独自のグレートーンの絵画を描いて、デビュー作から国内外で話題となったハマスホイさんの登場と活躍へとつながっていきます。
◎そもそもハマスホイさんってどんな人?
ヴィルヘルム・ハマスホイ(1864-1916)さんは、デンマークの首都であり最大の都市でもある、コペンハーゲンで生まれ、生涯コペンハーゲンで暮らした人です。
幼い頃から絵の才能があり、8歳でデッサンを学び始めます。王立芸術アカデミーに入学して伝統に根ざした芸術教育を受けつつ、ダブルスクールして画塾「芸術家たちの自由研究学校」に通います。ここで、スケ―イン派の画家だった、ピーター・スィヴェリーン・クロイアさんに師事し、外国の新しい芸術にも触れることになりました。また、17世紀頃のオランダ絵画、フェルメールの時代の作品にも影響を受けていたそうです。(ここから”北欧のフェルメール”のコピーが付いたんだと思われます・・)
27歳の時、画家仲間の妹で、のちに多くの作品でモデルとなった女性、イーダさんと結婚します。
新婚旅行先のパリに半年ほど滞在したり、その5年後にはロンドンに半年以上滞在したり。夏は国内各地の避暑地で過ごし、イタリアとロンドンには生涯でそれぞれ3回訪問したそう。旅を愛した人生だったようですね。
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ハマスホイさんがどんな人だったか。
会場内の展示解説には、いろんなエピソードが書かれていました。
◆性格は物静かで繊細。作品からもなんとなーく伝わってきますね。
◆深くなじんだ対象を描くことを好んだそうで、「注文で知らない人の肖像画を描かねばならない、というのは好きではない。描くにはモデルのことをよく知る必要がある」なんてコメントも。
◆使っていたパレットには、3つの色調の異なるグレーと白しかなかった、とも。「絵というものは色が少なければ少ないほど、色彩的な意味において最高の効果を持つのではないか」ってコメントは秀逸です・・・
◆古いものが好きで、自宅のインテリアは19世紀の現代のデザインではなく、18世紀後半〜19世期前半と、ちょっと昔の家具が中心。
◆19世期前半の作品を中心の古い本もコレクションしていて、アンデルセンや森鴎外の本も所有。
◆誰もいない室内画を初めて描いたのは、18歳頃と言われていて、晩年にはこんなコメントも残していました。
「私はかねてより古い部屋には、例えそこに誰もいなかったとしても、独特の美しさがあると思っています。あるいは、まさに誰もいないときこそそれは美しいのかもしれません。」
◎ハマスホイさんの”先生”と、尊敬した画家のこと
【ピーター・スィヴェリーン・クロイア(1851-1909)】
ノルウェー出身で、スケ―イン派の代表的な画家です。19歳で王立芸術アカデミーを卒業後、オランダやフランスで研鑽を積んで、伝統的な絵画と印象派などの最先端の絵画の両方を吸収し、その作品は世界的に評価されました。デンマークに帰国後、各国を飛び回りながら、画塾「芸術家たちの自由研究学校」で先生をしていたのです。
クロイアさんはハマスホイさんについて、こんな言葉を残しています。
「私の教え子に極めて奇妙な絵を描く者がいる。私には彼が理解できないが、優れた画家になるだろうから、彼を感化しないようにしている」
これは、ハマスホイさんが初めてコンクールに作品を出品し、賛否両論を巻き起こした21歳頃のことです。クロイアさんは当時34歳頃でしょうか。
作風は全く異なる二人ですが、ハマスホイさんはクロイアさんをとても尊敬していたそう。とても良い出会いであり、大いに刺激を受けたことでしょう。やっぱり人との出会いって大事なんですね。
わたしはクロイアさんの作品も好きで、2017年の展覧会でポストカードを何枚も購入していました。当時観た作品たちを、今回再び目の前で鑑賞できて、やっぱり素敵だなあとしみじみ。本当に嬉しかったです。第2章のスペースでぜひご覧になってみてください。
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【クレステン・クプゲ(1810-1848)】
コペンハーゲン生まれで、デンマーク風景画の発展に大きく貢献した、黄金期で最も優れた画家の一人です。会場でも第1章のスペースで、多くの作品が鑑賞できます。
50歳以上年上だったクプゲさんのことを、ハマスホイさんは同じデンマーク画家として最も尊敬していて、晩年、彼の作品もコレクションしていたそう。
また、イギリスで活躍した画家・ジェームズ・アボット・マクニール・ホイッスラー(1834-1903)さんのことも敬愛していたそうです。
確かに作品の雰囲気に通じるものがあるなぁと思いました。
◎公式グッズが素敵すぎるんです!!!
いかにデンマーク絵画とハマスホイさんが素敵か、ここまで思わずあれこれ書き綴ってきてしまいましたが・・・・
そうなんです、展示作品だけでなく、公式グッズがとっても素敵なんです!
ただ、グッズについてもかなり想いがありすぎて、書いていたらついつい長くなってしまったため、別記事にしました。
明日に続きます。