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映画『ファーストキス 1ST KISS』を観たら、早く家に帰りたくなった
結婚しても、恋愛中のカップルのように、いつまでもときめきを忘れずにいたい。独身時代の私は、そう思っていた。
しかし、私の一目惚れから始まった夫との結婚が、もうすぐ丸14年になる今、恋愛感情があるかと聞かれたら、悲しいかな、「ある」と即答できない。
そんな私が、映画「ファーストキス 1ST KISS」を観たら、夫と出会った頃のときめきを思い出し、ありふれた日常がどれほど幸せかに気づいた。
映画のあらすじをざっくり言うと、事故で夫を亡くした妻が、過去にタイムトラベルして未来を変えようとする話だ。
そこまでして夫を助けようとするのは、仲良し夫婦だからだと、予告を観て勝手に想像していたが、実は離婚寸前の夫婦だった。この冷え切った関係から始まっているところが、後になって効いてくる。
松たか子さんと松村北斗さんが、心の動きを細やかに表現していて、観ているこちら側も、胸が躍ったり、苦しくなったり、熱くなったり、何度も心を揺さぶられた。
たとえば、15年前にタイムスリップしたカンナが、駈(かける)と出会ってひとときを過ごし、現在に戻ってきた場面。ベッドに倒れ込んだカンナが、「楽しかったぁ」としみじみとつぶやく。
このひと言だけで、あぁ、また恋をしたんだなとわかる。そこから、私が夫と初めて2人で食事した日の記憶がよみがえった。そういえば私も、家に帰ってからベッドに飛び込んだっけ。
特にリアルに感じたのは、結婚後のカンナと駈が徐々にすれ違い、心が離れていく様子だ。
夫婦のいざこざは、本当に日常の些細なことから始まる。照明やエアコンの消し忘れ、ちょっとしたものの言い方、洗濯物の干し方やたたみ方、トイレの使い方などなど、数え上げたらキリがない。
映画の場面と自分の日常生活がつながって、「うわぁーわかる!」と声を上げたくなった。
「恋愛感情と靴下の片方はいつかなくなります」は、結婚生活を見事に言い表していて、うなずくしかない。
でも、恋愛感情がなくなる=嫌いになるではないと思う。ともに生活するうちに、隣りにいてくれる安心感や、恋愛のときめきとは違う「愛おしさ」が生まれてくるんじゃないかな。
その気持ちを、ちゃんと態度や言葉で伝えられているだろうか。夫や息子のことをしっかり見ているだろうか、話に耳を傾けているだろうか。物語が進むにつれ、自問せずにいられなかった。
結婚生活には、面倒くさいこともいっぱいあるし、取り繕ってなんていられなくて、かっこ悪いところも情けないところも、すべてさらけ出す毎日で。
あれこれすべて引っくるめて、夫は受け入れてくれている。忙しなく過ぎていく日常が当たり前すぎて、この幸せを見過ごしていたなと気づかされた。
平日に休みをとって自分だけの時間を満喫していたけれど、「ファーストキス」を観たら、早く夫と息子に会いたくなった。「帰宅したら、しっかり話を聴こう。言葉にして自分の気持ちをちゃんと伝えよう」と心に誓いながら帰途についたのだった。
映画を観てからの私、家族への言動が変わったと思う。家族も気づいてくれているといいな。