見出し画像

「ドクターX」は、心身ボロボロな私の栄養剤だった

「ドクターX」は、家事、育児、仕事を上手く回せず、心身ボロボロだった私にとって、栄養剤のようなドラマだった。

出会いは、2014年の8月か9月だったと思う。その年の4月に育休から復帰した私は、寝不足と疲れから、しょっちゅう体調を崩していた。

ちょうどそのときも、風邪が長引いて咳ぜんそくを発症し、呼吸困難に陥るほどのひどい咳が続いて会社を休んでいた。昼間、ぼーっとテレビを観ていて始まったのが、「ドクターX」の再放送だった。

組織に属さず、自分の腕一本で勝負する、フリーランスの外科医・大門未知子が主人公。

毎回お決まりのパターンがあって、手術が難しい疾病を抱えた患者に、誰もが無理だと匙を投げる。さらに勤務医たちは、病院内の派閥争いとか、上の指示がどうとか、治療以外の事情に忖度ばかりして動こうとしない。

しかし、大門未知子は、そういうの一切無視して、ただ目の前の患者を救うために、どんなに難しい手術でもやってのけるのだ。決めゼリフは、「私、失敗しないので」

お決まりのパターンに決め台詞があって「水戸黄門」みたい。結末はだいたい予想できるんだけど、その安心感がいい。権力に屈することなく、わが道を行く姿が爽快で、観終わったときには、気分がスッキリしていた。

うわぁ〜なんなんだ、このドラマ。面白すぎる!配信サイトで過去分を一気見した。当時、余裕がなくてドラマをほぼ観ていなかったが、「ドクターX」だけは欠かさず観るようになった。

体力も気力も限界で、鬱々とした気持ちを抱えていた日々。上司に「いたしません!」とは言えないけど、未知子のようにハイヒールで颯爽と歩けないけど、気持ちだけは未知子になって、胸を張って会社の廊下を歩いてみたりした。

一番しんどかった時期に私を支えてくれた「ドクターX」が、映画で完結を迎える。これは見届けなくては!

そして、映画公開前に、このシリーズに欠かせない存在だった西田敏行さんが亡くなったことも、劇場へ足を運んだ大きな理由だった。

公開して最初の週末ということもあり、ほぼ満席。20代のカップルから70代以上と思われるご夫婦まで、年齢層が幅広かった。さすが12年続いた人気ドラマだな〜。

劇場版でもお馴染みのメンバーが登場して、いつもの、わいわい、ガチャガチャがあって。シリーズものは、このファミリー感がいいんだよね。最初は敵対していたはずの外科医3人衆、海老名、加地、原も、すっかり未知子の理解者であり、応援団になっている。

今回、未知子は、過去最大の難局に直面する。そこで彼女は、究極の選択をするのだ。いくら目の前の患者を救うためとはいえ、そこまでするのか、と誰もが驚いた。止めようとした。でも彼女は突き進む。その理由は、「晶さんだったら、絶対にこうするから」

師匠の思考を自分にインストールする、それが師弟関係ってことなのか。役を離れても、米倉涼子さんと岸辺一徳さんとの間には、師弟関係のような深い絆があると記事で読んだことがある。だからなのか、胸に迫るものがあった。

物語の後半はこれまでになく重苦しい展開だけど、最後には加地先生が笑わせてくれるし(場内が一番沸いた)、希望が持てるラストになっているのが救いだった。やっぱり「ドクターX」を観た後は、元気になりたいから。

今は、「ドクターX」を観始めた頃より、心にも時間にも余裕があるし、「ドクターX」を栄養に自分を奮い立たせなきゃって状況ではなくなった。でも、心の隅っこに、大門未知子を住まわせておきたいなと思う。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集